<スキル重視の「ジョブ型雇用」は新しい時代の雇用スタイルとなるか?【2】> 「ジョブ型雇用」が広がる背景と導入のメリットデメリット

一つのスキルと磨き上げて一生モノの武器とする働き方は、日本ではいわゆる「職人系」なイメージがありましたが、一つのスキルに特化した働き方は、すでに欧米諸国では「ジョブ型雇用」として定着しています。戦後の高度成長期からの長い間「当たり前」とされてきた「年功序列」と終身雇用」は目まぐるしく変わる社会情勢の中で成立しづらくなっており、国の働き方改革事業と、コロナ禍でのテレワーク急速普及により「ジョブ型雇用」へとシフトする企業が増えてきました。ここではジョブ型雇用が広がる背景と、導入のメリット、デメリットについてまとめてみました。

 

ジョブ型雇用が広がる背景とは?

ジョブ型雇用が「新しい雇用の形」として話題となり、広がりを見せる背景には、以下の4つの理由が考えられます。

(1)グローバルな競争力をつけるため
日本のサラリーマンが慣れ親しんでいる年功序列・終身雇用のメンバーシップ型雇用は、社内のスペシャリストを育てることはできますが、世界で通用する人材は育ちません。現に、日本の国際競争率は決して高いとは言えず、この20年~30年の間は、諸外国に大きく水をあけられています。グローバルな競争力をつけるには、ジョブ型雇用で世界に通用するスキルを持つ人材を確保する必要があります。

(2)専門職の人手不足
IT産業の成長と共に、世界は第4次産業革命に突入しています。現場ではITに詳しいエンジニアやデータサイエンティストなど専門のスキルを持つ人材が不足しており、即戦力となる人材を求めるようになりました。専門職の人手不足解消にはメンバーシップ型雇用で新卒から育て上げるのではなく、ジョブ型雇用で最初からスペシャリストを雇うという流れとなるのは必然です。このように、従来型のゼネラリストでなく、スペシャリストを求める現場から、ジョブ型雇用は広まる傾向にあります。

(3)多様性のある働き方の浸透
少子高齢化は、業種職種関係なしに、長年の日本社会全体の課題となっており、ことに労働人口の確保は最優先事項となっています。その解決策の一つとして、「働き方改革」で推進されている考え方が「多様性のある働き方」です。フルタイムで働ける人材だけでなく、育児や介護中でも働ける時短勤務や在宅勤務、遠隔地からのリモートワーク、外国人労働者の受入れ、リタイア組の再雇用など、様々な選択肢があります。そんな多様化する働き方に対応するために、ジョブ型雇用を採用する企業も増えてきています、

(4)新型コロナウイルスの影響によるテレワークの急激な普及
新型コロナウイルスの影響によるテレワークの急激な普及は、メンバーシップ型雇用の破綻に拍車をかけました。テレワークでは仕事の成果見えやすく、これまで日本の企業の中で良しとされてきた曖昧な評価制度が通用せず、評価基準を見直すきっかけにもなっています。実際に、ジョブ型雇用の評価制度の方が効率がアップした例もあり、テレワークを導入した多くの企業が、メンバーシップ型雇用を見直し、ジョブ型雇用へと切り替え始めています。

 

ジョブ型雇用のメリット

ジョブ型雇用には、どのようなメリットがあるのでしょうか?下記にまとめました。

【従業員のメリット】
・自分の得意分野で仕事ができる
就職してもなかなか希望の部署に就けず、一通りのジョブローテーションが課せられるメンバーシップ型雇用とは違い、ジョブ型雇用では、マーケティングやAIなど、自分が得意とする分野で採用され、それ一本で自分のスキルを磨きながら仕事をすることが可能です。

・スキルに応じた報酬を得ることができる
ジョブ型雇用では、採用基準が年齢や学歴ではなく「専門スキル」に特化していますので、年功序列や終身雇用では得ることのできない「スキルに相応した報酬」を得ることができます。メンバーシップ型雇用なら40代でもらう額の報酬を、ジョブ型雇用では専門スキルを持った若年層がそれ以上の額の報酬で雇用されるケースがあります。

【企業のメリット】
・即戦力のある専門人材を確保できる
第4次産業革命時代に突入しつつある中、データサイエンスやIoTなど、次から次へと現れる新しい専門職に対し、新人をイチから育てるのでは競合企業に差を付けられてしまいます。ジョブ型雇用で職種やスキルを限定して採用することにより、即戦力のある専門人材を確保することができます。

 

ジョブ型雇用のデメリット

ジョブ型雇用のデメリットについてもまとめました。

【従業員のデメリット】
・仕事を失いやすいリスクがある
専門スキルを活かしてこそ雇用ですので、そのスキルが会社にとって必要なくなった場合、職種転換や配属替えなどの選択肢がないため、仕事を失うリスクがあります。

・スキルが業績に見合ってなければ降給もあり得る
即戦力を見込まれての採用ということもあるので、スキルが業績に見合っていなければ、降給や降格もあり得ます。また、ジョブ型雇用の場合は社内研修も実施されませんので、空き時間などにスキルを磨いて自己研鑽をし続ける努力を要します。

【企業のデメリット】
・会社都合での異動をさせられない
メンバーシップ型雇用では、組織内で異動や転勤を繰り返して組織の最適化を図りますが、ジョブ型雇用の場合は、雇用契約書の中で、勤務地や労働時間などを明確化していることが多いため、会社都合で簡単に異動や転勤をさせることができません。

・人材が流動化しやすい
ジョブ型雇用では、「会社に心身をささげる」メンバーシップ型雇用とは違い、「自分のスキルに応じた仕事と報酬」に人が付いてきますので、他に条件がいい会社があれば、簡単に転職されてしまいます。転職市場は活性化しますが、会社的には人材が流動化しやすいため「長く働いてくれる人材」を求める場合はデメリットになります。

 

ジョブ型雇用導入する場合はルールを明確化する

メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に切り替える場合は、ルールを明確化することがポイントです。ジョブ型雇用への切り替えにより、以下のようなことが懸念されています。

・労働契約書の書面での確約が義務付けられていない
・ジョブ型雇用の労働者の就業時間や勤務地などの限定が労働契約や就業規則の中で明示的に定められていない
・使用者が曖昧な運用をし、労使間の合意範囲の認識に齟齬が生まれ労使トラブルに発展している

ジョブ型雇用の導入による労使トラブルリスクを回避するために内閣府では、2019年5月にジョブ型雇用の雇用ルールを明確化するように提言しています。特に、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用を併用するケースの場合は、慎重な線引きが必要となるでしょう。

 

セミナーでジョブ型雇用の要点を知ろう!

ジョブ型雇用を知るには、これまで実施していた「メンバーシップ型雇用とはどのようなものだったのか?」も振り返る必要があります。変わりゆく日本の雇用スタイル。その波に乗り遅れないようにするためには、セミナーの受講がお薦めです。人事労務のWebセミナーなどで、自社に必要な雇用スタイルを見直し、即戦力のある人材をいち早く確保するためにも、ジョブ型雇用の導入などを検討してみませんか?下記URLより、お薦めのセミナーを探すことができます!

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【参照情報】
engagesa採用ガイド
>>>今さら聞けない「ジョブ型雇用」。注目の背景やメリットとは?

創業手帳
>>>ジョブ型雇用ってどんな制度?働き方の多様化で注目を浴びる理由

BOXIL
>>>ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型雇用との違い・注目されている背景