≪外国人労働者雇用4≫ 1号特定技能外国人支援計画と「義務的支援」と「任意的支援」について
改正入管法により、特定技能を持つ外国人を受け入れる機関は、「1号特定技能外国人支援計画」を作成しなければなりません。1号特定技能外国人が安心して就労するために、支援機関ではどのような支援計画を立て、実施するのでしょうか?「義務的支援」や「任意的支援」と合わせて解説します。
1号特定技能外国人支援計画について
「特定技能」の在留資格で、就労する外国人労働者には職業生活上はもちろん、日常生活上、社会生活上の支援が必要となります。また、改正入管法により、1号特定技能外国人を受け入れる特定技能所属機関では、「1号特定技能外国人支援計画」を作成する義務があります。1号特定技能外国人支援計画は、入出国や、円滑なコミュニケーションを行うためのサポート、日常生活や仕事の悩みなどの窓口になるなど、10項目に渡って記されいます。特定技能所属機関や、登録支援機関では、記された内容に関して、全項目を必ず実施しなければなりません。なお、1号特定技能外国人支援計画の作成、支援の実施に関しては、特定技能所属機関から登録支援機関へ委託することも可能です。
1号特定技能外国人支援計画の内容について
1号特定技能外国人支援計画は、以下のような内容で作成されています。これらはすべて「義務的支援」として、実施しなければなりません。
(1)事前ガイダンス
特定技能所属機関及び、登録支援機関が1号特定技能外国人と雇用契約を締結した後、在留資格認定証明書を交付申請する前、または、在留資格変更の許可を申請する前に、「事前ガイダンス」を実施する必要があります。事前ガイダンスでは、入国手続き、労働条件、活動内容、保証金徴収の有無等について、面談やインターネットのビデオ通話を通し、就労予定の外国人へ説明をします。尚。面談時は必ず本人確認をしてから実施します。事前ガイダンスを実施した後に質問が発生したら、適宜応じる姿勢が望ましいとされています。
(2)出入国する際の送迎
出国時に送迎する際は、1号特定技能外国人が、出国の手続きを受ける空港や港まで送迎の義務があります。その際は、保安検査場の前まで一緒に同行し、入場するまで見届けなければなりません。送迎支援を実施しないケースでは、事前に分かりやすい交通手段や、緊急時の連絡手段などを確認・伝達しておき、就労予定の外国人が迷わずスムーズに、自力で特定技能所属機関までたどり着ける配慮が必要です。
(3)住居確保・生活に必要な契約支援
1号特定技能外国人の受入れ機関は、住居の契約事項にある連帯保証人となり、社宅を用意する義務があります。一人あたりの居室の広さについては、7.5平方メートル以上が適切な広さとされています。また、日常生活に必要な銀行口座の開設、携帯電話の契約、ガス・水道・電気などライフラインの契約をする際も窓口へ案内し、就労予定の外国人が言語や風習の壁で困らないよう、契約の際のサポートも行います。
(4)生活オリエンテーションの実施
1号特定技能外国人が円滑に日本で生活ができるように、日本の風習や慣習、マナー、公共機関の利用方法、緊急時の連絡方法、災害時の対処法など、生活に必要な知識のオリエンテーションを実施します。生活オリエンテーションでは、以下のような細やかなフォローが必要となります。
【情報提供の義務的事項】
・金融機関の利用時間、入出金や振込などの手順、ATMの使い方、手数料、銀行口座の閉鎖方法
・医療機関において、保険証の持参、受診方法、アレルギーや宗教上の理由による治療の制限などの説明方法
・自動車やバイクの運転には免許証が必要であることや、運転免許の取得方法、歩行者は右、車は左などの交通ルール、自転車の罰則規定など。
・電車バスなどの公共交通機関の利用方法、切符の購入、交通ICカードの購入や使い方など。
・自宅から勤務先までの経路と所要時間
・ゴミの分別、収集日、粗大ごみの捨て方など地域のルールを守ることの大切さ
・騒音や迷惑行為などの日本におけるマナーについてのレクチャー
・路上喫煙禁止エリアなど喫煙に関するルールの説明
・食料品や日用品など生活必需品を購入するためのコンビニエンスストア、スーパーマーケット、ドラッグストア、家電量販店の所在地情報
・気象情報、災害情報など行政から提供される、外国人向け災害情報のアプリやホームページの案内。
・銃刀剣類所持の禁止、薬物の禁止、在留カード不携帯。貸し借りの禁止、他人のATMでの引き出し禁止などの違法行為の周知
(5)公的手続きへの同行
不動産探しを含む住居の確保、社会保障や税金などの手続きの同行、書類作成の補助をします。
(6)日本語学習の機会の提供
日本人コミュニティとの円滑なコミュニケーションを図るためにも、日本語のスキルアップが必要となります。そのために、1号特定技能外国人に日本語教室等の入学案内や教材などの提供を実施します。
(7)相談・苦情への対応
1号特定技能外国人が就労後などに、職場で困難な立場に追い込まれる、日本での生活になじめないなどの相談や、上司や雇用主への苦情を訴えるため、1号特定技能外国人が十分理解できる言語での対応が必要です。ここでの「十分理解できる言語」とは母国語がベストですが、説明する内容を咀嚼し理解できる他言語でもOKとされています。
(8)日本人との交流促進
地域になじむためにも、地元の自治会などで開催される交流の場や季節のイベントなどの行事の案内、一緒に参加するなどのサポートが欠かせません。このような行事参加することにより、日本の風習や四季折々の文化に触れるいい機会となります。
(9)転職支援(人員整理等の場合)
受け入れ先企業の都合で、1号特定技能外国人の雇用が解除されるケースもあります。その場合は、次の転職先や求人先の案内や、必要書類の作成の補助などを手伝います。求職活動中は、失業給付や有給休暇の付与など行政手続きの情報提供も、併せて実施します。
(10)定期的な面談・行政機関への通報
3か月に1回以上、支援責任者等は1号特定技能外国人及びその上司と面談し、労働基準法等の違反がないかチェックします。違法な雇用状態が発覚した場合、速やかに通報します。
どう違う?「義務的支援」と「任意的支援」
1号特定技能外国人支援は、「義務的支援」と「任意的支援」があります。
「義務的支援」とは、1号特定技能外国人支援計画に記された支援内容を指し、記載したことをすべて実行しないと「基準に満たしていない」と判断され、1号特定技能外国人の受入れを認められなくなります。これは、特定技能所属機関も、業務を委託された登録支援機関も同じ条件で、義務的支援を怠ると支援体制が整ってないと判断されてしましまいます。
「任意的支援」とは、上記で解説した義務的支援以外に与えるアドバイスや情報などを指します。
【「任意的支援」となるもの】
・入国する時点での日本の気候や服装などについてのアドバイス
・母国から必ず持参した方がいいもの、日本では入手しにくいもの、日本に持ち込んではNGなもの
・特定技能所属機関等から支給されるユニフォームや作業着などについて
・特定技能2号から特定技能1号へ在留資格を変更した外国人が日本に在留している場合の出入国のサポート
・1号特定技能外国人が雇用解除となった場合の就活サポート以外の日常生活の支援
・日本語学習を促すため、日本語能力検定の受験支援や資格取得者への優遇措置を講じること
・日本語学習を促すため日本語教室や日本語教育機関の入学金や月謝、学費教材費などを支援機関で経済的支援を実施すること
・1号特定技能外国人と面談を実施する際、相談・苦情専用相談窓口や専用のメールアドレスを設置すること
・労働基準法の違反などを通報しやすいように関係行政機関の窓口の情報を一覧などにして提供しておくこと
このように特定技能支援機関や登録支援機関では、1号特定技能外国人を日本へ迎え入れ、就労の支援をするために「しなければいけないこと」がたくさんあります。スムーズに受入れ、即戦力となってもらうためには、外国人雇用に関して受入れ側で知識を持たなければなりません。そのために、セミナーは非常に有効です。ぜひご活用下さい。
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【参考情報】
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