<世界の投資家が注目する長期的運用「ESG投資」【3】> 企業による「ESG経営」の重要性と日本企業のESG取組み事例
短期的な利益を得る為の投資ではなく、信頼おける企業の長期的な成長を見込んで投資するESG投資は、世界の機関投資家たちの間でのトレンドとなっています。日本でも、ESG投資の市場は拡大傾向にあるものの、知名度は高いとは言えず、欧州に遅れをとっているのは事実です。ESG投資を活性化させるためには、ESG経営をする企業を増やすことにあります。ここではESGに取組む際に企業が知るべき「ESG経営の重要性」と、日本企業でのESG取組み事例をご紹介いたします。
「ESGの観点」はビジネスにどう生かすのか?
ESGは、「環境(Environment)」「社会(Social)」「企業統治(Governance)」を指します。ESGの観点は、企業活動でどのように活かせるでしょうか?
●環境(Environment)
Environmentは、「自然環境に配慮すること」に主体が置かれます。具体的には、CO2排出量の削減努力、再生エネルギー、森林伐採や海洋プラスチックなどの環境汚染問題、生物多様性へ配慮した取組みなどが挙げられます。
●社会(Social)
Socialでは、劣悪な労働環境や人権問題、地域の過疎化など、現在社会に影響を及ぼす課題を指します。地産地消などで、地域連携した取組みをすると評価を得られます。
●企業統制(Government)
Governmentでは、会社経営に関することが課題となります。例えば、管理体制や精査管理、経営の透明化などの資本効率化に取組むと、評価に繋がります。それ以外でも、外部取締役の登用、女性の活躍の場を広げるなどに貢献することも、企業の持続的成長が見込めるとして評価されます。
企業が知るべき「ESG経営の重要性」
世界的な規模で見ると、ESG投資は全体の3割を占めるほど浸透してきています。日本は、2014年から2年間で、投資金額は70倍となっています。この数値から、日本の市場はESGへ取組んでいる企業に対して、資金が集まっているということが見て取れます。ESG経営への取組みは、「投資」という面だけでなく、以下のステークホルダーにも様々な影響を与えます。
●顧客
自社の商品へ、環境や社会に範囲したESGの視点を取り入れることで、顧客は「精神的価値」を求めて商品を購入します。例えば、できるだけ環境に配慮し、環境を守る商品を購入する「グリーン消費」や、購入することで「環境を守る経済活動」「社会弱者への配慮」が実現できる「エシカル消費」は購入する顧客に対し、て「環境(Environment)」面での良いアピールとなります。
●従業員
現在の日本では、労働者の労働意欲の低下、長時間労働の容認、能力開発不足、創意工夫の欠如の問題が浮き彫りとなっています。これらに対応するため労働環境の見直しは、従業員のモチベーションや生産性を向上させるため「企業統制(Government)」での評価を期待できます。
●取引先
企業のグローバル化により、サプライチェーンが拡大し、日本国内だけでなく、世界中のあらゆる地域・業種の取引先と直接的・間接的な関係を築く中、国内では気づかなかった、人権問題や環境問題への対応などに対する要請や圧力が強まります。例えば、自社製品の部品調達に再生可能エネルギーを使うなどの取組みは、「社会(Social)」取組みとして評価され、地域や業種を超えた広いジャンルでの顧客を開拓できます。
●投資家
ESG経営をすると、以下の2点で投資家へ影響を与えます。
・指数会社が評価の採用基準を公開することにより、企業側から情報開示が充実するため投資家が判断する際に役立つ
・大手金融サービス企業によるESG指標が開発され周知される
指数会社が、評価の採用基準を公開することは、GPIFから要請されていることでもあります。次項の「ESG指数」の中で、解説します。
企業を評価する「ESG指数」とは?
「ESG指数」は、株式を対象にした企業へのESG評価法の一種です。企業が公開する情報をもとに、ESGへの取組みを見て、銘柄を組み入れる株価指数を5つ(総合型2つ、特定のテーマ型3つ)を採用し、それぞれの指数に連動するパッシブの運用を始めています。その中で、GPIFが採用しているESG指数は、以下の通りです。
・指数会社が、ESGの観点から設けた基準に沿って、評価が高い銘柄を組み入れる
・組み入れ比率を高める「ポジティヴ・スクリーニング」を用いる
前項でも解説したとおり、GPIFは、株価指数や債券指数など、市場の動向を評す指数会社に対して、組入銘柄の採用基準を公開するように要請しています。これは、指数会社の採用基準公開が、企業の情報開示を促すことで、国内外の株式市場全体の価値向上に繋がるための、底上げ効果を狙っての取組みとなります。
日本企業のESG取組み事例をご紹介
では、実際にESG経営を実施している日本企業のESG取組事例について、ご紹介します。
【森永製菓】
老舗の大手菓子製造会社、森永製菓株式会社では、チョコレートの原材料となるカカオ産出国の教育環境を整備するために、2008年からESG経営に取り組んでいます。
●目的
「差別化戦略の強化」
「原材料供給安定化」
●取組み
「学校・衛生環境の改善」
「農家の技術指導」
●成果
2008年から、チョコレートの売り上げ1個につき1円を寄付することで、10年間で累計金額が2億円に達する。森永製菓では、このほかでも、子供の権利に関する意識啓発に取り組んでおり、「子供の教育問題」「児童労働の撤廃」に貢献しています。
【TOTO】
住宅設備機器製造業者のTOTO株式会社では、水問題に関わるESG経営を行っています。
●目的
「水問題への取組み」
「水問題で地域社会と積極的にかわり、結果的に国際的な社会問題も解決する」
●取組み
「TOTO水環境基金の設立」
「中国東北部に対してESGビジネスを構築」
●成果
「TOTO水環境基金」を通して、国内外計11団体に1812万円を助成。2005年の設立から数えて、全250団体に対し3億円にのぼる助成を行った。TOTOでは、これらの取組みにより、「水に関わるメーカー」としてブランド力の強化に成功しています。
【リクルートホールディングス】
求人広告を手掛ける、株式会社リクルートホールディングスでは、「中長期の価値創造」を目的とした、地域活性化事業に取り組んでいます。
●目的
「中長期の価値創造」
●取組み
「地域産品の6次化プロデュース」
「地域企業の事業継承者マッチング」
「山間部を舞台とした森林資産の運用事業」
●成果
ステークホルダーの理解を得るために、取組事例を「マニュアルレポート」と「CRSレポート」を一つにした「統合報告」という形でレポートを公開。社会的責任を果たすほか、ESG経営を通したIR活動をPRしている。
【イオン】
イオン株式会社では、ESG経営とグループの成長の両立を目指しています。
●目的
「平和の追求」「人間の尊重」「地域社会への貢献」という基本理念のものに、「持続可能な社会の実現」と「グループの成長」の両立を目指す
●取組み
「MCC認証の水産物の販売を開始」
「2020年までに全魚種で持続可能の裏付のあるPB商品の提供」
「2050年までにCO2排出ゼロ」を目指すための取組みを実施」
●成果
気候変動対策の国際的な環境評価CDPで、8段階評価の中で3番目に高いスコアBの取得。MSCIジャパンESGセレクトリーダーズ指数、なでしこ銘柄2019など、株式指数構成銘柄に選定される。
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【参考サイト】
THE OWNER
>>>ESG投資・ESG経営とは?本当の企業価値を高めるために理解しておきたいポイント
カオナビ
>>>ESGとは? ESG投資の定義や具体例、企業事例をわかりやすく解説!
年金積立金管理運用独立行政法人
>>>GPIFのESG投資への取組み
イオン
>>>CSR/ESGレポート2019