働き方改革 テレワーク導入時の就業規則について

時間や場所にとらわれない働き方の一つである「テレワーク」。就労人口増加や地域貢献に繋がるなどのメリットがあるため、「働き方改革」をきっかけにテレワーク導入に踏み切る企業が増えてきています。それでは、テレワークを導入時、就業規則や社内のルール作りなどは、どのように実施したらよいでしょうか?テレワーク向けの勤務規程、就業規則改訂のポイントなどを見てみましょう。

 

テレワーク導入には就業規則が必要

テレワーク勤務導入にあたり、テレワークで働く労働者(以下、テレワーカー)の就業規則について考えなければなりません。例えばテレワーカーが、他の労働者と同じ労働時間や労働条件であれば、就業規則を変更せずにテレワーク勤務に従事させる事は可能です。しかし、いざ導入をした後に、通信費用の負担や、文具、備品費用の負担に関する問題、社内コミュニケーションに関わる問題、社員の評価方法など、オフィス勤務での通常勤務では想定しなかった問題が浮上しがちです。

また、実際の労働時間や労働環境についても、オフィスワーカーとテレワーカーの間に、不公平感が生まれる懸念もあります。テレワーク導入後になってから、就業規則の見直しを余儀なくされてしまわないよう、テレワークのための具体的な運用ルールを記した「テレワーク勤務規程」を、就業規則に盛り込む必要があります。

 

テレワーク導入時の就業規則改定のポイントについて

実際にテレワークを導入する際、就業規則はどのように改定したら良いのでしょうか?

(1)テレワーク対象者の選定
テレワーク勤務となる従業員の対象は、以下ようにカテゴライズできます。

・全従業員
・特定の業務担当者
・心身的に通勤の難しい従業員
・特定の家庭の事情がある従業員

各テレワーカーには、自律的な業務の実施や業務の遂行が求められます。希望者や対象者を絞り込むと同時に、アンケートや面談などを実施して、テレワークに向いているかの適性を見極めることも重要です。

(2)テレワークにかかる費用負担
テレワークには、以下のような費用が掛かります。これらの費用を、どのように負担するのかを明確にしておく必要があります。

・パソコン本体や周辺機器、スマートフォン、タブレットなどの情報通信機器の費用
・通信回線費用の工事費や基本料金、使用料金の費用
・会社に出勤する際の交通費
・文具・備品などの費用は誰が負担するのか。支給品にするか、購入するのか。その清算方法など
・業務中に使用した水道光熱費
・自宅の作業環境づくりに使う費用の負担や産業医指導の負担など、安全衛生・健康管理のための費用負担

(3)社内外コミュニケーション方法
オフィスから離れ、テレワーカーとして業務をこなしていても、上司への進捗報告や、同じプロジェクトチームや同僚などに専門技術の相談や、顧客の動向、他部署との連携などについて情報共有などをする必要があります。テレワーカーが抱える不満や問題点などについての共有不足になり、「社内」という枠から「社外」で働くテレワーカーが孤立してしまうのではないか、という懸念もあります。そのような事態を防ぐためにも、社内外のコミュニケーションをテレワーク導入前と変わらないレベルで、円滑に運ぶよう努力することも大切です。

(4)労働時間
テレワーカーの労働時間は、「事業場外労働者の労働時間」として取扱います。例えば、始業時間、終業時間の連絡方法、フレックスタイム制を適用するか、在宅勤務時のみなし労働時間制を適用するかなど、しっかり話合い、ルール作りをする必要があります。

(5)給与・手当
給与は、テレワーカーでも原則変えないことが前提です。とはいえ、オフィスワーカーと同じ人事評価制度が通用しなくなるので、人事評価制度の新設、改定、もしくは賃金規程を新たに追加するなどの方法があります。

(6)安全衛生
在宅勤務でテレワークをする場合は、自宅の作業環境が、安全衛生法上での作業環境であることが義務付けられます。一定の基準値を定める場合は、就業規則にその内容を追加します。また、健康管理について、テレワーカーの自己管理にゆだねることが多くなる為、一般の健康診断とは別に、産業医による健康診断などを義務付けるなどを就業規則に追加します。

(7)服務規律(セキュリティ)
テレワーク導入の懸念材料の一つとして、情報管理方法があります。本来の資料持ち帰りルールなど、情報漏洩防止のための対策を見直す必要も出てきます。その場合は、就業規則に新たにテレワーク用の勤務規程等を作成します。

(8)労働災害
どのような形態でも、テレワーカーが労働者である以上は、オフィスワーカー同様に労災保険法の適用を受けられます。ただし労災と認められるには以下の2点をクリアしなければなりません。

●業務遂行性
業務遂行性とは、「労働者が労働契約に基づいて事業主支配下にある状態」のことで、あくまで「業務中」であると条件づけられており、私的行為中と認められた場合は労災扱いとなりません。

●業務起因性
業務起因性とは、「業務又は業務行為を含めて、労働者が労働契約に基づいて事業主配下にある状態に伴って、危険が現実化したものと経験則上認められること」と言います。天災や災害などが発生した場合のケースを指していますが、テレワーカーは不測の事態にも対応できるよう、危機意識も高めておく必要があります。

 

テレワーカーへの人事評価制度について

テレワーカーの場合、会社が働きぶりを見て判断する「人事評価重視」の評価システムが通用しません。会社の目のとどかないところで仕事をするテレワーカーの場合は、その働きぶりを「仕事や業績」を評価する「成果主義重視」で人事評価をする「目標管理制度」を導入している企業が一般的です。

目標管理制度の場合、成果が数値化できる業務には適していますが、企画や開発などの達成度の数値化が難しい業務では形骸化しやすいという側面もあります。このため、目標の設定が短期的になりがちで、長期的なプロジェクト志向がなくなる懸念があります。このような問題に直面しないように、評価者であるマネージャーとテレワーカーの間で時間をかけて面談をし、常に適正な評価ができるような仕組みと、評価する側のマネージャーにもそれなりのスキルが求められることとなります。

実際に評価する際は、テレワーカーが不利な評価をされることがないよう、業務の内容と成果についてのテレワーカーと評価者の間で共通の理解を持てるような報告の方法などを話し合っておくことがポイントです。

 

テレワーク導入への社内ルール作成手順

実際にテレワークを社内に導入する為の、社内ルール作成手順を下記にまとめました。

(1)導入するテレワークの形態を検討する
(例:在宅勤務/サテライトオフィス勤務/モバイル勤務)

(2)テレワーク勤務規程などの作成、または就業規則の変更案を作成する

(3)全社員へテレワークを説明し要望を集約する

(4)テレワーク導入に向けて問題点を洗い出し改善する

(5)就業規則の改正が必要な場合は、労働者代表の意見聴取をし意見書をまとめる

(6)改定した就業規則を全社員へ周知する

(7)諸葛労働基準監督署長へ書面を提出する

(8)テレワーク対象者へ労働条件を明示する

(9)テレワークを実施

テレワークを導入するには、既存の就業規則のままで対応可能かどうかを検証し、改定、導入する場合には、全社員へ社内ルールの改訂の流れなどを説明して、十分な理解を得てから導入に踏み切ることが重要です。

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