≪外国人労働者雇用1≫ 改正入管法で外国人労働者雇用はどう変わる?

日本国内の労働人材不足が深刻化し、どの業界も慢性的な人手不足に悩まされている中、「外国人の受入れを見直し、外国人労働者の受入れを拡大する」として、2018年12月8日の臨時国会において、入管法改正案が成立しました。2019年4月1日から施行されている「改正出入国管理法」では、新たに設けられた在留資格「特定技能」が設けられています。「特定技能」とはどのような資格なのか、また、特定技能によって外国人労働者雇用がどう変わるのか解説いたします。

 

改正入管法で創設された「特定技能」とは?

政府によると、平成30年度6月末時点での在留外国人数は263万人7251人となっており、平成29年度と比べると2.9%増加しました。この値は過去最高値と言われ、近年、在留外国人数は右肩上がりとなっています。日本国内での労働力確保が困難であるなか、一定の専門性や技能を有した外国人労働者は即戦力となります。「特定技能」の導入は、一定の専門性や技能を持った新たな外国人労働者を受け入れるため、公的機関や生活インフラの多言語可などの生活基盤の整備を、政府主導で進めるために設けた制度となります。

 

改正入管法後で外国人労働者雇用はどう変わる?

改正入管法が施行されると、「在留資格」が変ります。基本的に、日本国籍を持たない外国人は、日本政府から「合法的に滞在することを許可される為の資格」である、「在留資格」を要しました。在留資格には、特別永住権、永住資格、定住資格などの長期滞在が可能な在留資格、留学や興行といった短期滞在の在留資格など28種類あり、日本で違法に滞在することができないシステムとなっています。在留資格の期限が切れたまま、もしくは、在留資格を持たないまま日本に留まり続け、仕事をしていると、不法滞在や不法就労とみなされます。

これまでの入管法では、「医師・エンジニアなど高度な技術を持つ専門職」「外国人技能実習制度を利用した技能実習生」「留学生」に対して、日本での就労を許可してきましたが、改正後では、日本国内の人手不足を補うために、特に人手が足りない14業種を含めた新たな在留資格を設けました。この在留資格を、「特定技能」と言います。新たな在留資格によって、外国人労働者の受入れ増え、すでに留学生などを雇っている事業などで、長期雇用が可能となることが、改正後のメリットと言われています。

 

特定技能について

ではここで、「特定技能」について解説します。特定技能には1号と2号が存在します。

(1)特定技能1号とは
特定技能1号とは、14種の【「特定産業分野」に属する、相当程度の知識、又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格】と定義されています。家族の帯同は認められておらず、在留期間は1年、通算で上限5年まで可能で、6か月又は4か月ごとの更新が必要です。いわゆる、「即戦力」となる人材を受け入れるため、一定の技術水準を要します。また、生活や業務に必要な日本語能力も必要とされます。このため、「技術水準試験」「日本語能力水準試験」が存在します。

「特定産業分野」は、以下の14種類となります。
1.介護
2.ビルクリーニング
3.素形材産業
4.産業機械製造業
5.電気・電子情報関連産業
6.建設
7.造船・舶用工業
8.自動車整備業
9.航空
10.宿泊
11.農業
12.漁業
13.飲食料品製造業
14.外食業

特定産業分野の技能検定は、産業別に定められた試験方法によって、審査が行われます。介護業・外食業・宿泊業については2019年4月より実施、飲食料製造業は2019年10月までに実施、ビルクリーニング業は2019年秋以降に実施、残りの、素材系産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業・建設・造船/舶用工業・自動車整備業、航空、農業、漁業も2020年3月までに実施される予定となっています。日本語能力判定テストは、ベトナム、フィリピン、中国、インドネシア、カンボジアなど9か国で、2019年度に実施される見込みとなっています。

(2)特定技能2号とは
特定技能2号【「特定分野産業」に属する、熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格】と定義されています。「特定分野産業に属する熟練した技能を要する」というのは、労働者自らの判断により、高度に専門的、技術的な業務を遂行できる能力を持ち、監督者として業務の統括もできる人材を指します。技術水準試験や日本語水準能力試験が免除となり、配偶者と子どもならば家族の帯同も認められています。

 

改正入管法施行後において懸念されていること

新たな在留資格である「特定技能1号2号」により、外国人労働者の受入れが拡大しますが、すぐに人手不足解消につながるかというとそうではなく、実際には解決しないといけない課題が山積みです。例えば、外国人技能実習制度を利用した実習生たちが、低賃金や過重労働などで酷使されている実態や、派遣先で行方不明になる問題などが、ニュースでたびたび報じられています。外国人技能実習制度の実習生たちは、特定技能1号として移行すると見込まれており、今後、労働環境改善や行方不明者対策などについて対応が必要となります。

また、多くの外国人を受け入れる際に、生活インフラの確保や、日本語習得の支援も必要となりますが、手が回っているとは言い難い状況です。政府で定めたとしても、実際に受け入れるのは民間の企業となりますので、まずは企業や社会で外国人労働者を受入れるための環境づくりを、官民一体となって意識してゆくことで、課題がクリアされると期待されています。

日本人にはこだわらない、外国人の方でもかまわないから労働力がほしい、雇用したいとお考えの方は、セミナーなどに参加して、そんな「外国人労働者雇用」についてノウハウを学んでみませんか?外国人労働者の受入れに際し、民間レベルで意識を高め、多様性のある社会に対応できる企業を目指しましょう。

>>>最新の人事・労務セミナー情報はこちらから

 

【参考情報】
厚生労働省
外国人雇用対策

HR NOTE
【入管法が改正!】何が変わるの?外国人労働者受け入れの今後は?

Smart HR
4月1日に施行された改正入管法。「外国人労働者雇用」で事業者が注意すべきこととは?

Democracy Web
入管法改正の解説と日本が抱える在日外国人の労働問題

働き方改革ラボ
改正入管法を解説!外国人労働者受け入れ拡大で働き方はどう変わる?