<令和3年解禁!バーチャルオンリー型株主総会【1】> バーチャルオンリー型株主総会解禁の背景とwithコロナの株主総会

突然訪れた新型コロナウイルスのパンデミックで、多くの企業の社会経済活動が制限されたことは記憶に新しいことです。テレワークをはじめ、ハンコレスや書類の電子化に伴うDX化など、業務に関してのデジタル化は一気に加速しましたが、他人との接触を避けねばならないこのご時世に、「株主総会」の開催をどうしたら良いか、頭を抱えた企業も多かったのではないでしょうか?株主総会のオンライン化は、会社法第298条1項1号で定められている「株主総会の「場所」を定めなければならない」という事項により、事実上不可能とされてきました。そのため多くの企業が、通常の株主総会を実施するか、政府が提案した「ハブリッド型バーチャル株主総会」で開催かの選択を迫られました。しかし令和3年(2021年)、産業競争力強化法において、会社法の特例を設け「場所の定めのない株主総会」に関する制度が創設されたことにより、バーチャルオンリー型株主総会の開催が可能となりました。ここでは、バーチャルオンリー型株主総会が解禁となった背景や、withコロナの中での株主総会について解説してまいります。

 

「株主総会」開催の理由と役割

なぜ「バーチャルオンリー型株主総会」を開催するために会社法の方を変えないといけないのか、その背景を語る前に「株主総会」の意味と役割について見てみましょう。

●株主総会を開催する理由
そもそも「株主総会」はコロナ禍のような状況においてでも、開催しなければいけないものなのでしょうか?会社法296条1項によると「株式会社は、毎事業年度の終了後、一定の時期に定期株主総会を行い株主を招集する」ことが義務付けられています。法律で義務付けられていることなので、コロナ禍のような状況であっても、開催しないという選択肢が存在しないのです。

●株主総会の役割
株式会社において株主は、企業から経済的な利益を受けることができる「自益権」と、企業の重要な意思決定に参加できる「共益権」の2つの権利を持ちます。株主総会は、株主が「議決権の行使」という共益権を使用できる場所であり、以下のような事項を取り決めます。

1.会社の根幹に関わる事項
2.会社の役員に関する事項
3.株主の利害に大きく関わる事項

取締+役、監査役、株主が一堂に会した場所においてこのような取り決めが行われる株主総会は、経営陣にとっても株主にとっても、非常に重要な役割を持ちます。

 

withコロナで迫られた「バーチャル株主総会」という選択肢

withコロナになってから、株主総会はどのように開催されたのでしょうか?法整備間に、政府が推奨した「ハブリッド型バーチャル株主総会」についても触れてみます。

●コロナ禍がきっかけで注目された「バーチャル株主総会」
株主総会をオンラインで実施する「バーチャル株主総会」という方法は、コロナ禍以前よりアメリカなどで実施されていました。日本でも、ハイブリッド型のバーチャル株主総会を取り入れようとする企業はありましたが、まだ関心は低く、バーチャル株主総会が注目され始めたのは、コロナ禍になってからと言われています。会社法296条にて株主総会は開催しないといけない、しかも、会社法298条1項1号では「株主総会を招集する場合には、株主総会の「場所」をさだめなければならない」と決められている中で、「一堂に会する目的」で集まる株主総会は、いわゆる3密(密閉空間・密集場所・密接場所)条件が重なった非常にリスキーな空間です。

とはいえ、テレワークへの移行とは違い、バーチャルオンリー型の株主総会を実施するには、法整備も技術も追いついていないのが現状でした。そこで政府は、通常の株主総会の他に、「ハブリッド型バーチャル株主総会」の開催を提案し、ガイドブックも用意して導入を推奨しました。

●「ハブリッド型バーチャル株主総会」とは?
「ハブリッド型バーチャル株主総会」とは、リアルで実施する通常の株主総会と同様に、物理的な会場を設けた上で、インターネットを介した通信手段を用いて、遠隔地にいる人も含めた株主総会を実施することです。ハブリッド型バーチャル株主総会には、会社法上の質問や動議を行うことができる「出席型」と、確認と傍聴だけができる「参加型」2つの参加方法があり、どちらで参加するかは事前の案内によって取り決めます。2020年6月に開催された、上場企業の株主総会では、2344社の上場企業のうち、ハイブリッド出席型の株主総会参加企業は9社、ハブリッド参加型の企業は株主限定54社、一般公開59社というデータがあります。バーチャル株主総会が浸透しているとは言い難いですが、コロナ前の2019年度で見ると、出席型は0社、参加型は5社という数字からすると、確実にバーチャル株主総会を取り入れた企業は増えています。

 

バーチャルオンリー型株主総会解禁の背景

そして令和3年(2021年)、ついにバーチャルオンリー型株主総会が解禁されました。産業競争力強化において会社法の特例として「場所の定めのない株主総会」に関する制度を創設することで、バーチャルオンリー型株主総会開催のネックであったの「場所」の問題を解消したのです。兼ねてより、株主総会の会場や人員確保、遠距離参加者の交通費問題など、株主総会のオンライン化を後押しする要素はありましたが、決定打とはなりませんでした。

今回のような、新型コロナウイルスのパンデミックがきっかけで、オンライン化の必然性に迫られたうえ、通信技術の向上、企業側のオンラインに対する意識の向上など、バーチャルオンリーの株主総会を開催しても問題ない環境を整えやすくなった、という点が、バーチャルオンリー型株主総会解禁へとつながったと考えられます。コロナ禍のような状況下において、物理的な株主総会の開催・出席な困難な場合でも、株主総会を実施できるように法整備したことで、今後さらにバーチャルオンリー型株主総会を導入する企業が増えていくことでしょう。

 

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【参照情報】
法務省
>>>バーチャルオンリー型の株主総会を開催することができるようになりました

経済産業省 経済産業政策局 産業組織
>>>産業競争力強化法に基づく場所の定めのない株主総会 制度説明資料

ContractS
>>>バーチャル株主総会とは?形式や開催方法を解説。

テレワークナビ
>>>注目されるバーチャル株主総会とは?背景や注意点を解説

ビジドラ
>>>株主総会の目的や議決方法とは?開催準備に必要なものも解説します