<自動車産業の国際認証IATF16949による品質マネジメント【2】> IATF16949の推奨事項「6つコアツール」を解説

自動車は「安全な乗り物である」ことが大前提であり、3万部ある自動車の部品に不良品が混じることは決して許されることではなく、その品質は常に良好に保たれていなければなりません。そのためには、高品質を維持するための厳格な品質マネジメントと国際的に通用する認証制度が必要となります。IATF16949は、品質管理マネジメントシステムであるISO9001から生まれた自動車の品質マネジメントシステムで、その創設にはGM、フォード、クライスラーなど、世界の名だたる自動車メーカーが関わっています。ここでは、IATF16949の中でも特に重要視されている「6つのコアツール」について解説いたします。

 

IATF16949「6つのコアツール」とは

「中核技術」や「基本技術」とも呼ばれる「コアツール」は、IATF16949の中で特に重要視されている「6つの手法」を指します。アメリカのAIAG(全米自動車産業協会)がマニュアルを発行しており、コアツールを本質的に理解、駆使して品質マネジメントシステムを構築・運用することにより、部品の開発から製造までの一連の流れのベースができている、と判断され、顧客から信頼を得る強い組織づくりに繋がります。「6つの手法」と呼ばれるコアツールには、以下の種類があります。

①APQP(先行製品品質計画)
②FMEA(故障モードと影響解析)
③CP(コントロールプラン)
④MSA(計測システム解析)
⑤SPC(統計的工程管理)
⑥PPAP(生産部承認プロセス)

場合によっては、「APQP」と「CP」を一緒にして「5つのコアツール」と称しているケースもあります。

 

「6つのコアツール」それぞれの意味と役割

「6つのコアツール」は、自動車メーカー側から使用することを求められており、IATF16949の要求項目に含まれているため、IATF16949認証の審査では、必ずコアツールの運用状況を確認されることとなります。以下でそれぞれの項目について、ご説明いたします。

【1】APQP(先行製品品質計画)
【APQPの役割】
・開発から量産までのスケジュールを作成する
・部品を量産することが可能かその実現性をチェックする
・部品コストを制定する
・スケジュールが進捗しているかをチェックする
・FMEA(故障モードと影響分析)を完成させる(*FMEAについては後述します)
・コントロールプランを完成させる

APQPは、「Advanced Project Quality Planning」を略したものです。「先行製品品質管理」という言葉よりも「部品プロジェクトチーム」と置き換えると分かりやすいでしょう。まずは「部品プロジェクトチーム」を立ち上げ、部品の開発に関する話し合いを行います。プロジェクトチームは部品を開発、量産することを目的とするため、営業、技術、品質、製造などそれぞれの分野に精通した人材を集めることがポイントです。

【2】FMEA(故障モードと影響分析)
【FMEAの役割】
・不良品リスクの洗い出し
・高リスク項目に対する予防
・特殊特性の選定
・設計と量産、二つの段階のリスク分析
・CP(コントロールプラン)を作成するベースとなる(*CPについては後述します)

FMEAは、「Failure Mode and Effects Analysis」の略称です。部品が故障する可能性などのリスクを予測し対応策を講じる手法で、実際にリスクを減らし、結果的に損失も減らす、という効果が期待できます。FMEAには、以下の二種類があります。

●設計FMEA(D-FMEA=デザインFMEA)
部品の設計図を作る上で、その材質や寸法、条件の選定など、部品の基礎となる部分のリスク分析を行います。

●工程FMEA(P-FMEA=プロセスFMEA)
工程FMEAは、工場で部品を製造する上での加工方法や作業ミスなど現場作業のリスク分析を行います。

【3】CP(コントロールプラン)
【CPの役割】
・明確な部品の作り方
・特殊特性を明確にする
・具体的な作業標準書との紐づけ

CP(Control Plan)とは、部品を作る設計図を意味します。CPに書かれている通りに手順を実施すれば、不良品を作ることなく部品を完成させることができるとされています。しかし、そのためには、FMEAとの確かな連携が必要です。CPは、FMEAでの分析結果を基にして作成されます。FMEAが更新されているのに、CPが更新されていなければ、不良品をつくり出すリスクがあるとして、不適合となる恐れもあります。そのため、CPは「作業員全員」で把握しておく必要があり、審査の際に抜き打ちで作業員が質問をされる姿も見受けられます。

【4】MSA(計測システム解析)
【MSAの役割】
・測定器が正しく測定できているという証明
・測定者が正しく測定できているという証明

MSAは、「Measurement System Analysis」の略で、計測器が正しい判断をしているのかどうかを検証します。この場合の「正確さ」は誤差の大小で判断し、5つの視点(「偏り」「直線性」「安定性」「繰り返し性」「再現性」)で実際にサンプルを測定し、どの程度の誤差が生じるのかを解析します。

【5】SPC(統計的工程管理)
【SPCの役割】
・安定した状態を維持する
・不安定な状態を予測して対策を講じる

SPCとは、「Statistical Process Control」の略で、安定した製品を作るため、測定結果を統計的に分析し、安定を維持させる手法となります。一般的には、工程能力の考え方を利用した管理図の使用が一般的で、測定したデータを管理図に描くことにより、現在の状況が安定しているのか、不安定なのかを知ることが可能です。不安定な状態であれば、不良品となる前に対策を講じ、安定した状態に戻すようにします。SPCには、MSAが紐づいており、MSAが機能していないと、データの統計的な分析が無意味となってしまうので、MSAで得た結果をベースとしてSPCを作成します。

【6】PPAP(生産部品承認プロセス)
【PPAPの役割】
・顧客が承認できる情報の提示
・顧客との取引を正式文書として残す

PPAPは、「Production Part Apprpval Process」の略称で、顧客に納品する部品の情報を提出して承認を受ける手続きのことです。顧客に提出する部品情報となる書類には、以下のものがあります。

・顧客との取り交し文書
・FMEA
・MSAの解析結果
・部品についての寸法や重さなどのデータ
・試作品のSPCデータ
・部品のサンプル

 

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IATF16949を知るために、「6つのコアツール」は避けて通れない道です。6つのコアツールは、製品に品質にダイレクトに影響します。正しく運用し、IATF16949の認証を受けるためには、「6つのコアツール」を学ぶことがカギとなります。品質のクオリティアップのために、また、信頼ある企業となるために、セミナーでIATF16949「6つのツール」を学んでみませんか?

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【参照情報】
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