<withコロナ時代の労務問題【2】> 失業保険の受給付期間が延長になる? 2020年6月に施行された「雇用保険特例法」について解説

新型コロナウイルスの感染拡大により、事業の縮小を余儀なくされた企業、休業、廃業に追い込まれた企業の数は計り知れません。一つの企業が活動を停止すると、多くの従業員が路頭に迷うこととなります。いま、このように解雇や雇い止めによって職を失った人が増えており、それに伴って求職市場も少ない枠を取り合うような厳しい状況となっています。政府は、長期化する求職活動に苦慮する人たちの為に、雇用保険の基本手当の受給付の延長を決めました。ここでは、コロナ禍で急遽法改正された「雇用保険の基本手当の受給期間と給付日数の延長」に関する「雇用保険特例法」について解説します。

 

雇用保険の「基本手当」とは?

まずは「雇用保険の基本手当」について、説明いたします。雇用保険には、失業者の生活の安定を図り、求職活動をサポートするために「基本手当」「技能修得手当」「寄宿手当」「傷病手当」の4つの手当が存在します。この中で求職中の被保険者にとって重要な手当が「基本手当」となります。いわゆる「失業保険」です。

●雇用保険の基本手当の受給資格
・離職して失業していること
・離職前に一定の資格期間を満たしていること

●雇用保険の基本手当の受給期間
・原則として離職の日の翌日から起算して1年間(所定給付日数分の給付が支給される)

●所定給付日数
・所定給付日数は90日~330日の範囲で定められており「会社都合」と「自己都合」で区別され、日数が決められる

 

雇用保険特例法とは?

2020年6月12日に施行された「雇用保険特例法」では、「雇用保険基本手当の受給期間と給付日数」が「延長」となります。その詳細について、下記にまとめました。

●雇用保険基本手当の受給期間が「最大3年間延長」が可能となる
雇用保険特例法では。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い下記のいずれかに該当する場合に、雇用保険の受給期間が最大3年間延長されます。

(1)新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からハローワークへの来所を控える場合

(2)新型コロナウイルスに感染している疑いがある症状が出ている場合(*風邪の症状・発熱・強い倦怠感・息苦しさなど)

(3)新型コロナウイルス感染症の影響で、子(義務教育課程(小学校過程のみ)、特別支援学校(高校まで)、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園などに通学、通園するものに限る)の養育が必要となった場合

従来では、雇用保険の受給期間は離職の翌日から起算して原則1年間と定められていましたが、上記の理由により引き続き30日以上働くことができない場合に、最大3年までの期間を「働くことができない期間」として本来の受給期間に加えることを申請することができます。もともと、出産や育児、疾病などでも認められていた制度でしたが、今回の新型コロナウイルス感染症の影響が出る求職者にも適用される運びとなったのです。

●雇用保険基本手当の給付日数が「最大60日延長」が可能となる
雇用特例法では、下記の要件に該当する場合、雇用保険の基本手当給付日数が最大60日間、延長されることになりました。35歳以上45歳未満で所定給付日数270日、45歳以上60歳未満で所定給付日数330日の場合は30日の延長が認められます。以下の条件に該当する人で、令和2年6月12日の法施行日以後に基本手当の所定給付日数を受け終わる人が対象です。

・令和2年4月7日(緊急事態宣言発令以前)に離職の場合→離職理由を問わず全受給者が対象
・令和2年4月8日~令和2年5月25日(緊急事態宣言発令期間中)に離職の場合→特定受給資格者及び特定理由離職者が対象
・令和2年5月26日~(緊急事態宣言全国解除後)に離職の場合→新型コロナウイルス感染症の影響により離職を余儀なくされた特定受給資格者及び特定理由離職者(雇い止めの場合に限る)

*特定受給資格者:倒産・解雇等の理由により離職を余儀なくされた者
*特定理由離職者:①期間の定めのある労働契約が更新を希望したにも関わらず更新されなかったことにより離職した者
         ②転居・婚姻等による自己都合離職者

 

「雇用特例法」を取り扱う際の実務上での注意点

雇用特例法においては、事業主側は離職証明書を作成する際に実務上の注意点があります。それは「離職証明書⑦離職理由」の項目において「新型コロナウイルス感染症の影響による離職」の場合、「具体的事情記載欄(事業主)」に記載した離職理由の末尾に「(コロナ関係)」と記載をすることを要請されています。事業主からの「コロナ関連で離職する」という一文があれば、ハローワークでは、給付日数延長の対象者を迅速に把握し、対象者に対してスムーズになります。

 

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【参照情報】
co-mit
>>>【2020年6月改正】コロナ禍で実施された、影響の大きい労務管理上の法律

打刻ファースト
>>>【新型コロナウイルス】雇用保険基本手当の「受給期間」と「給付日数」の延長が特例的に認められます

人材採用・人材募集ドットコム
>>>【日本の労働問題】コロナ禍で生じた労働問題に対して人材会社ができることは?

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>>>基本手当について