≪企業とネットリスク その3≫「バイトテロ」はどうやって防ぐ

ネット炎上の新たな脅威として、アルバイトよるSNS投稿が炎上を招く「バイトテロ」が話題となっています。これまでのネット炎上よりも拡散力が高く、企業ダメージも大きいバイトテロは、どのように防いだら良いのでしょうか。バイトテロの動機や理由を紐解き、その対処法を考えてみましょう。

 

ネット炎上リスクの新たな脅威「バイトテロ」とは?

「バイトテロ」とは、アルバイトが勤務中に店内や厨房で撮影した悪ふざけ動画や不適切な画像をSNS上に投稿し、Web上で拡散されてしまうタイプのネット炎上を指します。看板商品や生鮮食品が不衛生に扱われている投稿や、厨房器具に土足で入り込むような投稿は、企業イメージが著しく傷つけられるばかりでなく、本来被害者でもある企業側が、雇用責任をとるための謝罪対応に追われ、その後の風評被害にも耐えなければなりません。最終的には売上の減少や株価の下落など、経営ダメージに繋がる事例もあります。

バイトテロには、動画や画像投稿以外にも、プライベートで店舗に訪れた芸能人や有名人について発信して炎上するケースもあり、アルバイトの一発信が、店舗を閉店に追い込むまで炎上してしまうこともあります。

このようなバイトテロは、新たなネット炎上として近年増え続けており、大手企業はじめ、中小企業も個人経営の店舗も「アルバイトを雇う企業」なら、企業の規模関係なしに被害に遭ってしまうことが特徴で、社会問題にもなっています。

 

「バイトテロ」は何故起きるのか?

バイトテロは、何故起きるのでしょうか。炎上の火種となる投稿をする動機や理由として、以下の点が考えられます。

(1)仲間内で楽しむため
鍵付きのTwitterアカウントでの投稿や、LINEグループへの投稿、最近では数時間で自動的に消去されるInstagramストーリーズや、TikTokなどに、仲間内で楽しむだけの目的で、武勇伝的なテイストの悪ふざけ投稿をするケースは、基本悪意はありません。しかし、悪意がない分、より刺激のある動画や画像を求めて悪ふざけがエスカレートしてしまい、勤務中に店内でモノを投げたり、調理器具でいたずらする動画や、商品を投げて遊ぶ動画など、常軌を逸した投稿をして、火種となるケースが多いようです。刺激を求めるという点では、過激なユーチューバーの影響を受けていることもあり、この手のバイトテロは、社会的な善悪の区別のつかない若年層によく見られます。

(2)店長や正社員など監督者が不在で、ヒマな時間帯がある
バイトテロ投稿の多くは、仕事がなく、また店長や正社員など、監督者がいない隙に撮影されているケースが目立ちます。客のいない時間帯ある店舗、もともと客足が少ない店舗で監督者が不在となると、アルバイトの緊張感が薄れがちで、ホールや厨房にスマホを持ち込み、炎上の火種となる投稿をしやすい状況となります。

売り物のおでんを口にして戻す動画を投稿したバイトテロがありましたが、レジ周りにあるおでんは、通常客の目を引く位置に設置されています。その場所で堂々といたずらをし、撮影ができるのは「人目がない」環境だからこそできる所業です。監督者がいない状況や、客が来ない状況での気のゆるみが、バイトテロの火種を生みだす動機の一つとなります。

(3)アルバイトの教育不足
バイトテロの中で特に炎上しやすいのは、企業の看板商品や、企業の掲げるサービスに対して、反モラル的な投稿をしたケースです。看板商品に対して、なめる、口に入れる、床に置くなど、粗末に扱う、調理器具などを不衛生に扱う、食品を粗末にするなどを面白がって「ネタ」にするほど、世間からのバッシングは強くなります。これらに共通することは、「モラルの欠如」と「仕事に対する意識の低さ」で、その背景には企業や現場での衛生管理やITリテラシー、社内コンプライアンスなどの教育不足が指摘されています。

 

「バイトテロ」が拡散されるメカニズム

バイトテロの火種となる画像や動画などの投稿は、どのように拡散されるのでしょうか。少し前までのバイトテロは、「Twitter」が主流でした。拡散された不適切な投稿ひとつで、勤務先や個人情報が特定されてしまい、投稿者のその後の人生に影響するレベルまで炎上することから、通称「バカッター」と呼ばれてきましたが、最近ではその傾向も変わってきました。

SNSの種類も増え、ネットを利用する人達が自分の身を守る為のプライバシー保護の意識が高くなってきたこともあり、動画や画像を投稿するときは、鍵付きのアカウントや、公開相手を制限したグループ内、もしくは数時間で自動的に消去される場所への投稿する、という方法へと移り変わってきています。それでもバイトテロ投稿の流出は、後を立ちません。

なぜなら、自分では限定公開したはずの投稿が、「第三者の手によって拡散される」からです。「限定公開」は、万全のセキュリティーを約束するものではなく、投稿を見ることができる人物ならば、動画や画像を保存できたり、文章ならばキャプチャーを取ることも可能です。投稿を快く思わなかった人物、あるいは投稿した人物によからぬ感情を持つ第三者が、捨てアカウントなどを使って全体公開で投稿すると、その投稿はもはや「誰でも見ることができる」投稿となってしまいます。元の投稿を消しても、流出した投稿を消すことはもはや不可能で、シェア拡散機能により、見ず知らずの人の手を介してどんどん広まってゆきます。最終的に、まとめサイトや、テレビなどで炎上が取り上げられてしまうと、ネットをしない層にも知られてしまうこととなります。

バイトテロを防ぐ為には、バイトテロがこのように拡散されるというメカニズムを理解することが第一です。

 

「バイトテロ」はどうやって防ぐ

いつ、どこで起こるかわからない「バイトテロ」を、未然に防ぐにはどうしたらいいのでしょうか?以下に要点をまとめてみました。

(1)スマホの持ち込みやSNS利用に関するルール決めをする
大前提として、自分の持ち場内へのスマホ、タブレットなどの通信機器の持ち込みを禁止し、仕事中に使用できないようにすることがポイントです。ポケットのないエプロンや制服を採用し、オーダーや発注のハンディターミナルは首からかけるタイプのものにするなど、原則持ち込みが不可能となる環境とすることにより、仕事中にスマホが弄れない状態となります。

また、SNSの利用に関しても、自身のアカウントで、企業名や店舗名を含んだつぶやき、写真や動画のアップロードの禁止などのルールも必要です。そして、ルールを破った際の罰則規定も設けることにより、アルバイトを採用する段階で、ある程度抑止をすることが可能となります。

(2)採用時にスマホの持ち込みSNS利用に関する誓約書に署名をもらう
スマホの持ち込みやSNS利用に関するルールを定めたら、守ってもらうための誓約書も必要です。誓約書は、ルールを破った場合の備えとなるほか、採用される側にとっても、企業側がこれだけ対策している、という意識させることにもつながります。もちろん、面接の段階であらかじめ「バイトテロ」についての話を伝えておくことも効果的です。

(3)企業全体で衛生管理・ネットリテラシー・社内コンプライアンスについての意識を高める
バイトテロの抑止には、アルバイトだけでなく、雇用側にも衛生管理やネットリテラシー、社内コンプライアンスについての全体教育が必要です。特にSNSの扱いに関しては、企業側で把握できていないことも多く、バイトテロが発生した場合対応が、後手にまわってしまうことが多々あります。バイトテロによるネット炎上が発生したら、どうなるのか。バイトテロをおこしたアルバイトの末路、企業の行く末などの実例を知っておくことも必要です。その対策として、ソーシャルメディアポリシーを導入しての、個人のアカウントに関するルールを定める、バイトテロによるネット炎上対策のセミナーに参加するなど、企業側で体制を整えておくことで、炎上リスクを減らすことも可能です。

(4)バイトテロが発生しにくい職場環境にする
バイトテロの予防には、職場環境の改善も効果的です。客足が少ない時間帯やヒマな時間帯は、店内の清掃に力を入れる、備品の整理をする、集客用のチラシを配りに行くなど、営業努力に労力を注ぐ時間を作り、遊ぶ時間を作らないようにすることがポイントです。また、バイトテロはアルバイトの不満のはけ口となっているケースもあります。人間関係や時給の問題、店長への不満などを企業の方で把握し、アルバイトが働きやすい環境を作るよう心がけてください。

バイトテロは、対策を立てていれば、未然に防げます。そのためには、セミナーなどに参加し、バイトテロに関しての知識を持つことが肝心です。しっかりと学び、万全の対策を講じましょう。

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【参考情報】
飲食店.com
“バイトテロ”から店を守る!飲食店の採用・教育で行いたい5つの対策

集客コンサルティングのSuccess Partner
バイトテロ炎上をなくすための対策とは