働き方改革を導入するために企業が取り組むことは何か?

働き方改革といってもたくさんの項目があり、会社によっては直面している問題が違います。働き方改革を導入するために、企業が最初に取り組むのはどのようなことでしょうか?大企業と中小企業の違い、導入の進め方、罰則規定などについてまとめてみました。

 

「働き方改革」大企業と中小企業の違い

2019年4月から施行される「働き方改革」は、まず以下の7つの項目からスタートします。

1)残業時間「罰則付き上限規制」
2)5日間有給休暇取得の義務化
3)勤務時間のインターバル制度
4)産業医の機能を強化
5)特定高度専門・成果型労働制の創設
6)3か月のフレックスタイム制
7)同一労働同一賃金の適用

これらの項目は大企業と中小企業で導入時などに違いがあります。

・大企業での導入時期と注意点
大企業は、2019年4月から1)~6)までの項目を実施し、2020年に7)の「同一労働同一賃金の適用」がスタートとなります。働き方改革施行スタート直後から、ほとんどの項目を適用しないといけないので、対応に追われている企業も多いでしょう。注意しなければいけない点は、働き方改革には罰則規定が設けられていることです。対応が後手に回り、罰則規定に引っかからないように注意が必要です。

・中小企業での導入時期と注意点
中小企業の場合は上記7項目中、猶予期間が設けられている項目があります。

罰則付き残業時間上限規制 → 2020年4月から
産業医の機能強化 → 2021年4月から
割増賃金率の中小企業猶予措置廃止 → 2023年4月から

中小企業は猶予期間がある分、しっかりとした対策が求められています。猶予というよりも、準備期間と捉え、専門家の意見やセミナーなどを受講しながら、働き方改革に備えましょう。

 

「働き方改革」を導入するには何をするか?

働き方改革を導入するにあたり、企業は何から始めたら良いでしょうか?
具体的な対策をご紹介します。

1)自分の会社の現状を把握する
まずは、自分たちの会社の労働時間、残業時間、有給休暇取得状況、パワハラの有無などの現状把握がポイントです。働き方改革にはいろいろな項目がありますが、会社が直面している問題に沿った項目が最優先となります。職場満足度調査や、ストレスチェックの集団分析結果などを参考にして、会社の現状を洗い出しましょう。

2)現状を分析し「やるべきこと」を可視化する
自分の会社の「働き方」が把握できたら「問題点」と「やるべきこと」を可視化し、実行計画を立てます。上層部だけで決めるのではなく、グループ、課単位、部単位でミーティングを重ね、ボトムアップすることで、結果的に全体の意識統一が図れます。

3)罰則規定のある働き方改革を優先する
働き方改革には、罰則規定があります。大企業の場合は、2019年4月より中小企業よりも多くの項目を実施しないといけません。その中でも「時間外労働の上限規制」「年次有給休暇の取得義務化」「フレックスタイム制の清算期間の延長上限」「医師の面接指導」には罰則規定が適用されますので、これらの項目から優先して実行する企業も多いようです。

 

「働き方改革」の罰則規定とは?

では、働き方改革の罰則規定についても触れてみましょう。政府は、今回の働き方改革を制定するにあたり、企業側にしっかりとルールを守ってもらうべく、罰則規定を設けました。罰則は、刑事罰で罰金刑か懲役刑が科せられます。

1)時間外労働の上限規制
働き方改革では、残業時間を無制限に生み出してしまう「36協定の上限規制を超える特別条項」に制限を加えました。原則として「月45時間年間360時間」とし、特別条項の場合1か月のうち6か月を超えない範囲とすること。年間時間外労働時間が月平均60時間(年720時間)とすること。休日労働に関しても、休日労働を含め、月平均時間外労働が80時間を超えないこと。一か月の時間外労働を100時間未満とすること。などです。これに違反すると、残業をさせた企業は労働基準法違反として、「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」が科せられます。

2)年次有給休暇の取得義務化
有給休暇の消化率が低調傾向にあるため、企業は年間10日以上有給休暇を付与されている労働者に、年間最低5日の有給休暇を取得させなければなりません。労働者に有給休暇を取得させない場合は、「30万円以下の罰金」が科せられます。

3)フレックスタイム制の清算期間の上限延長
一定の清算期間の間、1日の労働時間について始業・終業時刻を定めず、残業時間も清算期間を通じて計算をするフレックスタイム制は、これまで一か月単位の清算とされていました。働き方改革では清算期間の上限が3か月伸長し、清算期間を設定する場合には、労使協定を締結して届け出をする義務ができました。これを違反すると「30万円以下の罰金」が科せられます。

4)医師の面接指導
高度プロフェッショナル制度の導入に伴い、制度の対象者が長時間労働で心身を害さないようにするため、医師による面接の義務化が導入されました。「新たな技術商品又は薬務の研究開発に係る業務につく労働者」「特定高度専門業務・成果型労働制対象労働者」などに医師の指導を受けさせなかった場合は、違反した場合「50万円以下の罰金」が科せられます

 

厚生労働省の「働き方改革ガイドライン」とは?

働き方改革の対策をするにも、自分の企業に何が必要か見えてこないという場合は、厚生労働省のサイトにある「働き方ガイドライン」を、参考にすることをおすすめします。ガイドラインには、働き方改革で実施できる全19の対応策が記載されており、それぞれどのような目標で、どんな対応策で実行したらよいのかをロードマップ化しているので、「企業がすべきこと」が見えてきます。また、罰則規定にも触れているので、優先度も把握しやすくなっています。10年先を見据えた提案もされているので、働き方改革を導入したその先も考慮にいれて、導入の参考とすることをおすすめします。

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※サイトにアクセスしたら、「働き方」でフリーワード検索してください。

 

【参照情報】
労務SEARCH
「2019年4月からかわる「働き方改革】企業が進めるべき内容は?」
Canon Business Trends
「イチから学べる「働き方改革」~改革の意味とその具体的な進め方とは?~」
INSIGHTS SHARE
「働き方改革ガイドライン解説」
Bizuben
「罰則規定について」