<IT業でよく見られる「請負契約】とはどんな契約?【3】> 「請負契約」の落とし穴? 注意したい「偽装請負」の違法性

請負契約は、IT業界でよく見られる契約形態として、近年、システム開発を外注したい企業が、多くのシステムエンジニアとの請負契約を活用しています。発注側にも受注側にもメリットの多い請負契約ですが、その仕組みを悪用した「偽装請負」が横行しており、厚生労働省が広く注意を呼び掛ける事態です。企業側が知らずに偽装請負に加担した形となっているケースもあり、それを防ぐには「請負契約」の線引きをはっきりさせる必要があります。偽装請負とは、どのような手口があるのでしょうか?企業が注意することとは?偽装請負の手口や違法性、企業側のデメリットなどについて、まとめてみました。

 

偽装請負とは

「偽装請負」とは、形式上では「請負契約」で契約を結んでいるものの、実態は発注者が受注者を指揮命令下において労働させるという形態の請負契約を指します。本来、請負契約で契約を結んだ場合、発注者に指揮命令権はなく、受注者は「完成品(成果物)を納期まで納品する」点を遵守すれば良いことになっています。発注者が受注者を指揮命令下に置くのであれば本来は「業務委託契約」を結ぶ必要があるのですが、その場合発注者は責任義務や管理義務を担った「労働者派遣法」に従わなければなりません。煩わしい労働者派遣法を避けつつ、受注者を指揮命令下において労働させるために、契約だけは請負契約で結ぶ、偽装請負という違法行為に手を出す会社が増加し、問題視されています。

 

偽装請負4つの手口

偽装請負には、4つの手口があります。それぞれ解説したします。

(1)代表型
代表型の偽装請負は、請負契約しながらも、発注者が業務内容に細かく口を出しする上に、出退勤や勤務時間の管理も行うケースです。偽装請負では、一番スタンダードな手口となります。

(2)形式だけの責任者型
現場に責任者を置いてはいるが、発注者の要望を伝えるだけの役割しか持たず、実質的には発注者が指示を出しているのと同じ状況となる「形式だけの責任者型」がこのケースになります。単純作業をする現場で多く見受けられます。

(3)使用者不明型
「使用者不明型」は、誰に雇われているのか分からなくなるタイプの手口です。A事業者がB事業者に仕事を発注し、Bは別のC事業者に請けた仕事をそのまま出します。Cの労働者はAの現場に行きますが、AからもBからも指示を受けて仕事をします。

(4)一人請負い型
「一人請負い型」は、A事業者からB事業者で働くよう労働者を派遣しますが、B事業者は労働者と労働契約結ぶことなく、個人事業主として請負契約を結び、その上で業務を指示、命令して労働をさせるケースとなります。

 

偽装請負と判断されるケースと判断されないケース

「労働派遣」なのか「偽装請負」なのかを判断する要件として、下記のようなケースが挙げられます。

●「偽装請負」と判断されないケース
・自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用していると判断された場合
・請負契約より請負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理をしていると判断された場合

●「偽装請負」と判断されるケース
・労働者の業務遂行に関して細かい指示や管理を発注者側で全て行う
・労働時間の管理(始業/終業/休憩/休日/休暇の指示)発注者側で全て行う
・労働者の配置の決定・変更を発注者側で全て行う
・労働者が業務を遂行するのに必要となる資金・機材・設備を発注者側で全て用意している

 

偽装請負が禁止されている理由と発覚時のリスク

そもそも偽装請負は何故禁止されているのでしょうか?偽装請負が発覚した時の企業側のリスクも併せ、ご説明します。

●偽装請負は何故禁止されているのか?
偽装請負の手口は、そのまま「労働者派遣」に該当するものです。派遣者労働者は長年、中間搾取や違法な長時間労働など不遇な扱いを受けてきましたが、労働派遣法により、雇用する企業側に厳しい制約が課せられるようになり、労働者は法の下で保護される形となりました。偽装請負がまかりとおってしまうと、雇用の責任を負ってもらえない、残業代が出ない、労災や安全配慮義務の責任を負ってもらえない、など、保護されるべき労働者の立場が、危ういものとなってしまいます。あくまでも労働者を守るために作られた労働派遣法ですので、偽装請負で労働者派遣法を逃れようとすることは、禁止であり違法行為なのです。

●偽装請負が発覚した場合のリスク
前述した通り、偽装請負は違法行為です。労働者派遣法だけでなく、職業安定法にも違反する行為となります。偽装請負が発覚した場合、まず、企業側の大幅なイメージダウンは免れません。偽装請負に手を染めた企業、というレッテルが張られてしまったら、取引先の離脱、スポンサー離れ、優秀な人材の離職、採用人気の低下、世間からのバッシングなど様々なリスクが想定されます。ネットニュースなどで取り上げられた場合は、炎上リスクなどを負うことになり、一度ついた企業の傷を世間はなかなか忘れてはくれません。

 

偽装請負にならないための注意点

偽装請負とならないために重要なポイントは、「正しい契約書を作成する」ことにあります。契約書に記載する契約形態を「請負(業務委託)」と記載しただけでよしとしているケースが多いようですが、それでは十分ではありません。発注書の他に、発注の目標を達しやすいように「仕様書」を添付し、発注内容に関して双方で合意をしておく必要があります。事前に定めた使用を受注側が承諾して契約を結んだのであれば、発注者が労働者に対して指揮命令をしているという判断は下りません。また、就業中の指揮命令系統を明確にしておくこともポイントです。例えば、偽装請負のつもりはなくても、指揮命令系統を不明確な状態にしておくと、偽装請負と疑われることもあります。契約書がないと、派遣契約の労働者と請負契約の労働者が同じ現場で混在していた場合、発注者の指揮命令下にいないということが客観的に証明しにくくなる恐れがあるので、発注者受注者双方の為にも予め契約書に指揮命令系統について記しておくことが重要です。

 

請負契約を正しく結ぶためにはセミナーで学ぼう

偽装請負の恐ろしいところは、偽装請負のつもりがなくても、結果的に偽装請負として判断されてしまうケースもあることです。請負契約を正しく理解し、活用するためには、まず請負契約についての学習が必要です。その為には、請負契約に関するWEBセミナーを受講することが有効な手段となります。下記URLより、セミナーをお探しすることができます。ぜひお試しください。

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【参照情報】
厚生労働省 東京労働局
>>>あなたの使用者はだれですか?偽装請負ってナニ?

弁護士法人浅野総合法律事務所
>>>違法な偽装請負とならないための、業務委託契約の締結時の注意点

LEGAL MALL
>>>偽装請負とは|罰則や違反例なども含めた基礎知識7つ