<医師の働き方改革と診療報酬改定2020【2】> 救急医療体制等の評価や医師などの長時間労働改善の取組みについて

「医師の働き方改革」を重点課題と位置付けた2020年度の診療報酬改定。2024年4月からは勤務医の「時間外労働上限規制」が適用され、これを遵守しない医療機関には罰則が課せられることとなりました。2020年度の診療報酬改定では、まず医師を中心とした医療従事者の勤務環境を整備するために、医療従事者の人件費などの見直しや、時間短縮への緊急的な取組の評価などを取り入れ、勤務医の長時間労働の解消を目指すこととしています。2020年度の診療報酬改定で、医師の長時間労働どのように改善されるのでしょうか?地域医療を持続させるための救急医療体制の評価や、医師等の勤務環境の改善策などについて見てみましょう。

 

新たに新設された「地域医療体制確保加算」と「救急搬送看護体制加算評価区分」とは?

【地域医療体制確保加算】
現在、地域医療の現場は、過酷な労働環境となっています。地域医療を確保するため「地域の救急医療体制において一定の実績を有する医療機関」について、「適切な労務管理などを実施する」という前提のもとで「入院医療の提供に係る評価」として新設されたのが「地域医療体制確保加算」です。地域医療体制確保加算では、入院初日に限り520点の加算となります。

[算定要件]
救急医療を提供する体制、病院勤務医の負担の軽減及び処遇の改善に対する体制、その他の事項につき、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして、地方厚生局長などに届け出た保険医療機関に入院している患者について、当該基準に係る区分に従い、入院初日に限り所定点数に加算する。
(※第1節の入院基本料(特別入院基本料等を除く。)第3節の特定入院料のうち、地域医療体制確保加算を算定できるものを現に算定している患者に限ります)

[施設基準]
●救急医に係る実績
・ドクターカーやドクターヘリによる搬送件数が年間で2,000件以上であること
(※診療報酬の対象とならないB水準相当の医療機関を対象とし、地域医療介護総合確保基金において「地域医療に特別な役割があり、かつ過酷な勤務環境となっている医療機関について」は医師の労働に時間短縮のための体制整備に関する支援を行う、とされています)

●病院勤務医の負担の軽減及び処遇の改善に資する体制
・病院勤務医の勤務状況の把握とその改善の必要性について提言するための責任者の配置
・病院勤務医の勤務時間及び当直を含めた夜間勤務状況の把握
・多職種からなる役割分担推進のための委員会又は会議の設置

「病院勤務医の負担軽減及び処遇の改元に資する計画」の作成、定期的な評価及び見直しと公開(当該保険医療機関内に提示する等)
当該の計画にあたっては、以下の項目を踏まえて検討し、必要な事項を記載することと決められています。

ア 医師と医療関係職種、医療関係職種と事務職員等における役割分担の具体的内容
イ 勤務計画上、連続当直を行わない勤務体制の実施
ウ 勤務間インターバルの確保
エ 予定手術前日の当直や夜勤に対する配慮
オ 当直翌日の業務内容に対する配慮
カ 交代勤務制・複数主治医制の実施
キ 短時間正規雇用医師の活用

【救急搬送看護体制加算の評価区分】
「救急搬送看護体制加算」とは、救急医療体制の充実を図る観点から、救急搬送の看護体制加算について、救急外来への搬送件数と看護師配置の実績に応じた新たな評価区分のことです。現行と改定後では、以下のように変わります。

[現行(夜間休日救急搬送医学管理課の加算)]
救急搬送看護体制加算 200点

[施設基準]
①ドクターカー又はドクターヘリによる搬送件数が年間200件以上
②救急患者の受入れ時に対応できる専任の看護師を配置

[改定後(夜間休日救急搬送医学管理課の加算)]
・救急搬送看護体制加算1  400点

[施設基準]
①ドクターカー又はドクターヘリによる搬送件数が年間で1,000件以上
②救急患者の受入れ時に対応できる専任の看護師を複数名配置

●救急搬送看護体制加算2  200点
①ドクターカー又はドクターヘリによる搬送件数が年間200件以上
②救急患者の受入れ時に対応できる専任の看護師を配置

 

医療従事者の勤務環境はどう改善されるか?

2020年度の診療報酬改定では、医師等の医療従事者の柔軟な働き方に対応する観点から、常勤配置にかかる要件及び専従要件も見直されています。

●医師などの従事者の常勤配置及び専従要件に関する要件の緩和について

(1)常勤換算の見直し
「週3日以上かつ週24時間以上の勤務を行っている複数の非常勤職員を組み合わせた常勤換算でも配置可能としている」項目について「週3日以上かつ週22時間以上の勤務を行っている複数の非常勤職員を組み合わせた常勤換算」での配置を可能とする目標となっています。

(2)医師の配置について
医師については、以下の対象項目に関して、「複数の非常勤職員を組み合わせた常勤換算でも配置可能とする項目を拡大する」としています。
・緩和ケア診療加算
・栄養サポートチーム加算
・感染防止対策加算  等

(3)看護師の配置について
看護師については、「外債化学療法加算について、非常勤職員でも配置可能とする」とされていました。

(4)専従要件について
専従要件については、以下の対象項目に関して「専従を求められる業務を実施していない勤務時間において他の業務に従事できる項目を拡大する」としています。
・ウイルス疾患指導料
・障害児(者)リハビリテーション料
・がん患者リハビリテーション料

●「医療従事者の負担軽減及び処遇改善に関する計画」の内容及び項目の見直しによる「総合入院体制加算」の改定
さらに、医療従事者の勤務環境改善に関する取組みが推進されるように、総合入院体制加算の要件にもなっている「医療従事者の負担軽減及び処遇改善に関する計画」も、その内容と項目数が見直されることとなっています。改正後の総合入院体制加算は、以下の通りです。

【総合入院体制加算】
[施設基準]
病院の医療従事者の負担軽減及び処遇の改善に資する体制として、次の体制を整備していること

●「医療従事者の負担の軽減及び処遇の改善に資する計画」には次に掲げる項目のうち少なくとも3項目以上を含んでいることが条件
・外来診察時間の短縮、地域の他の保険医療機関との連携などの外来縮小の取組(許可病床数400床以上の病院は必ず含むこと)
・院内保育所の設置(夜間帯の保育や病児保育を含むことが望ましい)
・医師事業作業補助者の配置による医師の事務作業の負担軽減
・医師の時間外・休日・深夜の対応の負担軽減及び処遇改善
・特定行為研修者である看護師の複数名配置及び活用による医師の負担軽減
・院内助産又は助産師外来の解説による医師の負担軽減
・看護補助者の配置による看護職員の負担軽減

 

医療機関における業務効率化・合理化について

今回の改定では、医療機関における業務の効率化・合理化についての促進も盛り込まれています。

(1)会議や研修の効率化・合理
安全管理の責任者などで構成される会議等は、必ずしも対面でなくてよいと判断した場合、ICTを活用するなどをして対面に頼らない会議の仕方を推奨しています。院内研修においては、院内感染対策に係る研修と併せて「抗菌薬適正使用支援加算に係る院内研修」を実施して良いという方向性となりました。また、急性期看護補助体制加算等の看護補助者に係る院内研修の要件を見直すとしています。院外研修に関しては、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の院内研修の指導者に係る要件を見直します。

(2)記録の効率化・合理化
記録については、栄養サポートチーム加算等について「栄養治療実施計画の写しを診療録に添付すれば良い」と定め、診療録への記載を算定に当たっての留意事項として求めないことにしました。また、在宅療養指導課等について、医師が他の職種へ指示内容を診療録に記載することを、算定にあたっての留意事項として求めないことになっています。レセプト摘要欄においては、「画像診断の撮影部位や算定日等について選択式記載とする」としています。

(3)事務の効率化・合理化
事務の効率化・合理化を目指すために、施設基準の届け出について「様式の簡素化や添付資料の低減等を行う」とし「文書による患者の同意」を要件としているものについては、電磁的記録によるものでも良いことを明確化しました。

 

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【参照情報】
厚生労働省保険局医療課
>>>令和2年度診療報酬改定の概要