<自動運転時代の整備を支える「特定整備制度」スタート【2】> 「自動車整備」はどう変わる?特定整備制度の概要と電子制御装置整備について

CASEによる「100年に一度の大変革」で自動車のめざましく進化し、自動運転車がいよいよ身近な存在となっています。自動運転車には、自動車メーカー渾身の最新電子制御装置が搭載されていますが、技術革新に法整備が追い付いていないのが現状で、電子制御装置を搭載した自動車は、「保安基準を満たしていない」と解釈されていました。そこで、道路運送車両法の見直しが実施され、2020年4月から「特定整備」を含む、改正道路運送車両法がスタートしたのです。「特定整備制度」では従来の分解整備に電子制御装置の整備を含む「特定整備」が追加となっています。特定整備制度によって、自動車整備はどう変わるのでしょうか?特定整備制度の概要や、電子制御装置整備、新しく導入される「OBD検査」についてまとめました。

 

「特定整備制度」に関する国の取組み

国土交通省の「特定整備制度概要」を参考に「特定整備制度」が追加された経緯をまとめました。

●先進技術の点検整備の在り方
まず現行制度の評価として「自動車技術の電子化、高度化により、現行の分解整備の対象となる装置の取り外しを伴わない整備又は改造であっても、当該装置の作動に影響を及ぼす恐れがあり、その結果として保安基準適合性に大きな影響を与えるものが増加している」とし以下の点を問題視しました。

・現行の道路運送車両法では、これらの整備や改造が「分解整備」の定義に含まれていない
・先進技術に係る装置は、分解整備の対象装置となっていないので、点検をしても点検整備記録簿への記載義務が発生しない
・先進技術に係る装置は非認証事業者であっても取り外しや整備・改造が可能となってしまう
・整備作業の安全確認が法制上担保されていない

●分解整備から「特定整備」へ
国は、自動車整備事業者が行う自動ブレーキ等の先進技術を搭載した車や自動運転車の整備について、その確実な実施を担保するために、先進技術の整備を行う自動車整備事業者を識別できる法整備が必要とし、道路運送車両法第49条第2項において「分解整備」を「特定整備」と改めました。以下に条文を抜粋します。

【特定整備】
原動機、動力伝達装置、走行装置、操縦装置、制動装置、緩衝装置、連結装置又は自動運行装置(第四十一条第二項に規定する自動運行装置をいう)を取り外して行う自動車の整備又は改造その他のこれらの装置の作動に影響を及ぼすおそれがある整備又は改造)であって国土交通省令で定めるもの(*道路運送車両法施行規則第3条において規定)

 

「分解整備」と「特定整備」の違い

従来の「自動車整備制度」は、これまでの「分解整備」でしたが「特定整備」では、従来の分解整備に加え、新たに電子制御装置の整備が追加されます。以下で「分解整備」と「分解整備+電子制御装置整備」が追加された「特定整備」について整理しています。

●分解整備とは?
分解整備ではエンジンや足回りなど、自動車の安全性や環境保全につながる重要な7つの作業があります。

(1)原動機
エンジンの交換など

(2)動力伝達機
クラッチ、ミッション、プロペラシャフト、デフの取り外し、交換など

(3)走行装置
ドライブシャフトやアクセルシャフト、ロアアームの取り外しなど

(4)操縦装置
ステアリングのギヤボックスやタイロッドの取り外しなど

(5)制動装置
ブレーキパイプやブレーキホースの取り外しなど

(6)緩衝装置
リーフスプリングの取り外しなど

(7)連結装置
牽引自動車の連結部分の取り外しなど

 

●電子制御装置整備の作業とは?
「特定整備」では、上記7種類の分解整備に「電子制御装置整備」が追加されます。電子制御装置整備は、分解整備と同様、自動車の安全な走行に直結する高度な技術を要する整備です。その作業は、以下の3つとなります。

(1)自動運行装置
自動運行装置の取り外しや、作動に影響を及ぼす恐れのある整備や改造

(2)衝突被害軽減装置
自動ブレーキやレーンキープ機能に使われている前方センシングのためのカメラ等の取り外し、コーティング作業や光軸調整などの機能調整

(3)自動命令操舵装置
(1)(2)の作業に関するカメラやレーダー等が取り付けられているバンパー、グリル、窓ガラスの脱着

特定整備では電子制御装置整備だけでなく、従来の分解整備も併せて行います。考え方としては「特定整備=分解整備+電子制御装置整備」ということになります。

 

■特定整備で「エーミング調整」や「OBD検査について
特定整備ではこれまで耳になじみのない「OBD検査」や「エーミング調整」などの方法が導入されています。それぞれの用語について見てみましょう。

●エーミング調整
「エーミング調整」とはASV(先進安全技術自動車)の自動運行に必要な、カメラの光軸や各種センサー機能が正しく作動するか調整する作業です。ASVは「衝突被害軽減ブレーキ」「ふらつき注意喚起装置」「車線逸脱警報装置」「車線維持支援制御装置」等の装置を指します。エーミングには、3つアイテムが必要です。

・超音波センサーのついたバンパー(レーダー・センサー)
・フロントガラスの交換(カメラ)
・フレーム修正を伴う板金塗装(レーダー)

エーミング作業をするには、これらのスキャンツールと相応の作業スペースを要します。

●OBD検査
OBD検査は、車載式故障診断装置のことです。自動車に搭載されているセンサーや、構成部品の断線、機能異常の有無をセルフ診断して記録する装置で、故障コードが検出されていないどうかを検査時に確認することとなっています。OBD検査は自動ブレーキなどの電子制御装置に係るため、重要な点検としています。そのため、国では、各自動車メーカーに、情報の開示を求め、国土交通省のHPで提供された情報が確認できるようになっています。

 

セミナーを受講して自動車整備業の変革時代を乗り切りましょう

「特定整備」は「分解整備」に「電子制御装置整備」が加わっただけですが、電子制御装置はメーカーにより違いがあり、新しい検査の仕方などをも覚えなければなりません。すでに施行されている特定整備に追いつくためにも、セミナーで特定整備を学びましょう。Webセミナーなら、特定整備についての講義を何度も確認することが可能です。ぜひとも探してみて下さい。

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【参照情報】
RESOLUTION
>>>分解整備から名称の変った「特定整備」とは?

FINE PIECE
>>>一般公開:自動車特定整備事業について(国土交通省)

日本自動車会議所
>>>自動車産業インフォメーション 改正車両法4月1日施行へ「特定整備」いよいよスタート

くるまのニュース
>>>車の整備が2020年4月から複雑化?整備費の高額化招く「エーミング」とは

車検が安い車検のコバックお役立ちブログ
>>>みなさん!エーミング作業ってご存知ですか?