<いよいよ解禁!「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改定に企業はどう対応する?【1】> 「副業・兼業」の概要と「副業・兼業の促進に関するガイドライン」のポイントを解説

国を挙げて推奨している「働き方改革」では、時短勤務やリモートワークなど、今現在所属する組織内での働き方を変えるための取組みが実施されていますが、この「働き方改革」の中には組織の外でも働くことが許される「副業・兼業」についても改定が行われてきました。これまでも、副業・兼業に関しての労使トラブルが発生した場合、多くのケースで「副業を認める」判決が出されてきましたが、国から企業に対して、明確なガイドラインが示されていませんでした。しかし2020年9月に、厚生労働省より「副業・兼業の促進に関するガイドラインの改定」が行われ、その中で「副業・兼業の普及を図る方向性」であると、国が推奨する形で、副業・兼業が認められることとなりました。副業・兼業のガイドラインが改定された背景にはどのような事があるのでしょうか?「副業・兼業の促進に関するガイドライン」のポイントと一緒に解説します。

 

「副業・兼業」とは何か?

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」において、「副業」とは「二つ以上の仕事を掛け持つこと」と想定しています。

・会社員などの本業を持ちながら、ライター業やネット販売、アルバイトや内職
・個人事業主として自営をしながら別の企業で労働者として働く

ガイドラインでは「副業・兼業」とされていますが、「副業」と「兼業」に明確な定義が存在しないため、両者を使い分けずに「副業・兼業」とひとくくりにして使用しています。また、株式投資や不動産投資で収入を得ている場合は、資産運用としての「不労所得」に該当するため、副業とは認められません。

 

「副業・兼業」を推奨する目的と注目が集まる背景について

「副業・兼業」を推奨する国の目的は、どのようなものなのでしょうか。また現在「副業・兼業」に注目があつまる背景についてもまとめました。

副業・兼業「解禁」に向けての本格始動
厚生労働省では「モデル就業規則」を定めており、各企業は「モデル就業規則」をベースとして、自社の就業規則を定めていますが、2018年1月に実施された「モデル就業規則」の改定において、以下の2点が変更となりました。

・「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」の一文が削除された
・「副業・兼業に関する規定」が新たに設けられた

これにより「国が副業・兼業を公に認めた」ということとなり、逆に企業側が「従業の副業を全面的に禁止すること」が認められなくなりました。

「副業・兼業」を推奨する目的
厚生労働省が2020年9月に公開した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」によると、副業・兼業を推奨する目的として以下の3つの点を挙げています。

・副業・兼業によって新たな技術が開発される可能性がある
・オープンイノベーションなどの起業の手段に有効
・第2の人生のステージにもなる

一つの会社に長く尽くす日本の「サラリーマン社会」の中である意味タブー視されてきた「副業・兼業」ですが、こうして国の方から新たな可能性を示して推奨することにより、「働き方実行計画」においての副業・兼業の普及を図ることを目的としています。

「副業・兼業」へ注目が集まる背景について
スタート時は進捗が思ったほどでもなかった働き方改革ですが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、多くの企業がこれまで避けて通ってきた「テレワーク」が一気に普及しました。通勤時間に余裕ができた人が増えたことや、コロナ不況での仕事の激減、給与の不支給などの要因も相まり「本業だけては食べていけない人」が増大しました。これにより「副業・兼業」で収入を得ようとする人が増え、現在の「副業・兼業」普及への追い風となっているのです。

 

厚生労働省による「副業・兼業の促進に関するガイドライン」2つのポイント

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、「労働時間の管理」と「副業・兼業者の健康管理と労災給付」がポイントとなります。

●労働時間の管理
本業・副業の労働時間に対する通算管理は必須
大前提として、労働者は「労働基準法」によって労働時間の上限が定められています。副業・兼業でどこかの企業の一員として働く場合にも、労働時間の上限は存在します。この場合の労働時間は「本業と副業をしている企業ごとの労働時間」が通算されます。ガイドライン通りでいくと、本業で正社員として8時間フル労働した後に、副業で2時間働いた場合は、副業先企業はこの2時間を「時間外労働」として判断し、割増賃金を支払わなければなりません。また、36協定によると、労働時間は45時間が限度時間とされており、以下のような定めになっています。

・時間が労働と休日労働の合計が月100時間未満とする
・時間外労働と休日労働の合計について2ヵ月平均~6ヵ月平均が全て1月あたり80時間以内とする

この通りだと、本業・副業合わせて月100時間以上、もしくは、複数月平均80時間超えの時間外労働と休日労働をすると、労働基準法違反になる恐れがあります。この事態を避けるためには、本業と副業合わせた労働時間がオーバーしないように、労働時間の通算管理が必要となります。そこで、副業・兼業の促進に関するガイドラインでは、以下のような管理モデルを提唱しています。

<副業・兼業の促進に関するガイドラインで提唱している管理モデル>

A社=先に労働契約を締結していた使用者
B社=時間的に後から労働契約を締結した使用者

①副業の開始前に、A社における1ヵ月の法定労働時間と、B社における1ヵ月の労働時間を合計した時間数が、単月で100時間未満、複数月平均80時間以内の範囲となるよう、A社B社各社における労働管理時間の上限をそれぞれ認定すること

②A社は自らの事業場における法定外労働時間の労働については、B社は自らの事業場における労働時間の労働について、それぞれに割増賃金を支払うこと

これらの取決めにより、A社とB社は、副業・兼業の開始後において「それぞれあらかじめ設定した労働時間の範囲内で労働させる場合に限り」常に他社における実働労働時間の把握を要することなく、労働基準法を遵守することが可能となる、とされています。ただし、この「通算」が適用される場合は「雇用関係にある働き方」のみにあり、どこかの組織に所属する会社員やアルバイトなどが対象となるため、フリーランスで副業をする人には適用されません。

●副業・兼業の健康管理と労災保険給付のポイント
健康確保措置の実施
企業は、正社員や副業・兼業者に関わらず、健康診断や、長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェックなどの「健康確保措置」を実施しなければなりません。しかし、一つの事業所において、所定の労働時間が通常の労働者の3/4以下の場合は、健康確保措置の対象とならないため、労働者にはセルフチェックの徹底を呼び掛け、必要に応じて健康確保措置を実施するなどの対応が望まれます。

●副業・兼業者の労災保険給付について
従来は労災が発生した事業場における賃金分だけを元に算定されていた労災給付金が給付されてため、一つの事業場での賃金が少なくなる副業・兼業者には十分な補償が与えられませんでした。しかし、2020年9月1日より、労災保険給付が改定され、複数の事業場における賃金額を合算して、労災給付金を算定することになりました。また、複数の事業場で働く労働者の労働先の業務上の負荷を総合的に消化して労働認定が行われます。ちなみに、A社からB社への移動中に被災してケガなどをした場合は「通勤災害」としてB社の労災保険給付が対象となります。

 

「副業・兼業」の導入をすすめるならまずセミナーを受講しよう!

いよいよ解禁となった労働者の「副業・兼業」。企業として対応するためには、ガイドラインをよく読み解くことがポイントです。しっかりとした体制で、労務処理を行えるよう、セミナーなどを受講して理解することをお薦めします。

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【参考サイト】
厚生労働省資料
>>>副業・兼業の促進に関するガイドライン(わかりやすい解説)

gooニュース
>>>改定版「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を徹底解説~労働時間、健康はどう管理する?~

ITトレンド
>>>「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改定。企業の対策とは【2020年10月労務ニュース】

エクスプローラー株式会社
>>>副業・兼業の促進に関するガイドラインとは?改定の内容を確認しておこう!

CREAS 日本クレアス社会保険労務士法人
>>>「副業・兼業」のトラブル防止のためのルール整備について~コロナの影響により脚光を浴びる副業・兼業~