<コロナ禍を乗り切る!企業のための新型コロナウイルス対策【1】> 新型コロナから従業員を守る「安全配慮義務」とは?

世界中で今なお感染が拡大している新型コロナウイルスの猛威は、日本も例外はなく、政府より緊急事態宣言が発令されるなど、かつてない状況を生み出しています。そんな新型コロナウイルス感染症は、2020年2月1日に日本政府より、「感染症法」による「指定感染症」と検疫法の「検疫感染症」に指定されました。企業は、従業員を守るため「安全配慮義務」の観点から、厚生労働省が定めている新型コロナウイルス感染症に対する対策に準拠した対応を、実施することになります。自社の従業員や家族に感染者が発生したらどうするか、休業するべきか、事業継続はどうなるか、世間へ公表するタイミングは、など、企業は危機対応について、その都度厳しい選択に迫られることとなるでしょう。「安全配慮義務」において、企業は具体的にどのような方法で、従業員を守るのでしょうか?会社内で新型コロナウイルス感染者が発生した場合の対処や、公表の有無などについても解説致します。

 

新型コロナウイルス感染症における企業の危機対応について

(1)企業が従業員に負う「安全配慮義務」とは?
企業は、労働契約法第5条にて「従業員の生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする」という旨の「安全配慮義務」を負っています。したがって、企業は感染予防の観点から、指定感染症である新型コロナウイルスから従業員を守るための、必要な措置をとらなければなりません。さらに、労働安全衛生法68条では「事業者は伝染病の疾病、その他の疾病で厚生労働省が定めるものにかかった労働者については、厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない」と定められており、それ準じた対応も求められます。

(2)感染症法による「指定感染症が発生した場合の対処法」
新型コロナウイルスのような「指定感染症」が発生した場合、政府や地方自治体、医師等は「感染症法」の定めに従って対処します。感染症法によって、行政が執り行う措置や選択肢、ガイドラインなどは、企業の感染症対応を検討する上で指標となるため、企業は刻一刻と変わる情勢を踏まえ、政府や行政の動きに注視しておく必要があります。

(3)感染症法における指定感染症が発生した場合の措置の流れ
感染症法では、感染者が確認された際の基本的な対応として、以下の措置を掲げています。

a.公表(感染症法第16条)
b.健康診断(感染症法17条)
c.就業制限(感染症法18条)
d.消毒(感染症法第27条)
e.建物に係る措置(封鎖等)(感染症法第32条)
f.調査(感染症法第35条)

例えば、実際に感染者が発生した場合は、上記の措置を踏まえた上で以下のような対応手順が取られます。

【感染者発生】
  ↓
感染者の感染経路、濃厚接触者の範囲を速やかに確認(f.調査)
  ↓
感染者を自宅待機(c.就業制限)
  ↓
当該感染者が通常使用する場所(デスクやトイレ)を中心に消毒作業をする(d.消毒)
  ↓
同じ職場環境にいる他の従業員に対し手洗いの徹底、定期的な検温などの健康管理を呼び掛ける(b.健康診断)

 

●a.公表
安全配慮義務の観点からすると、具体的な職場環境の下、従業員の安全性に具体的な疑念を抱かせる程度の危惧となるならば、安全配慮措置を取るべきとされています。つまり、新型コロナウイルスの場合は、最新の科学的医学的知見及び、感染者が発生した場所、感染者の立場などを総合的に考慮した上で、「感染リスクがある」と判断されている場合は、社内で告知することを前提に告知の範囲や内容を個別に検討します。しかし。感染症法4条では「国民は感染症に関する正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払うよう努めるとともに、感染症の患者などの人権がそこなわれることがないようになければならない」と定められており、企業は感染者のプライバシーに関しても可能な限りの配慮が必要となります。

●e.建物に係る措置(封鎖等)
感染者が確認された場合、職場の事業を継続するか、事業所やビルを閉鎖し「e.建物に係る措置(封鎖等)」として対処するか、経営に直結する問題なので非常に難しい決断を強いられます。感染症法においての「建物封鎖措置(第32条)」は、例えば、エボラ出血熱など致死性の高い一類感染症が発生した場合に限られており、新型コロナウイルスの感染者が発生した事業所や建物の場は、封鎖をするための法的要請はありません。しかし、早期発見や隔離が遅れ、企業、組織内で感染が広がる、クラスター発生などに陥った場合は、安全配慮義務の観点から、一定の物理的範囲における出勤停止等や事業の一定期間の停止など、踏み込んだ措置をとる可能性も否めないでしょう。

 

従業員が新型コロナウイルスに感染したら公表すべきか?公表による企業のリスクとは?

(1)社外への告知について
従業員に、新型コロナウイルスの感染者が出た場合の「社内告知」についてはすでに述べましたが、より一層配慮が必要となる「外部への公表」については、どのような対応をしたら良いでしょうか?従業員に感染者が出た場合、企業は従業員の安全配慮義務に従い、保健所への報告、社内への告知・連携を実施し、感染経路や濃厚接触者の範囲を確認の上、消毒作業などの「安全に必要な配慮」と取りますが「必要な配慮」を超えて、情報公開をするか否かについて法的に定められているルールはありません。

感染の公表は、企業イメージや事業に与える影響が大きく、公表すべきか否かは、公表の範囲等を判断するには極めて難しい判断が迫られます。ただし、感染の事実を公表しないまま、会社の事業を継続した場合、会社や関連した店舗に訪れる人の二次感染の拡大、また、内部通報者がいた場合のリスクを考慮すると、個人情報の保護に配慮したうえで、出来る限りの事実関係や対応措置についてオープンにすることが「良」とされています。特に、接客業や人の出入りの激しい店舗を持つ大手チェーン店など一般顧客や消費者と接点が多い事業の場合は、隠せば隠すほど、いざ表沙汰となった時の、炎上リスクと企業ダメージが大きいので、より一層の配慮と注意が必要です。

(2)感染者の個人情報保護について
本来であれば、個人情報保護法第16条2項により、個人情報取扱業者は、あらかじめ本人の同意を得ずに当該の「個人情報」を取り扱ってならないとしつつ、同条3項2号においては、「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」には本人の同意が不要とも規定しています。それを踏まえた上で、「感染者情報」については行政ではあらかじめ「年代・性別・居住地域などの基本情報以外は公表しない」というスタンスをとっています。

行政と足並みをそろえるのであれば、これらの情報は「個人情報」には該当せず、本人の同意は不要と考えられるため、感染者本人の同意を得ずに「年代・性別・居住地域」を公表しても、個人情報保護法違反の問題が生ずる可能性は低くなります。社内に新型コロナウイルスの感染者が出たとなると、従業員の間に動揺が走ります。社内でパニックが発生しないよう、感染者が出た時の公表の方法や企業側のスタンスなどは予め従業員に説明をしておいたほうが、いざというときに冷静に対応できます。

 

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【参照情報】
弁護士法人 桑原法律事務所
>>>新型コロナウイルス対策での企業の安全配慮義務について教えてください

長島・大野・常松法律事務所
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ぎょうせいオンライン
>>>【労務】感染症リスクと労務対応第5回従業員がウイルスに感染していることがわかりました。このことは公表すべきでしょうか?