<いよいよ解禁!「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改定に企業はどう対応するか?【3】> 「副業・兼業」の導入でトラブルにならないための注意点
長らく日本の社会では「副業」に関してあまり触れられない空気があり、多くの人が「会社に内緒で」副業をしている状況下にありました。そのため、本業にバレた時の労使トラブルが後を絶たず、中には訴訟問題にまで発展したケースもあります。しかし、国のスタンスはあくまでも「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは労働者の自由」としているため、判決の多くは「副業を認める」ものでした。そしてこの度、2020年9月に厚生労働省が改定した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では「副業の解禁」と呼ばれるほど、国を挙げて副業を推進しており、これを機に、多くの企業が副業解禁を認めることとなります。企業が副業・兼業を導入する場合、トラブルにならないためにはどうしたら良いのでしょうか?副業・兼業の解禁、導入に際する注意点などをまとめてみました。
「副業・兼業」を解禁する(認める)ために必要な企業の心構え
これまでの経緯を鑑みると、多くの企業に「副業は禁止」という考えが根付いてきていると想定されます。いきなり副業を解禁にしても、ある程度のルール決めをしておかないと、労働時間を超過した働き方や、競業企業へ副業に行くなど、会社の秩序が乱れる恐れもあります。「副業・兼業」を解禁する場合は、企業の方に副業・兼業に対する以下のような心構えが必要となります。
- 就業規則を変更し副業・兼業に対する社内ルールを取り決める
- 副業・兼業をする場合は届出制にして、会社側で副業・兼業を把握できるようにする
- 就業規則の変更、届け出制の書式などをフロー化して全社員に説明する
- 労災保険などの取扱いについても明示する
副業・兼業に対して禁止や制限などの方向に意識を向けるのではなく、ガイドラインを参考にして、副業・兼業解禁に際して、どのようなメリット・デメリットがあるのかを正しく把握しておくことが重要です。
副業・兼業導入の際の就業規則の変更について
今回の副業・兼業の解禁は、厚生労働省による「モデル就業規則」の改定があったことが、大いに関係しています。改定されたモデル就業規則は、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の中でも記されているため、副業・兼業を導入する場合には、就業規則の変更も余儀なくされます。
●就業規則を変更するポイント
いかに国が推奨していることとはいえ、前提として、企業の就業規則を勝手に変更することはできません。副業・兼業解禁に関するルール決めをするためには、まず労働組合もしくは、労働者の過半数の代表者と協議をして、労働者側の意見書を作成し、労働基準監督署長へ提出するという、通常の「就業規則変更手続き」と同じ流れをとる必要があります。実際に就業規則を変更する場合は、ガイドラインの就業規則を参考にしつつ、下記の点に注意をして作成します。
・職務専念義務の明記
・秘密保持義務の明記
・競業避止義務の明記
・懲戒規定の取決め
これらの項目は、特に情報漏洩のようなトラブルへの抑止となります。
●就業規則のモデル例
就業規則のモデル例は、次の通りです。
(1)労働者は勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる
(2)労働者が勤務時間外において他の会社等の業務に従事する場合は、事前に会社に所定の届出を行うものとする
(3)(1)の業務に従事することにより、次の各号にいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる
a.労務提供上の支障がある場合
b.企業秘密漏えいする場合
c.会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
d.競業により、会社の利益を害する場合
就業規則内には「懲戒できる可能性がある項目」についても記述しておく必要があります。
(1)競業他社で副業を行い本業に損失を与えている
(2)本業先で得た機密を副業先にて漏洩している
(3)副業によって本業の名誉を毀損している
また、副業によって労働者を懲戒する場合は、就業規則に「副業の制限限定」と「当該制限違反を懲戒事由とする規定」を定めておかなければなりません。
副業・兼業を届出制にした場合のルール決めはどうする
副業・兼業を届出制とした場合、そのルール決めはどのように行ったら良いでしょうか。まずは、就業規則内に「届出制とする」ことを明文化した上で、「副業・兼業について会社に報告しなければならないこと」を決めます。企業側に報告すべき内容例を、下記にまとめました。
(副業先に関する情報の提供)
・副業先企業の事業内容
・副業先で従事する業務の内容
・副業先との契約形態(雇用契約・業務委託契約など)
(労働時間通算の対象となるか否かの家訓)
・副業先への契約の締結日と期間
・副業先の使用者との労働契約の締結日
・副業先の使用者との事業場での所定労働日、所定労働時間、始業、就業時刻
・副業先の使用者の事業場での所定労働時間の有無、見込み時間数、最大時間数
・副業先の使用者の事業場における実労働時間等の報告の手続き
・これらの事項についての確認を行う頻度
ルールを取り決めたなら、「違反した際の懲戒規定」も明記し、届出等の社内書式の準備や手続きのフローも整備しておくことが後々のトラブル防止に繋がります。逆に、アルバイトで従事している非正規雇用の人間が、別の会社での事業を本業としている可能性もあります。副業・兼業を解禁する場合は、採用前の面接時に副業・兼業について尋ねる項目も加えておく必要があります。
副業・兼業の解禁でトラブルにならないためにもセミナーを受講しよう
副業・兼業の解禁は、企業の実務面で戸惑うことも多いかと思われますが、企業側がしっかりしないことには、労働者も不安になります。副業・兼業の解禁に関する適切なルール決めを行い、実務に支障を来さないように準備を整えなければなりません。まずは、下記URLより、副業・兼業ガイドラインに関するセミナーや働き方改革のセミナーを探して、ポイントをしっかりと把握しましょう。
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【参考サイト】
HRメディア サプラボ
>>>副業・兼業に関する企業側・労働者側のメリット・留意点とは?裁判例も簡単解説|副業・兼業の促進に関するガイドライン
VERTBEST
>>>副業を解禁する場合に検討すべき点や会社側のメリット・デメリットとは?
JTB Benefit
>>>副業皆勤でも企業にとってのメリット・デメリットは?導入の注意点も解説
CREAS 日本クレアス社会保険労務士法人
>>>「副業・兼業」のトラブル防止のためのルール整備について~コロナの影響により脚光を浴びる副業・兼業~