<「食の安全を守る規格」を取得しよう【2】> 2020年6月から導入が義務化する食品衛生管理「HACCP」とは?

「食べることは生きること」と言われるほど、人として生きている以上、「食」に関わらない日はありません。自給自足だった時代と違い、現代人が口に運ぶものが、生産、製造、販売まで「誰かしら手」が関与しています。「食の安全」を誰かに委ねなくてはいけない時代では、異物混入や食中毒などの重大事故が発生しないよう、食を提供する側の食品衛生管理の姿勢が問われます。これらの危害要員から、食の安全を守るための食品衛生手法がHACCPです。HACCPとは、具体的にどのような手法なのでしょうか?2020年6月から導入が義務化されるHACCPについて、まとめてみました。

 

HACCPとは食品の「危害要員」を分析するもの

HACCPとは、「ハサップ」と読みます。

H…Hazard(ハザード:危険)
A…Analysis(アナリシス:分析)
Critical…(クリティカル:重要)
Control…(コントロール:管理)
Point…(ポイント:点)

HACCPは、上記で記した通り「Hazard Analysis Control Point」=「危害分析重要管理点」の意味を持つ用語で、食中毒や異物混入などの食品に関する「危害要員」を科学的に分析し、それを除去する、または低減する工程を継続的に管理してデータに記録するという手法の衛生管理方法です。もっと簡潔に説明すると、食材がどのように管理・保存され、どのような工程で調理・製造され、安全に包装または提供されているのかを「見える化」して、食の安全を守る、ということです。HACCPのルーツをたどると、1950年代のアメリカ、アポロ計画の頃まで遡ります。宇宙食品の安全性を向上させるための衛生管理方法は、時を経て世界各国へ広まり、1993年には、HACCPのガイドラインが誕生し、国際的な基準へと制度化されていきました。日本は先進国の中でもHACCPの導入が遅れていましたが、2020年6月に「食品に関わる全ての事業者」にHACCP導入が義務付けられています。ただし、一斉に義務化するのではなく1年間の猶予期間が設けられており、完全義務化は2021年6月以降となっています。

 

HACCPのメリット

日本では従来でも衛生管理を実施してきましたが、いわゆる「完成品の抜き取り検査」では細菌が発生した製品や、異物混入した製品がチェックをすり抜けて市場に出てしまい、食中毒などの重大事故を度々発生させてきました。他方、HACCPには「7原則12手順」という衛生管理手法があり、原材料の受入れの段階から管理することが可能です。また、基準値から外れた製品が発生した場合でも、改善措置が明確化されているため、製品に問題が発生した際の業務の中断による時間のロスなどを最小限に食い止めることができるというメリットがあります。

 

「HACCP導入のための7原則12手順」について

食品の衛生管理を徹底するためには、「原材料の入荷、製造、出荷の工程がそれぞれどのように実施されているか」を「継続的に」管理・監視する必要があります。HACCPを導入するためには、改正食品法に準ずるHACCP制度に基づいた食品衛生管理があり、「HACCP導入のための7原則12手順」として示されています。

●HACCP7原則の前準備「5手順」とは
HACCP7原則を設定するためには、準備段階として5つの手順が必要です。

【手順1】HACCPチームの編成
まずは、HACCPのプロジェクトチームを立ち上げです。適切な衛生管理を実行するためには、原材料、製造方法、機械設備の取扱い、品質保証、食品衛生など、関連部署から実務や知識に長けたプロフェッショナルを招集し、精鋭揃いのプロジェクトチームを編成する必要があります。

【手順2】製品説明書の作成
衛生管理をするためには、正しい製品の情報が重要です。製品名称・原材料名称・添加物名称及び使用料・包装形態・消費期限・保存方法・製品の特定として関連してくる微生物や化学的特性などの安全性に関する情報を、すべてまとめた製品説明書を作成します。

【手順3】意図する用途や想定される消費者の確認
製品がどのような用途で、どのような消費者に喫食されるのかのチェックも重要です。食品だけでなく、食品容器を製造している企業の場合でも、その容器にどのような内容物が入り、消費者がどのように消費するか、例えば、家に持ち帰って調理するか、そのまま食べるかなど、最終的な状態を想定します。その際は、小さな子供や高齢者、もしくは妊婦など、特別な管理が必要な消費者の用途、消費も想定する必要があります。

【手順4】フローダイアグラムの作成
フローダイアグラムとは、「製造工程一覧図」のことです。原材料の受入れから製品を製造し、納品先や顧客に引き渡すまでの全ての作業を一覧にしてまとめます。

【手順5】フローダイアグラムに沿って現場で確認
フローダイアグラムが出来たら、フローダイアグラム通りの工程となっているかどうかを、HACCPプロジェクトチームの全員でチェックします。

 

●HACCP「7原則」について
HACCP7原則は、以下のような構成となっています。

・原則1~2→ハザード分析とCCP(*重要管理点→重要な危害要因を管理するための必須工程)の設定
・原則3~5→HACCPプランの策定
・原則6→検証手順
・原則7→文書と記録

【原則1】(手順6)ハザード分析
フローダイアグラムにそって現場での確認を実施したら、原材料の受入れから製品引渡しまでの全工程の中で、生物的・化学的・物理的に可能性のあるハザード(危害要因)をピックアップします。その中からさらに重大なハザードは何かを特定し、分析します。

【原則2】(手順7)CCPの設定
ハザードを明らかにしたら、重大ハザードをどの工程で、どの程度まで制御するかを決定します。この場合の「制御」は、ハザードを加熱で減らす、冷蔵で増やさないなど、ケースバイケースでの対応を要します。この制御工程をCCP(*重要管理点→重要な危害要因を管理するための必須工程)と言います。CCPは一つの工程だけではなく、複数の工程を組み合わせて制御する場合もあります。

【原則3】(手順8)管理基準(許容限界)の設定
ハザードを制御し、食品の安全を保つための管理基準(許容限界)を設定します。管理基準(許容限界)は、温度、時間、水分含量などの数値による化学的な根拠に基づいた定量的なものであると決められています。

【原則4】(手順9)モニタリング方法の設定
管理基準(許容限界)を決めたら、モニタリング(監視)をしなければなりません。温度や時間、水分含有量などの数値を、いつ、誰が、どのくらいの頻度でどのように監視するかなどのモニタリングの方法を設定します。

【原則5】(手順10)改善措置の設定
モニタリングで管理基準値ではなかったことが判明した場合、原因の特定や、工程の正常化や、基準値ではなかった製品の排除方法など、問題に対しての改善措置を設定します。

【原則6】(手順11)検証方法の設定
CCP化した工程がきちんと行われているか、プロジェクトで決めたプランが継続して適切に機能しているかなどを検証する方法を手順11で定めます。検証の方法としては、モニタリング記録のチェック、モニタリング測定方法の精度の確認、管理基準値に至らなかった場合の対処が適切であるかの確認、製品の細菌検査などをして、最終製品のハザードが安全なレベルとなっているかの確認などが挙げられます。

【原則7】(手順12)文書化と記録の保持
手順の1から11で策定した内容を文書化します。その文書に基づき、工程を管理した時の状況も併せて記録として残します。文書化と記録の保持をすることにより、HACCPに基づく衛生管理を実施した証拠を得ることができます。これらの記録は、万が一問題が発生した場合の原因究明にも役立ちますので、記録の内容や責任者などを明確にしておく必要があります。

 

HACCP義務化に追いつくためにはセミナーで

HACCPの義務化は、すでにスタートしています。1年間の猶予期間があるとはいえ、製品の製造工程を丸ごと見直す必要があるため、時間はあっという間に過ぎてしまします。HACCP義務化にワンテンポ遅れているな、と感じたら、すぐにセミナーを受講しましょう!特にWebセミナーでは、繰り返し学習ができるので、実務に活かしやすいメリットがあります。ぜひピッタリのセミナーをお探しください。

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【参照情報】
日本検査キューエイ株式会社
>>>【重要】HACCPの「7原則12手順」をわかりやすく解説!

solto
>>>HACCP(ハサップ)とは?義務化はいつから?簡単に解説

厚生労働省
>>>HACCP(ハサップ)

AXEL
>>>HACCPを基準とした衛生管理とは?義務化の前に知っておこう!