<スキル重視の「ジョブ型雇用」は新しい時代の雇用スタイルとなるのか?【3】> 「ジョブ型雇用」導入のポイントと課題

欧米諸国では、一般的な雇用方法として知られているジョブ型雇用は、働く人のスキルを重視する雇用方法です。長らく日本の社会とは無縁と思われてきましたが、働き方改革やコロナ禍のテレワークなどをきっかけに、大手企業各社でジョブ型雇用を導入する動きを見せ、新しい時代の雇用スタイルとして、注目を集めています。ジョブ型雇用を導入する為には、どうしたら良いのでしょうか?ジョブ型雇用導入のポイントや、導入に向けての課題などについてまとめました。

 

働き方の多様化時代に問われる日本型雇用スタイル

戦後の高度成長期に確立された「メンバーシップ型雇用」は、「年功序列・終身雇用」が売りのいわゆる「日本型雇用スタイル」と呼ばれるものでした。日本人が当たり前に思っていた、会社第一のメンバーシップ型雇用スタイルは、バブル崩壊やリーマンショック、東日本大震災、そして、現在のコロナ禍を経て、「時代に合わない」雇用スタイルになりつつあります。事実、経団連も新卒を一括採用して長い時間かけて一人前の「企業戦士」として育成するスタイルは、これからの経済のスマート化に対応できないアナログなシステムとして、強い危機感を示しており、AIやデータサイエンスの発展で目まぐるしく変わる社会情勢の即戦力を確保するためにも、ジョブ型雇用を推奨しつつあります。

メンバーシップ型雇用の限界は、社会情勢だけでなく「働き方改革」による「働き方の多様化」にも表れています。ことに、コロナ禍で加速した「テレワーク」は、社員のコミュニケーションや、目の前の働きぶりで評価することができないため、個人の成果がはっきりと表れます。このため、勤怠評価の見直しをしなければならず、従業員一人一人の「スキル」が重視されるようになります。テレワークが加速すると、勤務地や勤務時間なども多様化するため、よりメンバーシップ型雇用が成立しにくくなるとも言われています。

 

「ジョブ型雇用」を導入するために必要なこと

では、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ切り替える為に必要な要素とは、どのようなものでしょうか?

●人事考課制度を刷新する
まずは、人事考課制度の刷新が必要です。人事考課制度は、企業や職種、業種でそれぞれ違いがありますが、概ね以下のようなポイントとなります。

(1)目標管理制を導入する
目標管理制は、事前に従業員と上司で話し合って決めます。目標は可能な限り具体的な数値指標によって定め、指標を三か月ごと、一定の間隔で確認し、問題点や改善点を話し合います。

(2)自己評価と上司の評価を組み合わせる相互評価する
評価方法は上司が一方的に評価するのではなく、従業員も「自己評価」をします。何ができて何ができなかったのかを自己評価することは、更なる目標達成をするときの道筋となります。評価を開始して一年が経過したら、目標が達成できたかどうかを確認し、上司が給与決定に反映させます。このような相互評価もジョブ型雇用の特徴でもあります。

●職務記述書を作成する
ジョブ型雇用には、「職務記述書」が必要不可欠です。職務記述書にはその職務のタイトル、概要、役割、責任などが記されたものです。職務記述書により職務に対する役割や責任が明文化されることで、会社側と本人の認識を一致させることが可能です。ジョブ型雇用を導入する場合は、この職務記述書を社内の全職務について作成する必要があります。作成された職務記述書や人事、または社長が承認します。

●職務ごとに給与の上限と下限を設定する
ジョブ型雇用で重要なのは「職務の給与額」です。ジョブ型雇用で職を求める人は、自分のスキルがいくらになるか、非常に関心が高くなります。給与を設定する場合は、「経理部スタッフ年収400万円~600万円」という風に、上限と下限の範囲を決めることがポイントです。職務に対する給与の上限と下限の範囲を決めることで、会社側としては昇給や減給の根拠をはっきりと示す事ができ、働く側も納得しやすくなります

●公募制度を導入する
「メンバーシップ型雇用」から「ジョブ型雇用」に移行するのではれば、社内で公募制度を導入することが望ましいとされています。社内の公募制度とは、社内の職務に欠員が出た場合、新設した職務で求人がある場合、社内で公募して従業員が自由に応募できるシステムです。公募制度を導入することで、優秀な人材や向上心のあるのチャレンジの場となるほか、現在の職種に不満のある従業員が、外部へ流出してしまうことを防ぐことが可能です。

 

「ジョブ型雇用」導入に向けての課題

ジョブ型雇用システムが認知されてきていても、これまでのメンバーシップ型雇用からいきなり方向転換するには課題が山積みです。ジョブ型雇用導入に向けての課題を、下記にまとめました。

●新卒採用をどうするか?
現在の日本の就活市場は、「新卒一括採用」「総合職エントリー文化」が主流です。企業がジョブ型雇用を導入し始めても、学生側の方で準備が追い付かない可能性があります。今、大企業でのジョブ型雇用導入が始まっていますが、ジョブ型雇用もっと増えることにより、将来のキャリアを見据えた就活方法や、学校教育の在り方などが課題となるでしょう。

●解雇制度について労使間の相互理解が必要
即戦力となるスキルだから採用されているため、成果を出せなければ解雇が当たり前となるのがジョブ型雇用の特徴です。ジョブ型雇用が主流の欧米では、「解雇」はごく普通の出来事として受け止められます。しかし、日本ではメンバーシップ型の終身雇用が当たり前となっているため、労働組合の力次第では「解雇」が難しい企業もあります。ジョブ型雇用では成果を出せなければ解雇となる、ということを、労使間で十分に話し合い、理解してもらう必要があるでしょう。

●本当にジョブ型雇用でいいのかを検討する
職種や業務体系によっては、ジョブ型雇用より従来のメンバーシップ型雇用の方が向いている企業もあります。ジョブ型雇用を導入する際は、自社にマッチした雇用方法か、メンバーシップ型雇用と両立、または上手に移行できるかをよく検討したうえで決めることがおすすめです。

 

ジョブ型雇用や日本の人事労務の課題についてセミナーで学ぼう

働き方が変われば、これまでのやり方が通用しなくなるのが世の常です。ジョブ型雇用が注目されている今、ジョブ型雇用を自社の業種に合うのか、メンバーシップ型雇用と併用できるのかをジャッジするためには、ジョブ型雇用を知ることが重要です。下記URLよりジョブ型雇用についてのセミナーや、withコロナ時代の人事労務などについてのセミナーを受講し、まずは情報強者を目指しましょう!

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【参照情報】
CINQPLANS CONSULTING
>>>【人事制度】中小企業の人事制度こそ「ジョブ型」が向いている【ジョブ型への移行方法】

NIKKEI STYLE
>>>コロナで広がるテレワーク 私たちの働き方どうなる?

Adecco
>>>ジョブ型雇用の基本をおさらいメンバーシップ型との違いや成功事例など