<未来を創る新たな世界基準SDGs【5】> ビジネスとSDGs -その活用事例-

世界中のあらゆる企業が注目し、日本でも政府主導で取組みが推奨されているSDGs事業。国内の大手企業はもちろん、各地方自治体でもあらゆる視点でSDGsを活用し、ビジネスや地方の創生に活かしています。ここではSDGsの活用事例や、SDGsと深いかかわりのあるESG投資についてご紹介します。

 

世界の投資家が注目するESG投資とは?

ESG投資とは、「Environment (環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の頭文字からなる投資のことです。ESG投資の歴史は、SDGsよりも少し古く、2006年まで遡ります。当時のアナン国連事務総長が「責任投資原則(PRI)」を提唱したことにより、世界の金融業界や機関投資家が、ESG課題を意識するようになりました。これまでは企業の株の売買などをする際に、経営状況や財務状況で売買を検討する流れが一般的でしたが、PRI以降は企業へ投資する前に、企業の財務情報だけでなく、環境や社会へ責任を果たしているかどうかも評価されるようになったのです。

日本は2010年以降、世界最大級の機関投資家GPIF(年金積立管理運用独立行政法人)のPRIへ署名により、機関投資家から、汚染物質の排出状況、商品の安全性、供給元の選定基準、従業員の労働環境などのESGに基づく非財務情報の開示を求められるようになりました。これをきっかけに投資を受ける日本側でも、ESGを考慮する動きが広がり始めました。

2015年にSDGsが提唱された以降、機関投資家は以前よりも環境問題への取組み、人権を守っての人道的な経営、女性の活躍を、社会貢献度などをチェックするようになり、SDGsを実践している企業に投資する傾向が増えてきました。機関投資家からしても、ただ国連で提唱されたからSDGs企業に投資するのではなく、企業がSDGsに取り組む事により生まれるCSV(共通価値の創造)によって、企業価値が持続的に向上する可能性があり、結果的に長期的なリターンへの期待値が上がるからとされています。このような流れから、SDGsは日本企業にとってESGを考える上での大きな指標となっており、SDGsと真摯に向き合う企業が増えつつあるのです。

 

2019 Global 100にランクインしている日本企業

実際にはどのような企業が、どのような事業でSDGsに取り組んでいるのでしょうか?2019 Global 100から企業の事業例をご紹介します。

・Global100とは?
「Global 100」とは、カナダにあるコーポレートナイツ社が実施している「世界のあらゆる業界の大企業を対象に、環境・社会・ガバナンスなどの観点から持続可能性を評価し、上位100位を選出する」世界規模のランキングです。2019年は、約7500社が対象となっています。

・2019 Global 100にランクインしている日本企業の特徴
2019 Global 100では、以下の8社の企業が100位以内にランキングしています。

エーザイ(73位)
武田薬品工業(78位)
横河電機(82位)
積水化学工業(89位)
花王(92位)
トヨタ自動車(95位)
コニカミノルタ(96位)
パナソニック(100位)

この中で、8つの企業の全てが取組んでいるSDGs17の目標は、SDGs3の「すべての人に健康と福祉を」(保健)SDGs12「つくる責任・つかう責任」(生産・消費)、SDGs13「気候変動に具体的な対策を」(気候変動)でした。それに対し、SDGs2「飢餓をゼロに」(飢餓)、SDGs4「質の高い教育をみんなに」(教育)、SDGs16「平和と公正をすべての人に」(平和)に取組んでいる企業はあまり多くない、という結果が出ています。

・2019 Global 100にランクインした日本のSDGs取組み企業をご紹介
2019 Global 100にランクインした日本企業のSDGsには、どのような事例があるのでしょうか?いくつかピックアップしてご紹介します。

【エーザイ】
●達成を目標としているSDGs項目
SDGs1 貧困をなくそう
SDGs3 すべての人に健康と福祉を
SDGs5 ジェンダー平等を実現しよう
SDGs6 安全な水とトイレを世界中に
SDGs12 つくる責任 つかう責任
SDGs13 気候変動に具体的な対策を
SDGs17 パートナーシップで目標を達成しよう

●取組み内容
医薬品メーカーのエーザイでは、日本の企業ではあまり取組みの見られない貧困問題に向き合っています。開発途上国・新興国への医薬品アクセス向上への取組みを通じた、健康福祉の向上や中間所得層の拡大による経済成長への貢献を目指しています。SDGs17の「実行手段」では、重点領域でのイノベーション創出に受けた企業、アカデミアとのパートナーシップや、医薬品アクセス拡大に向けた国連機関、非営利組織、研究機関、アカデミアなどとのパートナーシップを目標としています。

【トヨタ自動車】
●達成を目標としているSDGs項目
SDGs3 すべての人に健康と福祉を
SDGs6 安全な水とトイレを世界中に
SDGs7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
SDGs9 産業と技術革新の基礎をつくろう
SDGs11 住み続けられるまちづくりを
SDGs12 つくる責任 つかう責任
SDGs13 気候変動に具体的な対策を

●取組み内容
日本の自動車業界を代表するトヨタ自動車では、SDGs3、SDGs11、SDGs13の3つの目標を掲げています。SDGs3では交通事故死傷者低減のため、累計800万台の車にトヨタの安全装備「Toyota Safety Sense」の装着を目指します。SDGs11では、ベトナムにてトヨタモビリティ基金による、モビリティ格差を解消するための豊かなモビリティ社会の実現に向けて取組んでいます。SDGs13の気候変動に関しては、2030年までに電動車の販売を550万台以上(EV/FCVは100万台以上)目指し、その開発に取り組んでいます。

【パナソニック】
●達成を目標としているSDGs項目
SDGs1 貧困をなくそう
SDGs3 すべての人に健康と福祉を
SDGs4 質の高い教育をみんなに
SDGs5 ジェンダー平等を実現しよう
SDGs7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
SDGs8 働きがいも経済成長も
SDGs9 産業と技術革新の基盤をつくろう
SDGs10 人や国の不平等をなくそう
SDGs11 住み続けられるまちづくりを
SDGs12 つくる責任 つかう責任
SDGs13 気候変動に具体的な対策を
SDGs14 海の豊かさを守ろう
SDGs17 パートナーシップで目標を達成しよう

●取組み内容
大手電機メーカーのパナソニックでは、「クリーンなエネルギー社会づくりのために、クリーンなエネルギーの創出・活用を進め、クリーンなエネルギーでより良く快適にくらせる社会の実現」を推進しています。エネルギーだけでなく、安全な交通社会づくりのために、カメラ・センシング技術や画像処理技術を用いた、先進運転支援システム(ADAS)の開発、提供、雇用の面で、強制労働、児童労働防止の取組みや外国人移民労働者を含む労働者の権利保護、労働安全衛生管理など、多方面からのSDGs目標に取組んでいます。

 

自治体でのSDGs取組み事例

SDGsに取組んでいるのは、企業だけではありません。拡大版SDGsアクションプラン2019にある「環境未来都市構想」で、すでにモデル都市としてプロジェクトを進めている自治体があります。実際にどのような取組みなのか、「環境未来都市」「環境モデル都市」から、それぞれご紹介いたします。

■環境未来都市
【例1】北海道下川町
「人が輝く森林未来都市しもかわ」

豊富な森林資源から、最大限に収入を得続ける自立型の森林総合産業を創出する「森林未来都市」モデルとなっています。森林バイオマスを中心とした、再生可能エネルギーによる、完全自給と域外燃料供給を実現するとともに、子どもから高齢者まで、森から学び、森と共に生きる、互助と協働の快適な暮らしを創造し続ける地域社会の確立を目指します。また、これらの「森林未来都市」のモデル政策・事業パッケージを、アジア各国の小規模山村自治体への輸出限界も視野に入れています。

【取組み実例】
・林業システムの革新
・小規模分散型再生エネルギー供給システムの整備
・集住化モデルの構築

【例2】千葉県柏市
「柏の葉キャンパス 公民学連携による国際学術研究都市。次世代環境都市」

柏市では、エネルギー問題や超高齢化対応等、現代社会が抱える課題に対して「環境共生都市」「健康未来都市」「新産業創造都市」という3つの解決モデルを掲げ、公民学が連携してつくる新しいまちづくりに取り組んでいます。柏の葉キャンパスエリアでは、省エネ対策や、非常時の電力確保を実現するエネルギー管理システムや、健康情報発信拠点、ベンチャー企業支援拠点等が整備されており、この体制をベースに、住民参加型の実証実験や、まちづくりイベントなどを開催しています。

【取組み実例(一部)】
・駅周辺5街区エネルギー管理・節電ナビゲーションを行う『柏の葉・AEMSセンター』のインターフェイスシステム整備
・再生可能エネルギー地産地消システム
・非常時における街区電力融通
・マルチ交通シェアリングシステム
・柏の葉健康未来都市宣言

■環境モデル都市
【例1】大阪府堺市
「快適な暮らし」と「まちの賑わい」が持続する低炭素都市「クールシティ・堺」の実現

古くから商業のまちとして知られる堺市では、低酸素都市を実現するための3つのまち作りを実施しています。環境保全と経済成長の両立を実現するための「産業構造の転換」、自動車社会から公共交通や自転車中心の交通体系へと転換し、土地利用などには環境配慮に努める低炭素型都市の形成を促す「都市構造の変革」、クリーンエネルギー利用を促進し、環境取組みが自主的に促進するような仕組みづくりと人材育成を行うことで、まち全体が低炭素を意識することを目指す「環境文化の構造」です。これらの取組みを連携させ、相乗効果を生み出すことで、持続的発展を続ける「クールシティ・堺」を実現します。

【取組み事例(一部)】
・下水再生水複合利用モデル構築事業
・事業者・金融機関との連携による低炭素化の推進
・次世代エネルギーパークを活用した再生可能エネルギー等の普及促進
・堺エコロジー大学
・ベトナム社会主義共和国ハロン湾における海上輸送を基盤とする廃棄物循環システム構築事業

【例2】新潟県新潟市
「田園環境都市にいがた~地域が育む豊かな価値が循環するまち~」

日本でも有数の米どころである新潟県新潟市では、「市街地のすぐそばに田園が広がる恵まれた条件を備え、食・文化・エネルギー・緑・憩いの場など、誰もが都市と田園の両方の価値を享受できる持続可能な都市」を理想の姿としています。実現するために、「田園環境の保全・持続可能な利用」「スマートエネルギーシティの構築」「低炭素型交通への転換」「低炭素型ライフスタイルへの転換」の4つの取り組み方針を掲げ、環境保全型農業の推進や、豊富な農業系バイオマスの利用、ニューフードバレー形成、都市と農村の交流促進、自然豊かな市域における生物多様性の保全など、さまざまな取組みを実施しています。

【取組み事例(一部)】
・新潟ニューフードバレーの形成
・植物系バイオマス利活用の推進
・新潟発わくわく教育ファームの推進
・低炭素型ライフスタイルへの誘導
・公共交通の再構築~過度なマイカー依存からの脱却~

 

SDGsを事業に取り込むためには、SDGsを深く理解し、自分の企業で取組むことのできるSDGs目標を探すことがポイントです。また、そのためには企業内でSDGsに対する意識を高め、全社で取組む体制を整えることも重要です。SDGsに関するセミナーなどで、SDGsの正しい知識やSDGsの最新動向などを学び、ビジネスへ活かしましょう。

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【参照情報】
2030 SDGsで変える
>>>SDGs(持続可能な開発目標)とは何か?17の目標をわかりやすく解説

内閣府地方創生推進事務局
>>>環境未来都市・環境モデル都市の取組み事例紹介

英語4技能・探究学習推進協会
>>>「2019 Global 100」にランクインした日本企業のSDGsへの取り組み内容