<予測困難な「VUCAの時代」をどう生きるか?【1】> 「VUCA」とは何か?VUCAを構成する「4つの要素」と「OODAループ」について
世界情勢が一変した新型コロナウイルスのパンデミックを皮切りに、世界各地での異常気象による災害、国家間紛争などによる物流の停滞、物価の高騰など、つい身近なところにも「予測困難な事態」が常に起き続けている状況にあります。この予測困難な事態が次々を起こる状況を「VUCA」と呼び、世界中が巻き込まれている予測困難なこの時代を「VUCAの時代」と称しています。いま、世界中から注目を集めている「VUCAの時代」とは、具体的にどのようなものなのでしょうか?VUCAを構成する4つの要素と、VUCAに欠かせない「OODA(ウーダ)ループ」について解説いたします。
「VUCA」とは何か
まずは「VUCA」の発祥や、政府の提言などについて見て参りましょう。
●「VUCA」の発祥
「VUCA」とは、これまでの「当たり前」を覆すような社会事変が次から次へと起こる時代を指す言葉です。元々、アメリカの軍事用語として使われていた言葉で、第二次世界大戦後から続いていた冷戦時代の終結とともに複雑化した国家間の問題に対して、軍事戦略が立てにくくなったことや、新たな脅威として「テロ」が台頭してきたことで、従来のやり方が通用しなくなった状況下で使われてきました。同じように、ビジネスの世界でもこれまでのやり方が通用しなくなってきた2010年頃からビジネス用語としてVUCAが使われ始めています。
●政府による「VUCA」の提言
経済産業省では「VUCA時代の環境変化によって、日本の産業界は多くの課題に直面している」と指摘し、2019年に発表している「人事競争力強化のための9つの提言(案)」において「グローバル化・デジタル化・少子高齢化などの社会変化に対応するには、人材マネジメントのアップデートが必要である」と提言しています。これまでの常識が通用しない世界において、企業はVUCA時代に適応できるような人材を育成してくことが重要であり、人材戦略がVUCA時代のカギを握るといっても過言ではありません。
VUCAを構成する4つの要素
VUCAを構成しているのは、下記の4つの要素です。
V=Volatility(変動性)
U=Uncertainty(不確実性)
C=Complexity(複雑性)
A=Ambiguity(曖昧性)
それぞれについて解説いたします。
【Volatility(変動性)】
Volatility(変動性)は、予測困難な事象が発生し、世の中が急激な変化を余儀なくされるという意味を持ちます。記憶に新しいところでは、新型コロナウイルスの世界的なパンデミックや、中東や東欧などの国家間紛争などが挙げられます。この「急激な変化」は決して対岸の火事ではなく、日本国民のごく身近なところにも影響を及ぼしており、例えばテレワークによるオフィスの電子化、場所にこだわらない働き方などこれまでの「日常」が一変しています。また、デジタル技術の急激な革新により、より多様化した価値を共有することで人々は豊かになってきていますが、優れたビジネスモデルや市場が、成熟しては陳腐化するというサイクルが早くなり、一度成功してもその優位性を維持することは難しいとされています。
【Uncertainty(不確実性)】
Uncertainty(不確実性)とは、人口動態や自然災害、そして、情報社会での誤情報の拡散などが該当します。例えば、世界の人口は増加の一途をたどっているが、日本では人口減少や少子高齢化、将来における労働人口の減少などが社会問題化しています。気候においても、世界的な異常気象で大規模な干ばつや水害、そして噴火や地震などの自然災害が世界中で発生しています。日本も例外ではなく、台風や雪害などによる災害が毎年のように発生し、被害が相次いでいる状況です。このような、いつ何が起こるかわからない状況では、ビジネスにおいて長期的な計画を立てることが難しく「これまでのやり方が通用しない」顕著な例でもあります。また、インターネットの発達によるSNSの普及で、誰もが手軽に情報収集できる世の中となり、信ぴょう性のない情報の拡散や、フェイクニュースによる故意の拡散など、企業の炎上リスクなども懸念の種です。
【Complexity(複雑性)】
Complexity(複雑性)では、影響を与える要素の数が多く、複雑に絡み合うことで把握が困難となり、解決が用意でない状況を指します。例えば、BRICsやNEXT11と呼ばれる新興国の市場に参入する場合、単に活気のある市場だから、という理由だけで参入しても、右肩上がりの成長があるとは言えません。世界から見たアメリカの影響力の低下や、中東周辺の政情不安、日本においては、近隣諸国との関係性なども考慮する必要があり、リスクも懸念されます。複雑性を考慮するには、困難かつ多大なリソースがかかるため、より高いアンテナを張り、情報収集能力や、物事の本質を見極める能力が必要となります。
【Ambiguity(曖昧性)】
Ambiguity(曖昧性)とは、とある事象が複数の意味に捉えられて、正解が見えない状況を指します。例えば、ひと昔前なら、流行はテレビや雑誌から作り出すことが可能でしたが、SNSの発展で、インフルエンサーと呼ばれる発信力のある個人が情報を発信することで、消費者の価値観が急激に多様化しはじめてきています。何が流行するかわからない曖昧な状況下で、企業は消費者ニーズを的確に見定める能力を付けなければなりません。
VUCAのカギを握る「OODAループ」とは?
これまでのビジネスシーンでは「P(Plan計画)D(Do実行)C(Check評価)A(Action行動)」の「PDCAサイクル」を繰り返すことで、マネジメントの品質向上を目指していまました。しかし、VUCA時代を乗り越えるためには、PDCAに取って代わる新しいフレームワーク「OODA(ウーダ)ループ」が有効と言われています。
OODAループを回すのは以下の4つの要素となります。
O→Observe(観察)
O→Orient(状況を理解する/仮想構築)
D→Decide(意思決定)
A→Action(実行)
・Observe(観察)
市場や顧客などの外部環境をよく観察して「生データ」を収集する
・Orient(状況を理解する/仮想構築)
生データをもとに、今何が起きているっかを把握、理解する
・Decide(意思決定)
理解した状況に対して具体的な方針やアクションプランを決定
・Action(実行)
プランを元に実行する
OODAループはまず「観察」と「状況判断」から始ますが、この2つの要素をとても重要視しています。というのも、何が起こるか予測困難なVUCA時代では「計画」が台無しになることも少なくなく、現場判断での柔軟な対応が肝となってくるからです。常に想定外が起こることを前提とし、事業活動の最前線で何が起こるかを正しく把握し、それに対応できるよう素早く意思決定できることが、VUCA時代を生き抜くための重要なヒントとなっています。
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【参照情報】
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