<自動運転時代の整備を支える「特定整備制度」スタート【1】> 「特定整備制度」が含まれた「道路運送車両法改正」とは?

車がコンピューターの力で自動運転する「自動運転車」は、近未来の乗り物として長くイメージされていましたが、世界中の自動車メーカーが自動運転の開発に乗り出し、それも夢ではなくなってきています。しかし、技術ばかりが進んでも、法整備が追い付いていなければ「自動運転車が当たり前」の世界は遠い未来の乗り物のままです。また、自動運転車は、システムも部品も、従来の自動車とは大きく違ってきており、メンテナンス業界もバージョンアップする必要が出てきました。そんな状況を踏まえ、国は「道路運送車両法」を改正し「特定整備制度」を設けています。2020年4月に施行される「道路運送車両法改正」の改正までの経緯やポイントなどについて解説致します。

 

道路運送車両法改正に至る経緯

「道路運送車両法改正」とは、以下の点を規定したものです。

●自動車の構造・装置等の保安上・環境保全上の技術基準(保安基準)の規定
●自動車の安全性確保と自動車の登録・検査の制度を設けるとともに自動車の整備等について規定

「保安基準に満たない車」とは、一般的には「車検を通らない車」と認識されています。車検を通らない車は、道路運送車両法41条により「運行の用に供してはならない」として公道を走行することはできません。自動運転車は、保安基準の対象でない技術を要する車のため、現行法のままでは公道を走行することが許されませんでした。自動運転車の実験は「官民ISロードマップ2016」による限定地域で、無人自動走行が実施されていましたが、国土交通省では、平成29年2月に「所定の安全措置等」を条件として、「道路運送車両の保安基準55条」に基づく基準の緩和を認め、公道実証実験を可能としました。さらに国土交通省では、平成30年に「遠隔型自動運転システムを搭載した自動車の基準緩和認定制度」を創設しています。

2018年の官民ISロードマップでは「自動運転に係る制度整備大綱」を受けて、2020年頃から自動運転の本格実用化を念頭に置いて、レベル3及び4の自動車を対象とする、安全性に関する基本的な考え方や要件を10項目に掲げた「自動運転車の安全技術ガイドライン」を公表しました。これらの一連の動きもあり、国土交通省では新たに「自動運行装置」を定義する規定を設け、自動運行装置も保安基準の対象となった「道路運送車両法の改正」を2019年5月に決定し、2020年4月に施行する運びとなったのです。

 

道路運送車両法改正4つのポイント

道路運送車両法について、4つのポイントにまとめました。

(1)「自動運行装置」が保安基準の対象となった
道路運送車両法改正では、「自動運転に係る機器等に関する用語として「自動運行装置」を新設しました。(道路運送車両法99条3第1項)「自動運行装置」は、道路運送車両法1条1項20号・41条2項で以下のように定義しています。

「プログラム(電子計算機(入出力装置を含む。この項を除き、以下同じ)に対する指令であって、一の結果を得るようなことができるように組み合わされたものを言う以下同じ。)により自動的に自動車を運行させるために必要な自動車の運行時の状態及び周囲の状況を検知するためのセンサー並びに当該センサーから送信された情報を処理するための電子計算機プログラムを主たる構成要素とする装置であって、当該装置ごとに国土交通大臣が付する条件で使用される場合において、自動車を運行する者の操縦に係る認知、予測、判断および操作に係る能力の全部を代替する機能を有し、かつ、当該機能の作動状態の確認に必要な情報を記録するための装置を備えるものをいう」

これにより、自動運行装置を備える自動運行車が道路運送車両法上で「運行の用に供する」と、認められることとなりました。

(2)自動車の電子的な検査に必要な技術情報の管理規定を整理
国土交通省では、自動運転技術等に使用される電子装置に関する検査手法について、議論を重ねてきました。自動車の電子的な検査には、「車載式故障診断装置(OBD:On-Broad Diadnostics)を活用した検査(OBD検査)」を実施することが定められ、OBD検査に必要な技術情報の管理に関する事務を独立行政法人自動車技術総合機構に合わせることと、道路運送車両法74条の2で想定しました。今後は、OBD検査をするための制度が構築されていくと見られています。

(3)分解整備の範囲の拡大と点検整備に必要な技術情報の提供義務
従来からの、自動車の主要部分である原動機などの脱着を伴う整備や改造を「分解整備」と言います。分解整備には専門的な知識や技能を要することから、自動車分解整備業を営むためには、地方運輸局長の認証が必要となります。この分解整備に「自動運行装置」が対象として加えられ、自動運行装置の作動に影響を及ぼす恐れのある、整備・改造にも範囲が広がり、道路輸送車両法49条2項にて「特定整備」と名称を改めました。それと同時に、自動車メーカー等から特定整備を行う事業者に対して、点検・整備をするにあたっての必要な型式固有の技術情報を提供するようにと道路運送車両法57条の2によって定められ手います。なお、自動車分解整備業の運営には、地方整備局長の認証が必要であることはこれまでどおりです。

(4)自動運行装置等に組み込まれたプログラムの改変による改造等に係る許可制度の創設
自動運転では、システムのバージョンアップ等のアップデートを実施し、不具合の修正や性能アップを計ります。これは「自動運行装置」等に組み込まれたプログラムの改変に「改造」が行われると認識されることから、保安基準に適合しなくなるのではと危惧され、このような改造(改変するプログラムの提供も含む)も「特定改造等」として、国土交通大臣の許可を受けなければならないようになりました。(道路運送車両法99条の3)特定改造等に関する事務の一部は独立法人行政自動車技術総合機構が担うことになっています。(道路運送車両法99条の3第8項)

 

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2020年は法改正施行ラッシュ。道路運送車両改正法は、単なる保安基準の拡大だけではありません。自動車メーカー、自動車部品メーカー、ディーラー、整備業者、ユーザーなどあらゆる自動車関係者に影響を及ぼします。道路運送車両改正法の基本的な知識について、まずセミナーで学びましょう。

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【参照情報】
SIP cafe ~自動車運転~
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>>>道路運送車両法改正法で事業者等に求められる自動運行装置の保安・整備の概要と影響