<種類株式を活用したベンチャー投資【2】> 種類株式の具体的な活用例と「みなし清算条項」について
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種類株式を活用した投資は、ベンチャー企業向けとして注目されている投資方法です。実際に、どの種類株式で、どのような効果があるのでしょうか?その具体例を、株式の種類ごとにご紹介します。また、M&Aが生じた場合に行われる「みなし清算条項」についても、解説いたします。

 

種類株式の活用方法とその効果

種類株式は、会社法108条1項において定められた、「普通株式とは異なる9つの株式」を指します。9つの株式のうち、どの株式が種類株式でのベンチャー投資に向いているのか、その種類と効力、活用方法などをご紹介します。

(1)剰余金の配当(会社法第108条1項1号)
【内容】剰余金の配当について、優先的に(劣後的)に分配を受ける権利のある株式

【効果】△

【活用方法】
ベンチャー企業は、慢性的な資金不足となることが常のため、配当が出ること自体がレアケースとなります。投資家の方で期待しているのも、剰余金の配当よりはキャピタルアゲインの方であるため、ベンチャー投資としては活用の効果は少ないと考えられています。ただし、「残余財産分配の潜脱」を防止することには有効です。

(2)残余財産の分配(会社法108条1項2号)
【内容】会社清算時に発生する残余財産の分配について、優先的に(劣後的)に分配を受ける権利のある株式

【効果】〇

【活用方法】
倒産や清算の場合、会社に残余財産が存在することは稀ですが、M&Aでベンチャーが買収される際に、優先的に取り分を定める「みなし清算条項」として、十分に活用できる可能性があるので、効果アリと判断されます。

(3)議決権制限株式(会社法108条1項1号)
【内容】議決権を行使できる事項について内容の異なる株式

【効果】△

【活用方法】
そもそもベンチャー投資では、あまり活用しない項目です。しかし、株式の流通性を高める効果が期待できるため、買取防衛策として活用できます。

(4)譲渡制限株式(会社法第108条1項5号)
【内容】譲渡による取得株式の取得について、発行会社の承認を要する株式

【効果】×

【活用方法】
日本の未上場企業には、譲渡制限がついていることがほとんどなので、種類株式とするメリットはないとされています。

(5)取得請求権付株式(会社法第108条1項5号)
【内容】株主が発行会社に株式について取得を請求できる株式

【効果】〇

【活用方法】
ベンチャー企業側に契約違反があった際などに、株主側から取得や普通株式への転換を求めることができるので効果ありです。

(6)取得条項付株式(会社法第108条1項6号)
【内容】会社が一定の事由が生じた条件として取得することができる株式

【効果】〇

【活用方法】
ベンチャー企業は、IPOやM&Aでの株式取得の際、この条項を適用して優先株式を取得し、普通株式を交付することが一般的です。

(7)全部取得条項付種類株式(会社法第108条1項7号)
【内容】当該種類の株式について発行会社が株主総会特別決議で全部取得することを規定する株式

【効果】△

【活用方法】
少数株主を排除する場合などで適用する条項であるため、ベンチャー投資ではあまり使われません。日本の場合では、事業継承などをする際に使い勝手が良いとされています。

(8)拒否権付種類株式(会社法第108条1項8号)
【内容】株主の利益に重大な影響を与えるような重要事項について、その株主の同意を要することを規定する株式

【効果】〇

【活用方法】
投資家の持ち株率が高くない場合、議決権付の株式を有してもベンチャー経営に投資家の意思を反映させるのは難しいため、例えば、定款の変更やM&Aなど重症な財産の処分などの場合、この条項を使い投資家の事後承諾をとるなどの手法がとれます。

(9)役員選任権付種類株式(第108条1項9号)
【内容】取締役を使命する権利のある株式

【効果】〇

【活用方法】
ベンチャー投資家にとって、自ら指定する者をベンチャー企業の役員として派遣し、ベンチャー企業の育成・監視をする立場を得ることで有益です。

 

みなし清算条項とは?

種類株式でのベンチャー投資をする際に、「みなし清算条項」を適用するケースがあります。

●みなし清算条項とその目的
株式発行会社にM&Aが生じた場合、「清算したものとみなして、投資家に対して分配を行うこと」を内容とする定めを「みなし清算条項」と称します。投資契約の中で、みなし清算条項が規定されている場合、みなし清算条項の適用を受ける株主は、M&Aで得られえた対価について、「残余財産の分配方法と同じ分配方法」で規定されていることが多く見受けられます。IPOまで至らなかったベンチャー企業が、他企業にM&Aされた時などに、その対価を持株比率で分配すると、取得価格が高額となる場合があり、ベンチャーキャピタルが損をしてしまうことが想定されます。みなし清算条項が規定する目的には、そのような時に、創業者やスタートアップ期からかかわっている者が株式を取得した価格よりも、ベンチャーキャピタル等で高い取得価格を得た株主の権利や利益を保護するためにあります。

●みなし清算条項の効力について
みなし清算条項は、一般的に残余財産の分配について優先権が認められている場合、M&Aによって得られた価値について、残余財産の分配方法と同様の方法で分配される規定となっているケースが一般的です。もし、みなし清算条項が規定されていない場合は、残余財産の分配について優先分配権を有する株主は、会社が解散した場合に優先分配を受けられなくなってしまいます。みなし清算条項が認められていれば、清算時にM&Aが行われた場合でも、残余財産の優先分配権を有する株主が優先分配を受けることができる、とう効力が発揮されるのです。

●みなし清算条項の対象と発動条件
みなし条項を規定する場合は、みなし清算条項の対象を明確にしておくことがポイントです。M&Aひとつとっても、事業譲渡、合併、株式の譲受、譲渡、新株引受、株式交換、会社分割など、様々な手法があります。どのケースの場合に、みなし清算条項が適用されるのかを明確にしておかなければ、トラブルの元となります。

例えば、事業譲渡や会社分割などのM&Aの場合、対価は株主ではなく会社に分配されます。このような場合はみなし清算条項には規定できないので、別途「株主へ分配される規定」を定めてから、みなし清算条項とする必要があります。また、みなし清算条項が発動する場合も同様で、みなし清算条項の発動要件についても、明確にしておかなければなりません。

上記と同様のM&Aでは、一定の時価総額を超える場合にのみ、清算条項の適用が認められる旨を定めとしておくことがポイントです。なお、発動条件については、時価総額やベンチャーキャピタル等の株式取得価格、各株主の持ち株比率などの事情も考慮に入れて検討することを要します。

 

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【参考サイト】
デイライト法律事務所
>>>ベンチャー企業における種類株式の活用法とは?

プロシェアリング
>>>ベンチャー資金調達に活躍の種類株式。優先株式とみなし精算条項とは

資金調達ニュース.com
>>>ベンチャーキャピタルで資金調達するなら知っておきたい優先株とは