<子育てと介護に安心を 改正育児・介護休業法【1】> 現行育児・介護休業法のおさらいと改正育児・介護休業法のポイントについて

少子高齢化による労働力不足が懸念される中、これまで「仕事か育児か」「仕事か介護か」の壁で、社会に参加できなかった人たちでも安心して働ける制度として、制定されたのが「育児・介護休業法」です。国が推進している働き方改革の影響と育児・介護休業法による労働時間の柔軟な対応で、働き方の多様化も進んできてはいますが、まだまだ「労働時間」や「取得方法」などについて課題が多いのも現状です。個人の様々なケースに対応できるようにすべく、育児・介護休業法は短いスパンで何度か改正されていますが、令和3年1月1日より「子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得」が新たに設けられます。新たな改正で育児や介護を抱える労働者の働き方は変わるのでしょうか?現行の育児・介護休業法をおさらいしながら、改正育児・介護休業法のポイントについてご紹介します。

 

育児・介護休業法とは?

「育児・介護休業法」とは、正式名称を「育児休業・介護休業など育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といい、働く人たちが仕事と育児、あるいは仕事と介護を両立できるようにするための支援制度で2016年3月に制定され、翌2017年3月に改定が行われています。育児・介護休業法には以下のような支援制度が設けられています。

育児・介護休業法の支援制度
・所定外や時間外労働の制限
・深夜業務の制限
・短時間勤務制度
・産前産後休業
・育児休業
・子の看護休暇
・介護休業
・介護休暇
・転勤への配慮

罰則規定
育児・介護休業法は国から労働者へ与えられた権利であるため、労働者から申出があった場合、企業は労働者の申出に対応する義務が発生します。また、企業は、労働者が育児・介護休業法を利用する際に、労働者の不利益となる降格や解雇をしてはならないこととされています。この対応を怠ると、下記のような罰則規定が待っています。

・「企業名の公表」
育児・介護休業法の対応を怠った企業は、厚生労働大臣が法違反の是正についての勧告をした場合、その勧告に従わないと企業名を公表しなければなりません。

・20万円以下の罰金
育児・介護休業法においては、構成労働大臣及びその委任を受けた都道府県労働局長は同法の施行に関し、必要があると認めるときは、事業主に対して報告を求めることができるとされていますが、この報告の求めに対し、報告しない場合や、虚偽の報告をした場合は、20万円以下の罰金刑となります。

マタニティハラスメント防止のための5つの義務
さらに2017年1月には、マタニティハラスメントを防止するため、企業に5つの義務が課せられています。こちらも悪質な場合は、企業名の公表や厚生労働省による行政指導などが入ります。

(1)方針の明確化及び周知・啓発
(2)相談窓口の設置
(3)マタニティハラスメントが起こってしまった場合の迅速かつ適切な対応
(4)マタニティハラスメントの原因の解消
(5)当事者たちのプライバシー保護

 

育児・介護休業法が制定された背景について

育児・介護休業法が制定された背景には、やがて日本が直面する少子高齢化による労働力不足問題があります。これまでの日本社会では、育児をしながら、または、介護をしながらフルタイムで働く、ということは難しく、育児や介護に専念するために仕事を断念せざるを得ない人が少なくありません。特に、働く女性をとりまく環境は厳しく、仕事やキャリアのために出産を選択しない人が増えている現状が、日本の少子化に拍車をかけている一因でもあります。

また、高齢者が増加し続ける中、どの家庭にも当たり前のように介護問題が直面している時代となってきています。育児・介護休業法は、育児や介護を抱えた人でも、キャリアを維持し、活躍できる場を設け、雇用継続と雇用の安定化を図ることで労働力減少を抑止することを目的としています。この制度が浸透すれば、ブランクを気にせず育児や介護に専念することができ、企業は労働力を確保したままとなるため、やがて日本全体の労働力の向上。そして、国の強化へとつなげていくことができると期待されています。

 

改正育児・介護休業法による「子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得」を解説

2016年3月に施行された育児・介護休業法は、2017年に一度改正が実施されていますが、令和3年1月1日から「子看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになる」項目が新設されます。この項目は子どものケガや病気の看病や、介護中の看病などで、看護休暇や介護休暇を柔軟に取得できるようになることで、時間単位での取得が可能となります。改正のポイントは、以下の通りです。

【改正前】
・半日単位での看護休暇・介護休暇の取得が可能
・1日の所定時間労働が4時間以下の労働者は取得できない

【改正後】
・時間単位での取得が可能
・全ての労働者が取得できる

【ポイント】
・ここで言う「時間」とは1時間の整数倍の時間を指します。企業は労働者からの申し出に応じて、労働者の希望する時間数で取得できるようにしなければなりません。
・「中抜け」なしの時間単位休暇となりますが、法を上回る制度として「中抜け」ありの休暇取得を認めるような配慮を求めています。
・すでに「中抜け」ありの休暇制度を導入している場合はあえて「中抜け」なしの休暇とすることは不利益労働条件変更となるため注意が必要です。

【労使協定を締結する際の注意点】
子の看護休暇・介護休暇を時間単位で取得することが困難な業務がある場合、労使協定を締結することによって、時間単位の休暇制度の対象から、その業務に従事する労働者を除外することが可能となります。困難な業務の範囲決めは、労使で十分に話し合う必要があります。

【助成金について】
子の看護休暇・介護休暇では、時間単位で利用できる「有給の」子の看護休暇制度や介護休暇制度を導入し「休暇を取得した労働者が生じた」などの要件を満たした事業主に対し、「両立支援等助成金」が支給されることになっています。支給の要件や手続きなどは、厚生労働省のホームページに記載があります。

 

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子育て世帯、要介護者を抱える世帯がより働きやすいよう、短いスパンで法改正が実施されている育児・介護休業法。思いがけないところで、法に従っていなかった、などということがないように、セミナーでしっかりポイントを学んでおきましょう。Webセミナーなら、ポイントをわかりやすく、そして何度でも確認できるのでとても便利です!

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【参照情報】
厚⽣労働省 都道府県労働局雇⽤環境・均等部(室)
>>>子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります

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