≪企業とネットリスク その2≫「ネット炎上」:対策のために企業がやってはいけないこと・やるべきこと
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SNSが日常生活の一部となっている人が多い現代で、SNSによる企業PR戦略は、ユーザーに自社商品を知ってもらう良い機会であり、キャンペーンなども展開しやすいため、多くの企業で取り入れています。その一方で、SNSでの発信がきっかけで、企業の不祥事や事故、不適切な対応などが発覚しやすくなり、瞬く間に拡散して取り返しがつかなくなる「ネット炎上」によって、リスクを被った企業も少なくありません。いつ、どこで降りかかるか分からないネット炎上を防ぐため、企業が「やってはいけないこと」「やるべきこと」とはどんな事でしょうか?

 

ネット炎上による企業のダメージ

ネット炎上が起ったあと、企業が被るダメージには、以下のようなパターンがあります。

・企業のイメージダウン
最も分かりやすいダメージが、「企業のイメージダウン」です。特に、企業の不祥事や事故、企業アカウントの不適切投稿などが発覚した場合は、炎上しやすく「炎上」の様子をマスコミ報道などでも取り上げられるため、SNSをしない層も騒動の顛末を知ることとなります。結果的に、企業のイメージダウンは避けられず、炎上した後も「炎上した企業でしょ」と敬遠され、長い間風評被害に苦しめられることになります。

・広告やCMの自粛・差し替え
企業の広告やCMに、差別的な表現や配慮のない演出または、起用したタレントに問題があって炎上した場合、その広告やCMの自粛や差し替えなどの対応に追われる事態となります。特に差別的な表現をした場合、企業のイメージダウンへ繋がる可能性も否めません。企業のイメージアップや宣伝のための広告やCMのはずが、自粛や差し替えにより、却って手間がかかるうえ、損害を出す恐れもあるため、企業としては避けなければならない炎上の一つです。

・店舗の休業や閉店の危機
アルバイトが、モラルのない不適切な動画をSNSに投稿する、いわゆる「バイトテロ」などによって炎上した場合もダメージは深刻です。例えば、大手チェーンなどは、一時休業、もしくは長期休業などをして、自粛や社内研修などを実施しますが、個人店舗でバイトテロに遭った場合、信頼を回復できないままに閉店、廃業に追い込まれるケースがあります。バイトテロ以外にも、店主自ら客への不満や、ユーザーに対しての攻撃をSNS上でしてしまい、それが炎上して客足が遠のく、不特定多数の人間から嫌がらせを受けるなど、通常営業がままならない状態となり、閉店となることもあります。

・株価の低下
大手企業や有名企業が炎上すると、連動して株価の低下を招くことがあります。マスコミ報道されてしまうような炎上ネタだと、株価の低下は顕著に現れます。企業のイメージダウンと連動していることもあり、株価の低下はどうしても避けたいところでもあります。

企業のダメージで一番辛いことは、炎上した事実が「デジタルタトゥー」としてWeb上に残り続けることです。一度は沈静化しても、他の企業で似たような炎上が起った時に、類似事例として掘り起こされ、再炎上する恐れもあります。ダメージを受けないためには、炎上を最小限に防ぐこと、そして火種を起さないようにすることがポイントです。

 

ネット炎上したときに企業が「やってはいけないこと」

ネットでの炎上が発生したときに、企業が悪手を打ってしまうと、それが「燃料投下」となり更なる炎上を招く恐れがあります。ネット炎上対応で、企業が「やってはいけないこと」とはどのようなことでしょうか?

・感情的な反論
企業や商品のヘイトに対し、SNSの担当者である「中の人」が感情のままに直接的な反論をしてしまうケースがあります。攻撃に対して、脊髄反射で対応すると、それを面白がって煽る人達も現れます。オフィシャルな立場であるはずの企業アカウントが、煽りに乗せられてレスバトルに参加してしまうと、フォロワーからの心証が悪くなり、企業のイメージダウンにもつながります。後に、公式HPなどに謝罪文を掲載しても、言葉の重みを感じてもらえなくなるので、感情的な反論は避けることです。

・オフィシャルでない投稿をする
こちらも企業SNSの「企業内の人」にありがちなケースですが、オフィシャルな立場で企業についての発信をしなければならない立場の人間が、個人的な発信をしてしまうことです。自身の持つアカウントと操作を間違えての誤発信と見られるケースもありますが、その発信が思想に偏りがある発信であったり、ヘイトであったりすると、個人の過ちでは済まなくなり、企業の謝罪や、アカウント閉鎖などの事態に発展することもあります。企業のコンプライアンスを問われる事態となりますので、企業アカウントの取り扱いには最新の注意が必要です。

・炎上ツイート・画像・動画投稿の削除
炎上したのち、そのツイートや画像、動画投稿を削除してしまうと「逃げた」と解釈され、余計に炎上するケースがあります。ネット上には、「消せば増える法則」というものがあり、炎上ツイートや炎上動画を消そうとすると、投稿を消した事実と一緒に、投稿のスクリーンショットなどが第三者の手から投稿され、終息どころか、再炎上する恐れがあります。このような事態を防ぐためにも、炎上した火種の投稿は消さないことが第一です。

・心ない謝罪
炎上に敏感になりすぎ、兎に角コトを収めようと、事実確認もせずに形ばかりの謝罪をしても、炎上は終息しません。事実であった場合も、事実でなかった場合でも、形ばかりの謝罪がフォロワーに響くわけもなく「いい加減な企業だ」とレッテルを貼られる恐れがあります。まずは、火種となった事例を突き止め、原因と経緯を確認してから謝罪するようにしましょう。

 

ネット炎上したときに企業が「やるべきこと」

ネット炎上したとき、問わせるのは企業の対応力です。いかに炎上を最小限に抑えるか、再発防止をするかで、世間の評価は一変します。ネット炎上対応で、企業が「やるべきこと」とはどのようなことでしょうか。

【外部対応としてのやるべきこと】
炎上が発覚した際、フォロワーやユーザーなど、外部に対しての「やるべきこと」をまとめました。

・迅速な行動
先ず、何よりも炎上の事実確認を、迅速に行うことです。一説によると、炎上が発覚してから、「収束しやすい」初動対応時間は4時間以内と言われています。事実確認の後は、火種に対してどのような「燃料」で炎上しているのか、フォロワーやユーザーはどんな情報に関して敏感になっているのか、その論調を把握することで、対策も見えてきます、

・丁寧な対応と誠実な謝罪
世間は、企業が思っているよりも、企業側の態度を観察しています。火種となった事案が事実であり、被害者がいる場合、謝罪することがある場合は丁寧に対応し、誠実に謝罪する必要があります。ここでポイントなのは、「いつまで謝罪するか」にあります。「一度公式で謝罪したから大丈夫」ではなく、企業が信頼を取り戻すまで、気持ちを込めて謝罪しつづけることが重要です。

・企業としての改善点を提示する
謝罪と同時に行うのが、「再発防止策」です。同じ事例を、繰り返して再炎上するようなことがあると、その企業は二度と信用してもらえなくなる可能性があります。炎上したことに対して、これからどのような対策をするか、企業としてどのように取り組んでいくのか、再発防止はどうするか、などを出来るだけ提示し、遵守してゆくことを、ユーザーやフォロワーに示さなければなりません。

【内部対応としてのやるべきこと】
炎上が発覚した際、外部だけでなく、企業の内部にも手を打つ必要があります。ネット炎上の際に内部対応として、企業がやるべきことをまとめました。

・「ネット炎上」のメカニズムを知る
ネット炎上対策の有効手段は、まずネット炎上のメカニズムを知ることです。「火種」となりやすいジャンルをどう取り扱うか、どのような過程で炎上するのかを、SNS担当者だけでなく、上層部を含め企業全体で共有し、ネット炎上に関して、一定の知識と共通の危機意識を持ちましょう。社内でSNSリテラシーを高めるための研修を実施したり、セミナーに参加するなども有効です。

・自社や自社商品の情報をサーチできるネット監視システムの導入
人気商品やキャッチーな話題と同様、炎上ネタにも「トレンド」があります。ネット上のトレンドな何がターゲットになるか読めない分、いつ炎上に巻き込まれるかわかりません。常に自社や自社製品の評判をチェックし、炎上トレンドに巻き込まれていないか、その動向を知る事もポイントです。火種に素早く気づくことにより、先手を打って沈静化へ持ち込みやすくなります。

・ソーシャルメディアポリシーを導入する
企業内部で本格的に炎上対策に取り組むのなら、「ソーシャルメディアポリシー」の導入は必須です。企業のSNSアカウントを運用する際、ルースやスタンスを定めるもので、発信内容だけでなく、運用やアカウントの管理体制についてもルール決めをするものです。ソーシャルメディアポリシーを導入することにより、企業が発信するコンテンツの内容や質を担保することができ、炎上リスクを減らすことが可能です。また、ソーシャルメディアポリシーは、企業アカウントだけでなく、従業員が個人で持つSNS発信についてもルール決めができますので、企業全体でのネットリテラシー向上が見込めます。

このように、ネット炎上を防ぐためには、炎上する前にネットリスク対策に取り組む必要があります。まずは、セミナーなどで、いまどきのネット事情、ネット炎上最新事例などを学び、対策への足掛かりとしてみませんか?

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【参考情報】
SOMPOリスクマネジメント
ネット炎上リスク対策

弥報Online
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Social Media Lab
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FNN PRIME
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