<子育てと介護に安心を 改正育児・介護休業法【2】> 改正育児・介護休業法で見直される「子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得」について解説!

日本の少子高齢化に伴い、仕事をあきらめずに育児や介護に専念するために制定された育児・介護休業法は、取得のニーズに合わせて、こまめな改正が繰り返されてきています。2021年1月1日から施行される「子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得」においては、これまで半日単位で取得が可能であった看護休暇・介護休暇が、時間単位で取得できることになります。看護休暇・介護休暇を取得させる場合の実務は、どのように対処したら良いのでしょうか?看護休暇・介護休暇の取得対象、実務での運用ポイントについて解説いたします。

 

今回の改正育児・介護休業法のポイント

2017年に改正された現行の育児・介護休業法では、「一日の所定労働時間が4時間以下の従業員は除いて半日単位」での看護休暇・介護休暇の取得が可能です。今回の改正では、すべての従業員を対象にして「時間単位」で取得できるようになります。子どもの急な発熱や体調不良、通院付き添いや日常的な介護など、育児での看護や介護は、同じルーチンで予定通りとなることはありません。特に介護の場合、認知症介護などで突発的な対応が必要であったり、担当のケアマネージャーとの打ち合わせ時間のために半休や全休をとっても、短時間で済むことが多く、場合によっては仕事に戻れるケースも多く、時間単位取得できる制度が欲しいという声も多かったようです。そこで「子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得」では、もっと細やかな時間のニーズに対して柔軟に対応できるよう「始業時刻または終業時刻」と連続して取得することを可能としたのです。

 

子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得の運用方法

では、改正育児・介護休業法においての「子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得」は、実務でどのように運用したら良いのでしょうか。下記にポイントをまとめました。

●取得できる「時間」の単位について
「時間」とは、「1時間の整倍数」を指します。事業主は、労働者からの申し出に応じて「労働者の希望する時間数で取得できるようにする必要がある」とされており、例えば、「2時間単位での看護休暇・介護休暇の取得のみを認め、1時間単位での取得を認めない」というケースに対しては、事業主が一方的に労使協定を締結したとしても、1時間単位での取得を認めないこととする取扱いはできないこととなっています。また、元々「分単位」で取得できるようにしている制度を導入している場合は、別途時間単位で取得できる制度を設ける必要はない、とされています。

 

●所定労働時間が決まっている労働者で「年5日の看護休暇・介護休暇が取得可能であるケース
基本的に、看護休暇・介護休暇を日単位で取得するか時間単位で取得するかは、「労働者の選択」に委ねられています。

【日単位で看護休暇・介護休暇を取得する場合】
例えば、1日の所定労働時間が、7時間30分の労働者が1日の勤務時間すべて休暇として取得する場合は、「1日分(7時間30分)」の看護休暇・介護休暇として取り扱うこととなります。この場合、「1日」を消費しているので、残り4日の休暇が取得可能となります。

【時間単位での看護休暇・介護休暇を取得する場合】
前提として、時間単位で看護休暇・介護休暇を朱徳する場合は、「30分」という端数を切り上げて1日とします。所定労働時間が、7時間30分の場合は30分切り上げ8時間分の休暇が「1日分」となります。従って、7時間休暇を取る場合は、残り4日+1時間の休暇が取得可能という計算です。

 

●日によって所定労働時間が異なる労働者の取扱いについて
1日の所定労働時間数と同じ時間の看護休暇・介護休暇を取得する場合は日単位とすべきか?休暇を取得する日の所定労働時間が7時間の労働者が、8時間分の休暇を取得する場合、「日単位」で取り扱うと1日分の休暇に相当しますが、これを「時間単位」で取扱うと、介護休暇1日分+1時間となり、時間単位で取得すると労働者の方が損をしてしまいます。

このようなケースをあらかじめ統一するべく「時間単位での看護休暇・介護休暇を取得する場合の「時間」は「1日の所定労働時間数未満の時間」と定め、1日の所定労働時間数と同じ時間の看護休暇・介護休暇を取得する場合は「日単位」での看護休暇・介護休暇として取得することとしています。年5日分の看護休暇・介護休暇が取得可能である場合は、所定労働時間6時間の日に6時間休むことは1日分とされ、残り4日の休暇が取得可能です。そして休暇を取得する日の所定労働時間が8時間で6時間休む場合は「6時間」の休暇を取得する事になり、4日+1時間の休暇が残されます。

【始業時刻から連続した看護休暇・介護休暇の取得する場合】
勤務時間が9:00~17:45(休憩1時間12:00~13:00)の企業の場合、始業開始時間から4時間の看護休暇・介護休暇を取得と途中で休憩時間に差し掛かってしまいます。労務提供義務のない休憩時間に、看護休暇・介護休暇を請求する余地はないため、休憩時間を除いた労働時間を考慮し、始業時間からの連続、そして終業時刻まで連続する時間単位での休暇が取得できます。上記の例の場合は、8:30~12:00と13:00~13:30を合計した4時間が看護休暇・介護休暇の扱いとなります。

【終業時間が近接した1時間に看護休暇・介護休暇を取得する場合】
勤務時間が9:00~17:45(休憩1時間12:00~13:00)の企業で、終業間際に1時間の看護休暇・介護休暇の取得の申し出があった場合は、当該1時間の区切りは17:00~18:00になるのか、16:45~17:45までの1時間になるのか判断に悩むところですが、「時間単位」とは「始業時刻から連続しまたは終業時刻まで連続する」ことなので、終業時刻の17:45から遡った1時間の16:45~17:45までと解釈されます。例えば、実際には17:00~17:45というように1時間に満たない時間を休んだとしても、当該労働者は1時間の休暇を取得したとして処理しても問題ないとされています。ただし、労働者が休んだ時間分の賃金を控除する場合には、実際に休んだ時間を超えての控除をしてはいけません。

 

●「中抜け」について
現行制度で、就業時間の途中から時間単位の看護休暇・介護休暇を取得し、就業時間中に再び戻る「中抜け」を認めている場合、改正後の「始業時刻から連続または終業時刻まで連続する時間単位」においては、中抜けを認めるか認めないかについても議論があります。

基本的に、改正後の「育児休業・介護休業育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」第40条第1項では「始業の時刻から連続し、または終業の時刻まで連続する時間単位での看護・介護休暇の取得を可能とすること」を求めているため「中抜け」を想定しない制度であっても許容されていますが、そのうえで事業主は、看護や悔悟を必要とする家族の状況や、労働者の勤務状況に柔軟に対応すべく「中抜け」による時間単位での取得を認めるなどの、制度の弾力的な利用が可能となるような配慮も求められています。「中抜け」は、法を上回る望ましい取扱いであるとされているため、改正後にわざわざ「中抜け」を想定しない制度に変更する必要はないとされています。

 

子の看護休暇・介護休暇の対象者は?

子の看護休暇・介護休暇を取得できる対象労働者についても、下記にまとめてみました。

●1日の所定労働者が4時間以下の労働者
現行法では半日単位で看護休暇・介護休暇が取得できないこととされている1日の所定労働時間が4時間以下の労働者でも、改正後では時間単位で取得することが可能です。ただし、それらの労働者について「業務の性質や実施体制に照らし1日未満の単位で休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者」として労使協定を締結している場合、事業主は時間単位での看護休暇・介護休暇の取得を拒否することができます。

ただし、このような労使協定はあくまで「「業務の性質や実施体制に照らし1日未満の単位で休暇を取得することが困難と認められる業務」に該当することが必要であり、一律に「1日の所定労働時間が4時間以下の者」と決めつけ時間単位の休暇の取得対象から除外する扱いは適当ではないとしています。

また「業務の性質や実施体制に照らし1日未満の単位で休暇を取得することが困難と認められる業務」でも労使で工夫してより多くの労働者が時間単位の看護休暇・介護休暇を取得できるようにすることが望ましいとされています。

●半日単位で看護休暇・介護休暇を取得することができない労働者を労使協定で定めている場合
業務の性質や実施体制に照らし「半日単位で看護休暇・介護休暇を取得することが困難」と認められる業務と、「時間単位で看護休暇・介護休暇を取得することが困難」と認められる業務の範囲が異なる可能性もあるため、改めて改正法に見合った労使協定を結ぶ必要があります。

●フレックスタイム制度の労働者の場合
コアタイムの無いフレックスタイム制度が通用されている労働者の場合、労働者自身で始業時刻や終業時刻を決めているため、自由な時間労総時間を設定しやすいと考えられがちですが、フレックスタイム制と看護休暇・介護休暇はそもそも趣旨が違うものであり、看護休暇・介護休暇は労働者の労務提供義務を消滅させる効果を担っているため、フレックスタイム制度であっても、看護休暇・介護休暇の申出があった場合は取得できるような配慮が必要となります。

 

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【参照情報】
厚⽣労働省 都道府県労働局雇⽤環境・均等部(室)
>>>子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります

HRメディア サプラボ – Sup Lab
>>>2021年令和3年1月1日施行|子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得とは【改正育児・介護休業法】

社会保険労務士法人プログレス
>>>2021年1月より時間単位で取得できるようになる子の看護休暇・介護休暇

法改部ログ
>>>介護休暇・子の看護休暇が時間単位で取得可能となる改正①