<コロナ禍を乗り切る!企業のための新型コロナウイルス対策【2】> 従業員が休業する場合の注意点と休業手当・特別休暇制度について

その爆発的な感染力から感染拡大が止まらない新型コロナウイルスは、日常の身近なところに迫る勢いとなっています。感染した人は否応なしに一定期間、仕事を休むことになりますが、発熱が続くなどで感染の疑いがある人も仕事を休まざるを得ません。また、感染している、していないにもかからず、学校の臨時休校や、企業の臨時休業など「感染拡大予防のため」に休業を余儀なくされる状況にあります。新型コロナウイルス関連で、従業員が休業する場合は、どのような注意点があるのでしょうか?休業手当や特別休暇の適用などと併せて、見てみましょう。

 

新型コロナウイルス関連で休業させる場合に企業が留意すること

新型コロナウイルス関連では、いつ何時、従業員の感染による休業や、企業が休業する自体に見舞われるか予測がつきません。来るべき事態に対応できるよう、休業に関する留意点は、以下のとおりです。

●従業員を休暇させる場合は労使で話し合い内容を周知する
休業中の従業員が、何よりも心配するのは「給料」についてですが、基本的には就業規則の賃金規定での定めた、雇用契約の合意内容が優先されます。新型コロナウイルス関連で従業員を休業させる場合の賃金の取扱いについては、労使間で十分な話し合いを行って取り決め、従業員が安心して休業できる体制であるということ広く周知することが重要です。

●「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合は休業手当を支払う
労働基準法第26条によると、

「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合は、使用者は休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならない」

と定められています。この場合の「使用者責に帰すべき事由」とは、「使用者に故意・過失がある場合はもちろん、経営者として不可抗力を主張できない全ての場合を指す」とされています。厚生労働省のQ&Aページによると、労働基準法の上では「100分の60までを支払う」ことが義務ではありますが、従業員が安心して働けるためにも、100分の60の範囲を超えて支払うことが望ましいとしています。そのうえで100分の60を超えて支払う場合、支給要件が合致すれば「雇用調整助成金」の支給対象となると記されています。

 

新型コロナウイルス関連で休業する場合の対応方法

新型コロナウイルス関連での休業では、ケースごとにより対応が変わります。「従業員が新型コロナウイルスに感染しているケース」「従業員が新型コロナウイルスの疑いがあり休業するケース」「集団感染防止のために企業が休業するケース」「臨時休業に伴う休業のケース」それぞれについてまとめました。

(1)従業員が新型コロナウイルスに感染して休業するケース
従業員が新型コロナウイルスに感染し、都道府県知事が行う就業制限により従業員を休業させる場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないため、企業は休業手当を支払う義務はありません。例えば、就業規則の賃金規定などで、ウイルスに感染した場合には休業手当を支払う、などの規定が設けられている場合、または、医師が医療の現場で新型コロナウイルスに感染し労災扱いとなった場合は、その限りではありません。ただし、健康保険や共済保険など被用者保険に加入している場合、要件を満たしていれば、各保険者から傷病手当金の支給を受けることが可能です。療養のために労務に服することができなくなった日(休日初日)から、起算して3日経過した日より直近12カ月平均の標準報酬日額の3分の2について傷病手当金より補償があります。手続きや申請は、各保険者により異なりますので確認が必要です。

(2)従業員が新型コロナウイルスの疑いがあり休業するケース
発熱や咳などの症状が続き、新型コロナウイルスへの感染が疑われる従業員に対しては、「企業から休業要請するケース」と「自主休業するケース」とで対応が違います。

・企業から休業要請する場合
新型コロナウイルス感染への疑いで、職務の継続が可能である従業員に対して、企業の自主判断で休業を要請する場合は、一般的に、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するため、休業手当を支払う義務が発生します。

・自主的に休業する場合
新型コロナウイルス感染への疑いで、従業員が自主的に休業する場合は、通常の病欠扱いとするか、病気休暇制度の活用など、一般の就労規則に沿った対応をするようにと、厚生労働省では呼びかけています。

(3)臨時休校に伴う休業のケース
令和2年3月2日より政府より「臨時休校」の要請があり、多くの自治体がそれに従い、全国的に休校措置となっています。学校の休校により、子どもを一人で留守番させることができない事情で自主的に休業する場合は、休業手当の支払いには該当しません。しかし、一斉休校は国主導で各自治体の判断により決められたことなので、個人的な事情での自主休業とは事情が違います。今回の一斉休校に関しては、働く保護者向けの救済措置として「小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援」などが設けられています。「小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援」では、正規雇用、非正規雇用を問わず、年次有給休暇を除く「特別有給休暇」を取得させた企業には、助成金が支給されるシステムとなっており、従業員が安心して特別有給休暇を取得できるためのバックアップをしています。

 

新型コロナウイルス関連で事業を休業する際の休業手当について

新型コロナウイルスの影響により、事業の休止や休業などを余儀なくされた場合、まずは労使でよく話し合い、従業員の不利益回避に努めるよう努力します。企業が従業員に対して「休業手当」を支払うか否かは、「使用者の責に帰する事由」か「不可抗力」かによって変わりますが、厚生労働省のQ&Aによると、「当該取引先への依存の程度、他の代替え手段の可能性、事業休止からの期間、使用者としての休業回避のための努力義務などを総合的に勘案し、判断する必要がある」と記されています。新型コロナウイルス関連での「不可抗力」と判断されるケースは、相当に限定的とならざるを得ないことが多いと見られるため、政府の助成金制度などの活用を視野に入れた上で「使用者の責に帰する事由」での休業として、最低でも法に基づく休業補償の支払いを前提に検討することが求められるでしょう。政府の助成金に関しては現時点では、「雇用調整助成金」や各自治体での助成制度などが提案されていますので、確認することをおすすめします。

 

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新型コロナウイルス関連では、企業は常に厳しい判断を迫られます。いざというときを決断するためには、知識が最大の武器となります。企業を守るためにも、セミナーで新型コロナウイルスについての情報収集をしましょう。

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<参照情報>
厚生労働省
>>>新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)

ぎょうせいオンライン
>>>【労務】感染症リスクと労務対応 第1回 給料や休業補償に関する疑問

>>>【労務】感染症リスクと労務対応 第2回 年次有給休暇の利用や特別休暇取得に関する疑問