<「品質管理」を基本から見てみよう【6】> ISO9001を継続的に運用するためのポイント
全社を挙げてプロジェクトを立ち上げ、ようやく取得したISO9001が、取得後にうまく運用されていない例はそこかしこで聞かれます。品質を継続的に管理するためのISO9001取得ならば、継続的に運用されていないと意味がありません。ISO9001取得は、ゴールでなくスタートです。取得後にも段階的に「更新審査」があり、クリアしなければISO9001の更新ができなくなってしまいます。ISO9001取得を、継続的に運用するにはどうしたら良いでしょうか?そのポイントをまとめました。
ISO取得後の「更新審査」について
ISO9001に限らず、ISOの有効期間は3年間です。実際の更新は3年ごとに実施されますが、その間の「更新審査」は取得後1年後からスタートします。ISO後の更新審査の流れについて、下記にまとめました。
【第1回目の維持審査】
第1回目の維持審査は、ISO取得後1年後からスタートします。
①内部監査・マネジメントレビュー
会社内部の体制や、マネジメントシステムについて、運用から1年後の懸念点や問題点などをピックアップします。
②不適合の場合
①で不適合とみなされた場合は、指摘箇所についての対応方法を確認します。
③クレーム処理の確認
これまでのクレーム件数とクレーム内容、クレームに対しての対処方法などをチェックします。
④ISOの登録マークやシンボルデータの確認
ISOから配布された登録マークやシンボルデータなどが、適切に使用されているかも審査します。
【第2回目の維持審査】
第1回目の維持審査から1年後、ISO認証取得から2年目に第2回目の維持審査となります。2回目の維持審査は、1回目の維持審査と内容は同じです。
【更新審査】
第2回目の審査から1年後、ISO認証取得から3年後に最終的な更新審査が実施されます。厳密に言うと、有効期限の2か月前ほど前から「事前に協議して決められた日程」にて開催され、1日がかりの審査となります。ISOの種類によって審査の詳細は異なりますが、概ね以下のような流れで実施されます。
①オープニングミーティング
審査員と審査される会社側の名刺交換や自己紹介を交わします。
②トップインタビュー
3年間のISO運用に関して、会社側の代表者がインタビューを受け、売り上げ状況、ISO認証取得後の取組みの変化、ISO認証プログラム運用の現状などについての質問があります。
③管理責任者に対するヒアリング
作業手順書の改訂・更新・教育訓練の実施報告書、品質管理月報などを審査員がチェックし、気になる箇所を管理責任者に指摘します。
④現場視察
I審査員が現場で実際に作業している作業員をチェックし、プロジェクトメンバーに作業に関しての質問をします。
⑤各部門・部署ごとへのヒアリング
社内の各部門や部署も視察し、従業員や作業員へISOに関しての取組み具合のヒアリングを実施します。
⑥更新審査の総括
更新審査の参加者を集め、審査員が簡単な講評を行い、不適合や観察事項の指摘をします。指摘された箇所は、更新のために社内で改善策を検討する必要があります。
⑦クローミングミーティング
ISOの審査機関では、問題が合ってもなくても、現状維持「以上」の改善を求めます。今以上の品質を保つにはどうしたらよいか、どんなマネジメントシステムの運用が最適かを審査員からアドバイスを受けて、次期の更新目標を策定します。こうして、更新審査を終え、審査員が「更新可能」と判断した場合は、新たに3年間の有効期限を持った登録証を受け取れます。
ISO9001認証の運用がうまくいかない理由とは?
ISO9001認証を受けても、以下のように運用がうまくいかないケースも多々あります。
・ISO9001認証を取得しただけでプロジェクトが終わってしまった
・審査のために内部監査を形式的に配置したが機能していない
・マニュアルをつくり込んでも内部監査が実施されないのでうまく運用できない
・プロジェクトチームは存在したが社内にISOの取組みが浸透しなかった
このようなケースの主な原因に、「ISO取得のやらされ感」が挙げられます。例えば、会社の経営陣が「ISO9001を取得すればなんとかなる」程度の認識でプロジェクトチームを立ち上げ、内容はチームに丸投げして関わらなかったため、チームにも「やらされ感」が出てしまい、社内に浸透しきれなかったケースや、逆に経営陣がISOに取り組む気が無く、外的要因で仕方なくチームを立ち上げたが、取得して終わってしまった、というケースなど、ISO認証取得の本質を見極めない会社の多くが、このような顛末をたどってしまっているのが現状です。
ISO9001認証を継続的に運用するためのポイント
では、ISO9001を継続的に運用するには、どうしたら良いでしょうか?ポイントは、以下の3つにあります。
(1)ISO9001認証の取得は「ゴール」ではなく「中長期プロジェクトの通過点」
多くの企業がはき違えている問題は、「ISO9001認証取得をゴールとしている」ことです。ISO9001認証取得は、「ゴール」ではなく「中長期プロジェクトの通過点」です。「ISO9001認証を取得するため」のプロジェクトを立ち上げるのではなく、まずは経営目線で「何のためにISO9001認証を取得するのか」を考え、会社の未来を見据えた長期的な運用方法を意識することがポイントです。
(2)運用しやすいシステムを構築する
改善のために、あれもこれもとマニュアルに盛り込みすぎて、実際の現場の業務と折り合えずに運用できない例や、細かいルールを決めすぎて社内に浸透しなかったケースなど、せっかく定めた品質マネジメントシステムがうまく回らないことが、継続的な運用を妨げる要素となります。継続的に運用するためには、誰もが当事者意識を持ちやすくなる有効性の高いシステムの構築と、マニュアルやルールのスリム化です。ISO9001の取組みには、全社で当事者意識を持つことが大切です。万人に理解され、使いやすいマニュアル作りやシステムの構築がカギとなります。
(3)「やらされ感」から抜け出す
「ISO9001認証を取得するため」にプロジェクトを進めると、ISO9001規格の「品質を維持し顧客満足度を上げる」という本質が見落とされがちです。トップダウンで「やらされ感」のあるプロジェクトではなく、ISO9001認証取得のメリットを正しく理解し、本質を見極めて運用することが重要です。ISO9001認証取得のきっかけがトップダウンであっても外圧であったとしても、プロジェクトに取り掛かってからの意識改革となっても遅くはありません。会社の品質をキープするためにも「ISOのやらされ感」から脱却し、ISO9001の利点を大いに生かした品質マネジメントシステムを構築しましょう。
ISO9001認証を継続的に運用するカギはセミナーにあり!
せっかく取得したISO9001認証を、持て余していませんか?継続審査は、1年ごとにやってきます。取得できたのならあとは継続的に運用し、品質を維持するだけです。ISO9001認証継続のカギは、セミナーにあり!品質保証やISO9001に関連したセミナーで、ISO9001認証を有効に生かしましょう。
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【参照情報】
エミーオ
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