<2021年3月施行「改正会社法」の変更点やポイントまとめ【2】> 「改正会社法2021」3つの変更点と5つの改正項目を詳しく解説

「株主総会の規律の見直し」や「取締役等の規律お見直し」などのコーポレートガバナンスの透明化を図るため、2021年3月に会社法が改正されました。2006年5月に施行された「会社法」は、大規模な2015年の第一次改正を実施していますが、今回の改正は二度目の大規模改正となります。2021年の会社法改正では、これまでの会社法から3つの変更点と5つの改正項目があります。これらについて、詳しく見て参りましょう。

 

「改正会社法2021」3つの変更点

改正会社法2021では、大きく3つの変更点があります。この変更点について、ざっくり解説すると以下の解釈となります。

(1)株主総会に関する規律の見直し
「株主総会に関する規律の見直し」は、上場企業の一定の会社で社外取締役の設置が義務付けられたこと、などの項目が含まれます。この項目については、すでに2015年の改正にも盛り込まれており、多くの上場企業では既に社外取締役を設置しているところがほとんどですが、2021年の改正でより明確化されたことで、市場の投資家への日本の企業が信頼できるとアピールすることが目的の一つとも言われています。

(2)取締役等に関する規律の見直し
「取締役等に関する規律の見直し」では、主に「取締役の報酬に関するルールが見直されたこと」がポイントとなります。これまで、取締役の報酬決定方法は株主にとって見えにくいものでしたが、「取締役の報酬をどう決定するのか」の決定方針を株主へ開示することとなったので、取締役の報酬の透明化が図れます。

(3)社債の管理などに関する規律の見直し
「社債の管理などに関する規律の見直し」では、「会社補償」や「D&O保険(会社役人賠償責任保険)」についてのルールが新設されています。これまで日本では、補償契約に基づく会社補償はあまり普及しておらず、明確なルール設定がされていませんでしたが、新たなルール設定により、補償契約に基づく会社補償を導入する企業が増えるのでは、と想定されています。

 

「改正会社法2021」5つの改正項目を解説

上記の3つのポイントも含め、改正会社法において特に重要となる5つの改正項目について、もう少し詳しく解説いたします。

(1)取締役における報酬決定方針の策定義務化
「取締役における報酬決定方針の策定義務化」では、前項でも解説したとおり、取締役の報酬決定プロセスを透明化するために設定されました。この取決めにより、取締役会設置会社とすべての監査等委員会設置会社(一定の上場企業)では、定款や株主総会の決議によって定めている報酬枠や具体的な報酬の算定方法、金銭以外で報酬を受け取る場合の具体的な内容に基づいて、取締役の個人別の報酬を取締役会で決定する義務が課せられました。この権限は、特定の取締役に委任することはできないこととなっています。そして、報酬の決定方針の内容の概要を「事業報告」という形で、定時株主総会の際に、株主書面で開示しなければならないことも決定しています。

(2)会社補償・D&O保険の規律の整備
「会社補償・D&O保険の規律の整備」を解説する前に、2つの用語を説明しておく必要があります。

●「契約補償」とは?
「契約補償」とは「法令違反が疑われ、または責任を追及する請求を受けたことに対処するために支出する費用」や「第三者に生じた損害の賠償責任を負う場合の賠償金や和解金を会社がその社員に対して保証する」ための契約を指します。

●D&O保険(会社役員賠償責任保険)とは?
「D&O保険(会社役員賠償責任保険)」とは、「会社が保険者と締結する保険契約のうち、役員などがその職務執行に関して責任を負うことを約束するもの」、または「責任追及を受けることによって生ずる損害を保険者が補填することを約束するもの」として、被保険者を役員とする契約を指します。

「会社補償・D&O保険の規律の整備」では、補償契約が認められることになったのと、D&O保険を締結する際に、契約内容について株主総会での決議を取ることになりました。補償契約もD&O保険も。会社法の規定なくても締結することは可能ですが、契約にあたっての手続等の解釈が必ずしも確立されていないという点から、実務がスムーズに執り行われるよう法整備されたものとなります。

(3)社外取締役の設置義務化
社外取締役の設置義務化については、すでに2015年の改正で実装している上場企業が多く存在する、という旨を前項にて解説しました。もう少し詳細をお話しすると、2019年8月1日現在で、東証上場会社の94.8%が社外取締役を設置しているというデータがあります。社外取締役の設置を「義務化」する事で、海外機関投資家に対して、「日本の上場企業の社外取締役設置が一律に強制されている」ことをアピールすることができ、日本の上場企業が常日頃から抱かれていた、ガバナンスに関する懸念が払拭されることで、日本の投資市場がより信頼されるようになることを狙いとしています。

(4)株式交付制度の創設
「株式交付制度の創設」はM&Aの新たな手法です。企業が、買収対象会社を「完全子会社ではない議決権50%超の子会社」とするために、買収対象会社の株式を取得し、その対価として、当該株式会社の株式を交付する制度となります。この場合の「買収対象会社」は、日本の会社法が通じる「会社法上の株式会社」に限られており、外国企業は対象外です。買収会社が買収対象会社の株式を丸ごと全部取得する「株式交換」と違い「株式交付」での買収会社は、買収対象会社の株式を当然に丸ごと取得するようなことにはならず、買収対象会社より「譲渡」される形となります。買収対象会社が上場企業であった場合に株式交付を行う場合は、金融取引法上の「公開買付手続き」を踏まえる必要があります。今回の改正法での「株式交付制度の創設」は、国内の非上場ベンチャー企業などを対象とするM&Aにおいて効果を発揮すると言われています。

(5)株主総会資料の電子提供制度の創設
「株主総会資料の電子提供制度の創設」は、まだ少し先の話で2023年度をめどに施行される予定です。この項目の中の「電子提供」とは、電磁的方法で株主へ情報提供する方法を指します。企業は、定款で定めることにより、株主総会参考資料(計算書類書類・事業報告書・議決権行使書面等)の電子提供が可能となりました。ただ、電子提供する場合、いつでも好きな時に提供できるわけではありません。

株主総会資料を電子提供する場合は、例えば、取締役会設置会社のように、株主総会の招集通知を書面で行う必要がある場合は、株主総会の日の3週間前、もしくは株主総会の招集通知を発信した日のいずれかの早い日から、株主総会の日の3か月が経過するまでの間、株主総会の情報(日時・場所。株主総会関係書類)等について、電子提供を行う必要があります。また、株主総会の情報を電子提供する場合は、公開会社・非公開会社問わず。株主総会の日の2週間前までに招集通知を発しなければなりません。

 

まずはセミナーで「改正会社法2021」を知ろう!

会社法は時代にあったものに変えてゆこうと、着々と更新を重ねています。ニーズがあるのは、市場で求められているものです。会社法が改正されることで、市場はどのように変わっていってるのか、潮目を見る目も鍛えられるかもしれません。そのためには、まずセミナーで改正会社法2021について学習しましょう。Webセミナーなら、いつでも好きな時間に繰り返し聞くことが可能なのでとてもお薦めです。

■会場型セミナーで受講したい方は『ビジネスクラス・セミナー』
>>>最新のビジネスセミナーを探す
※サイトにアクセスしたら、「会社法」などでフリーワード検索してください。

■WEBセミナーで受講したい方は『Deliveru(デリバル)』
>>>Webセミナーで最新WEBセミナーを探す
※サイトにアクセスしたら、「会社法」などでフリーワード検索してください。

 

【参考サイト】
Frontier Eyes Online
>>>【2021年3月施行】改正会社法とは?改正の履歴と概要を徹底解説

TOPCOURT
>>>改正会社法が2021年3月施行!5つのポイントを分かりやすく解説

東洋経済ONLINE
>>>3月施行「改正会社法」で押さえておくべき点とは

KPMG
>>>Q&A実務 令和元年改正法で変わること