<コロナ禍を乗り切る!企業のための新型コロナウイルス対策【5】> 開催?中止?新型コロナウイルス感染症拡大下での株主総会開催について>
新型コロナウイルスの影響は日本の経済活動を停滞させていますが、未だ終息の見込みはたたず、長期化を覚悟せざるを得ない状況となっています。そんな中、多くの企業が頭を悩ませているのが「株主総会の開催の有無」についてです。会社法296条第1項によると、株主総会は「事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」ものとされており、多くの日本企業では3月の決算が終ってから3か月後の6月に株主総会を開催することが主流でした。本来であれば、株主総会の準備に入らないといけないところ、新型コロナウイルスの影響により企業活動そのものが難しく、準備すらままならないほか、開催の有無すらわからないというのが現状で、経済産業省にはこのような企業から株主総会に関しての問合せが多く寄せられています。新型コロナウイルスの感染拡大の中、株主総会は開催しなければならないのでしょうか?株主総会の開催有無について、オンラインやバーチャル株主総会への振替などについてまとめました。
新型コロナウイルスの影響で株主総会は「中止」にできるのか?
株主総会の開催は「会社法」という法律によって定められていますが、国難とも言われる新型コロナウイルスの影響下において、株主総会を「中止」とすることはできるのでしょうか?答えは「現行法の下では中止という判断はできない」ということになります。株主総会は会社法296条1項にて「義務」として定められていることなので、この現行法が変わらない限り「中止」はできません。また会社法319条、320条では、「会社法上書面決議」という株主総会を簡素化できる制度が設けられていますが、これは上場会社において利用することは想定されていないシステムですので、今回の新型コロナウイルス関連の対策として活用することはできません。
新型コロナウイルスの影響で株主総会を延期する場合
原則、株主総会を「中止」にできず、現状で開催できないのなら「延期」という選択肢となります。株主総会を「延期」することは、可能なのでしょうか?
●株主総会は延期できるのか?
結論から言うと、株主総会の開催時期を延期することは可能です。株主総会は「基準日」から3か月以内に開催するよう、会社法124条2項にて定められており、多くの企業では、決算日を株主総会の基準日をと定めています。法務省が公表した新型コロナウイルスに関連した「定時株主総会の開催について」によると、「定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じたときまで、その時期に提示株主総会を開催することを要求する趣旨はなく、その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りる」と記されています。つまり、「その状況が解消された後」=新型コロナウイルスが終息した後の「合理的な期間内」に、定時株主総会を開催すれば良いという解釈ができるので「延期」は可能です。開催時期をずらす場合は、定時株主総会の開催時期が具体的になったタイミングで、議決権行使や剰余金配当のために新たに基準日を定めて、株主に公告する必要があると、会社法124条3項にて定められています。
●株主総会は「可能であれば予定していた時期に開催することが望ましい」理由について
株主総会の延期は可能ではありますが、2020年4月2日に経済産業省・法務省から公表されている「株主総会運営Q&A」によると、「どちらかというと「延期」よりも「予定していた時期に開催」することが望ましい」とされています。その理由として、株主は、取締役の再任・解任、剰余金の配当を期待して、基準日を想定して株式を保有しているので、延期となるなら、まず株主への配慮が必要となります。また、株主総会の場での重要な決議がある場合は、延期することにより重要決議ができない状況となるため、一口に延期といっても検討事項や、配慮するべきことなど、課題は山積みです。また、新たな基準日公告をするにしても、会場の確保や招集手続きの対応などの事務仕事に負荷がかかります。
以上な点から、日本の情勢や各企業の状況などにもよりますが、可能であるならば、延期することなく予定通りの時期で株主総会を開催することが望ましいとされています。
新型コロナウイスル対策としてオンラインやバーチャル株主総会は開催できるか?
当初の予定通り開催するにしても、会場となる会議場やホテルが使用できない事態や、株主の感染リスクを考えて、開催に踏み切れない企業も多く存在します。新型コロナウイルス対策として、オンラインやバーチャル株主総会など、会場に集まらなくても、ICTを活用しての株主総会は可能なのでしょうか。
●バーチャル株主総会は開催できるのか
会社法298条1項1号によると、株主総会は「場所」を特定する必要があるため、実際に開催する場所がないバーチャル空間のみでの株主総会は、開催が認められていません。その代わりに経済産業省では、バーチャル株主総会とリアル株主総会を合わせた「ハイブリット型バーチャル株主総会」を推奨しています。
●ハイブリッド「参加型」バーチャル株主総会とは?
ハイブリッド「参加型」株主総会とは、一つの会場で、取締役や株主が一堂に会する物理的な場所で開催される「リアル株主総会」と、リアル株主総会の開催場所に存在しない株主が、株主総会への法律上の「出席」を伴わずにインターネット等の手段を用いて、審議等を確認・傍聴することができる株主総会を指します。ハイブリッド「参加型」バーチャル株主総会において、リアル株主総会の会場に出席していない株主は、会社法314条の株主が認められている質問や、会社法304条等で定められている動議を行うことができないというリスクがあります。
●ハイブリッド「出席型」バーチャル株主総会とは?
ハイブリッド「出席型」バーチャル株主総会とは、リアル株主総会の快哉に加え、リアル株主総会の開催場所に存在しない株主が、インターネット等の手段を用いて株主総会に会社法上「出席」をすることができる株主総会を指します。先に説明をした「参加型」のバーチャル株主総会とは異なり、リアル株式総会に「出席」している形となっているため、会社法314条の株主が認められている質問や、会社法304条等で定められている動議を行うことができます。
●テレビ電話でのオンライン出席は適法に当たるか?
バーチャルではなく、テレビ会議システムや電話会議システムなど情報伝達の双方向性及び即時性が確保される方式が取れるのであれば、株主総会に取締役などをオンライン出席させることは可能です。会社法施行規則72条3項1号には、「取締役が株主総会の快哉場所に存在しない形で出席することがあり得る」ことを前提にした基地となっており、実際にこの方法を採用して2020年の株主総会を実施した企業も何社か存在しています。
緊急事態宣言下での株主総会の開催について
2020年4月7日より5月6日まで、新型インフルエンザ対策措置法に基づき、全国に緊急事態宣言が発令されています。緊急事態宣言の中には、株主総会の開催有無までは取り決められておらず、現行法どおりとなると、株主総会を開催する必要に迫られます。しかし、緊急事態宣言では、3密を避け、人との接触を8割減らすことを目標に掲げており、企業に対しても7割の出勤減を要請している状況下で、多くの人を一か所に集めて株主総会を実施することは、新型コロナウイルス感染拡大予防の観点から見ても非常にリスキーであると考えられます。これから先、株主総会の開催を控えた企業のために、経済産業省と法務省では2020年4月2日に公表している「株主総会運営に係るQ&A」を参考にして、ハイブリッドバーチャル株主総会などの導入などを検討するなど、開催にむけての慎重な議論が必要となります。
新型コロナウイルス感染症拡大下での株主総会開催のヒントはWebセミナーで!
日本全体がこれまで体験したことのない事態に対し、一体どんな対策をしていいか、出口のないトンネルの中にいるようです。どんな対策を講じるべきか、どの施策をとれば会社を守れるのか、新型コロナウイルスに翻弄されている日々の中、役に立つのは「学び」です。Webセミナーでは、新型コロナウイルスに立ち向かうためのカリキュラムを用意しています。この機会に是非ともご利用ください!
【最新WEBセミナー情報】
新型コロナウィルス対策 株主総会・取締役会の運営の留意点
>>>こちらから
続・新型コロナウイルス感染症対策として 労務の現場で何ができるのか?
>>>こちらから
緊急事態宣言を受けて- 新型コロナウイルス感染症と企業活動に関わる法的諸問題
>>>こちらから
【新型コロナ対策】BCPセミナー入門編・対策編【COVID-19】
>>>こちらから
新型コロナウイルス感染症対策として 労務の現場で何ができるのか?
>>>こちらから
2020年の株主総会と実務課題の検討
>>>こちらから
「医療機関の労務管理」 ~医療業界に迫る「働き方改革」、院内感染・パワハラ新法等の最新対策~
>>>こちらから
【緊急セミナー】企業の新型コロナウイルス対策
>>>こちらから
>>>最新のビジネスセミナーを探すなら『ビジネスクラス・セミナー』
※サイトにアクセスしたら、「新型コロナウィルス」などでフリーワード検索してください。
>>>WEBセミナーで受講したい方なら『Deliveru(デリバル)』
※サイトにアクセスしたら、「新型コロナウィルス」などでフリーワード検索してください。
【参照情報】
2020年4月2日/経済産業省・法務省
>>>株主総会運営に係るQ&A
ZeLo
>>>新型コロナウイルスに関する企業法務の実務(株主総会編)
2020年2月26日/経済産業省
>>>ハイブリット型バーチャル株主総会実施ガイド
経済産業省
>>>株主総会(オンラインでの開催等)、企業決算・監査等の対応