<withコロナ時代の労務問題【3】> コロナ禍での収入減による社会保険料の特例法「標準報酬月額の特例改定」とは?

コロナ禍での休業要請や出勤調整によっての影響は、まず収入面に現れます。出勤しないことによる収入減や、企業の経営悪化による減給など、様々な理由で突然の収入減に見舞われた人が急増しています。収入は減っても、月々の保険料は変わりなく徴収されるため、家計は圧迫される一方です。事態を重く見た政府では、コロナ禍での収入減による社会保険料の「標準報酬月額」の特例改定案を施行しました。「標準報酬月額」は、どのような条件で実施されるのでしょうか?その詳細について、まとめてみました。

 

従来の「社会保険料の随時改定」の仕組みについて

給与額が大幅に変動した時に改定される保険料を「随時改定」と言います。随時改定には、以下の3つの条件を「全て」満たす必要があります。

(1)昇給または降給など(基本給や手当等の変更)により「固定的資金に変動があった」場合

(2)変動月からの3か月間の給与の平均額(残業手当等の固定的資金を含む)を等級表に当てはめて、これまでの等級と比べて2等級以上の差が生じた場合
(*等級表の上限または下限にわたる等級変更の場合は1等級差でも随時改定の対象です)

(3)変動月からの3カ月間、支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である場合

随時改定の中での「支払い基礎日数」とは、給与計算の対象となった出勤日数を指します。また「特定適用事業所」とは、厚生年金保険の被保険者501人以上の企業に属する事業所に該当します。

 

コロナ禍で実施される「標準報酬月額の特例改定」とは?

新型コロナウイルスの影響での休業要請や出勤調整等、企業の業績悪化に伴い給与が急激に下がり、社会保険料の支払いが厳しい、という人が多くなってきました。そこで、給与変動の4か月目に改定が実施される随時改定とは別の「標準報酬月額の特別改定」が実施されることとなりました。標準報酬月額の特例改定では、休業開始の翌月からの標準報酬月額変更が可能となります。以下で、条件などを詳しくまとめました。

●対象となる条件
標準報酬月額の特例改定で対象となるには、以下の3つの条件「全て」にクリアする必要があります。

(1)新型コロナウイルス感染症の影響による休業や出勤調整で、2020年4月から7月までの間に報酬が著しく低下した月が生じた人

(2)報酬が著しき低下した月に支払われた報酬の1カ月分の報酬が、すでに設定されている標準報酬月額と比べて2等級以上低下した人
*固定的賃金(基本給、日給等単位等)の変動がなかった場合も対象になります

(3)本特例措置による改定内容に、被保険者本人が書面により同意しているか

●対象となる期間の保険料
標準報酬月額の「対象となる期間の保険料」は、「2020年4月から7月までの間に休業により報酬等が急減した場合」に「その翌月の2020年5月から8月分の保険料」が対象となります。届出に伴う添付書類は必要ありませんが、以下のような書類を2年間保管しておかなければなりません。

・休業命令が確認できる書類
・出勤簿
・賃金台帳
・本人の同意書

●申請に必要なもの
標準月額報酬の特例改定の申請には「特例改定用の月額変更届」+「申立書」が必要です。電子申請は認められておらず、受付期間は令和3年2月1日までとなっています。

●通常の実務との変更点は?
標準報酬月額の特例改定は、最長で2020年8月までの保険料算定の基礎となる標準月額を決めるものです。実務で使用する「社会保険の算定基礎届」は2020年9月以降の保険料に適用となる標準報酬月額の決定や、保険料算定に関わる手続きですので、通常通りの処理で大丈夫ですが、以下のようなケースもあります。

・休業手当が支払われた場合の算定基礎度届は「7月1日時点」に休業しているか、すでに休業状態が解消されているかによって記入方法が変わります

・7月1日の時点で一時休業の状況が解消していない場合の補足として4.5.6月いずれも報酬を全く受けていない場合、算定基礎届では従来の標準報酬月額で決定されます。

実務上で、何か不明な点がある場合は、日本年金機構のホームページなどで確認をしながらの作業を要します。

 

標準報酬月額の申請をするためには「被保険者の同意」が必要

標準報酬月額の申請には、「被保険者本人の書面での同意」が必要となります。標準報酬月額の対象項目(3)でも解説いたしましたが、対象項目の中でも「本人の同意」は非常に重要とされています。その理由としては、標準報酬月額のデメリットが含まれるからです。標準報酬月額は社会保険関連の諸手当や、将来の年金額の算出の基準に影響します。例えば、これから先、ケガや病気による傷病手当を受ける場合、出産を控えて出産手当をもらう予定がある場合、そして将来の年金など、諸々の費用が特例下での標準報酬月額により算出されてしまうため、当初の予定より減額されてしまう可能性が否めません。これらのデメリットも事前によく説明しておき、きちんとした同意を得ることも事業主の務めとなります。

 

コロナ禍による各種の法改正についてはセミナーで!

コロナ禍での収入減は、多くの企業や従業員に対して、ダイレクトに響いている問題の一つで、これから先も長期化すると言われています。政府では次々と特例で法改正を実施し、企業や従業員の負担を軽減しようとしています。法改正には、実務を伴うため、時代の波に取り残されるわけにはいきません。そんな場合には、セミナーがお薦めです。下記のURLより、労務関連の法改正に対応したセミナーをチョイスして、目まぐるしく変わる労務問題に対処できるようにしましょう。

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【参照情報】
SR人事メディア
>>>【新型コロナウイルス関連】翌月から社会保険料が安くなる!? 標準報酬月額の特例改定

打刻ファースト
>>>【新型コロナウイルス】休業による収入減の場合、休業開始翌月から標準報酬月額の変更ができる「特定改定」が創設!算定等への影響は

のっぽ社労士公式ブログ
>>>「標準報酬月額の特例改定」についての解説