<「品質管理」を基本から見てみよう【4】> 品質マネジメントに欠かせない国際規格「ISO9001」とは何か?

「品質管理」に関わると必ず出てくる用語が「ISO9001」です。ISO9001は、自社や自社の製品の品質マネジメントシステムに関係する国際規格であり、ISO9001を取得している商品やサービスは、国際的に信頼できるという「証」のようなものです。ここでは、品質マネジメントに欠かせないISO9001の概要と、ISO9001の基となる品質マネジメント7原則について解説致します。

 

「ISO9001」とは何か?

まずは「ISO9001」の概要について、まとめてみました。

●「ISO」について
そもそも「ISO(アイエスオー)」は、スイスのジュネーブに本部を置く「国際標準化機構」のことです。簡単に言うと「世界の標準」を作る組織のことで、世界の様々な分野において、必要な標準や規格の制定、発行をして国際的に普及させることを活動としています。ISOには、「ISO14000s(環境マネジメントシステム)や「ISO22000s(食品安全マネジメントシステム)」などがありますが、「品質管理」の分野においては「ISO9001」が該当します。

●「ISO9001」について
「ISO9001」は、「お客様により良い品質の製品やサービスを提供するための仕組みを作るためのガイドライン」で、自社の製品やサービスの「品質マネジメントシステム」に関する国際規格ということになります。ISO9001では、品質マネジメント7原則を基盤とした品質マネジメントシステムを運用し、自社の製品やサービスなどの品質を継続的に維持、改善し、顧客の要求に答えることによる「顧客満足度」を目指す事をゴールとしています。

 

ISO9001を取得する目的

ISO9001は、どの業種でも取得できることが大きな特徴ですが、どのような目的で取得する規格なのでしょうか?下記に、その目的をまとめました。

(1)業務の効率化
ISO9001を取得するためには、「作業工程の見える化」が必要です。作業工程を見える化することにより、これまで利益に繋がらず無駄だった業務が洗い出され、業務効率の見直しを図ることが可能となります。

(2)取引先からの信頼関係を醸成するため
ISO9001は、世界中で評価を得ている国際規格のため、そのライセンスを取得しているということは「この企業の品質は保証されている」ということになります。このように見られることは、企業にとって大きなプラスであり、取引先との信頼度醸成にもつながります。

(3)社内の意識改革のため
ISO9001を取得する場合、会社の組織図や業務の割り振りなどについても、見直しが行われます。社員各々の役割や目的を明確にピックアップし、適切な配置をすることで、従業員一人一人の意識が変わり、社内の意識改革も図ることができます。

(4)公共事業の入札加点とするため
自治体などの公共事業の入札に参加する場合、ISO9001を取得していることが条件となっていることもあります。特に、土木事業などの建設関係企業は入札加点の対象になるため、ISO9001の取得は大いに役立ちます。

 

ISO9001の基となる「品質マネジメント7原則」について

ISO9001への理解を深めるには、その基とも言える「品質マネジメント7原則」について、知る必要があります。品質管理をするために必要な7原則は、以下のようになります。

(1)顧客重視
ISOの規定条文、JIS Q9001:2011(5.1リーダーシップ及びコミットメント)では、「顧客重視」を下記のように定めています。

「トップマネジメントは次の事項を確実にすることによって、顧客重視に関するリーダーシップ及びコミットメントを実証しなければならない」
a)顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を明確にし、理解し、一貫してそれを満たしている。
b)製品及びサービスの適合、並びに、顧客満足を向上させる能力に影響与え得る、リスク及び機会が決定し、取り組んでいる
c)顧客満足度の向上の重視が維持されている

顧客重視では、顧客が求めるQ(品質:Quality)C(価格:Cost)D(納期:Delivery)、すべての要求事項を満たすことにより、顧客満足度が向上すると言われています。QCDだけではなく、リスクや不足の事態も想定し、マネジメントシステムを構築できることがベストです。

(2)リーダーシップ
ISO9001を取得する際のリーダーは、品質マネジメントシステムを構築し、実証し、その有効性を維持する全責任を負う立場となります。ISO9001に限らず、ISOを取得し、世界に認められる国際規格となるためには、組織全体で目標に向かって進む必要があります。組織の構成員を引っ張るためにも、トップマネジメントがリーダーシップを発揮することは、非常に重要なのです。

ISO9001におけるトップマネジメントの役割は、以下の3つになります。

・コミットメント
トップマネジメントは、品質マネジメントシステムの構築に深く関わらなければなりません、例えば、品質マネジメントシステムの有効性に説明責任を負う、組織の事業プロセスへの品質マネジメントシステム要求事項の統合を確実にする、品質マネジメントシステムがその意図した成果を達成することを確実にするなど、コミットメントを実証する必要があります。

・マネジメントレビュー
トップマネジメントは、企業が実施してきた体制を振り返り、成果や疑問点を考察します。振り返るポイントは、組織の目的、品質目標の設定、適用される要求事項を満たす事へのコミットメントなどで、これらの品質方針を確立し、マジメントレビューをしながら、組織体制と目標を維持します。

・組織内での権限の割当て及び伝達
トップマネジメントが品質マネジメントシステムを構築する場合、関連部署や関連担当へ責任や権限を割当て、組織内へ周知し、組織全体に理解されるように努めなければなりません。組織全体にわたって、顧客重視を促進することを確実にするためにも、適切な判断を要します。

(3)人々の積極的参加
「人々の積極的参加」とは、組織内の人間がトップマネジメントの掲げる旗印「品質目標」を正しく理解し、それを達成させるために、個人個人の意識を高める考えのことを指します。人々を「積極的参加」へと意識を向けるためには、以下のような思考を持つことが大切です。

  • 品質目標を達成するために人々の意識を向上させる
  • 個人の力量・主導性・創造性を強化する
  • 改善活動における人々の参画の拡大
  • 人々の活動における満足の増大
  • 組織全体のコミュニケーションの増大
  • トップマネジメントが掲げる品質目標への理解

また、人々が積極的に参加しやすくなるように、「QMS(Quality  Management System)実行組織図」を作成し、どの部署の誰がどのような役割を持って活動しているかを可視化し、全体に周知する必要もあります。

(4)プロセスアプローチ
仕事のプロセスを明確にして、各プロセスの相互関係を把握し、一連のプロセスをシステムと捉えて運営することを「プロセスアプローチ」と言います。品質マネジメント7原則では、「経営資源」と「業務」が一つのプロセスとして連動した上で管理されている場合は、望ましい結果が達成されるという考えがあります。プロセスを明確にし、相互作用させ、きちんと運用管理して、はじめてプロセスを活用することができます。プロセスをシステム化して適切に運用することで、プロセスアプローチが成功します。

(5)改善
「改善」も、また品質マネジメントシステムには、欠かせない要因です。製品やサービスをとりまく企業や組織の外部環境は、技術の発展や法律の改正などにより、日々変化しています。働き方改革などによって組織内部の人材にも影響を及ぼしています。品質マネジメントにおいては、社内変化にも社外の変化にも柔軟に反応して対処しなければなりません。「改善」は外的要因によって「変化させられる」のではなく、「品質を維持し、顧客満足を実現するためのもの」、つまり「アップデート」として捉えて最適化していくものと考える必要があります。

(6)客観的事実に基づく意思決定
「客観的事実」とは、データに基づく事象です。例えば、「返品率が0.7%減少した」「顧客満足度が4%向上した」などというデータに基づく数値は、構築している品質マネジメントシステムを正しく評価するものであり、「経験」や「カン」だけでは得ることのできない「数値上の事実」です。客観的事実となる有効なデータは、「ただ集めただけ」のデータでは役にはたちません。データを集めるときは、明確な目的をもって集め、マネジメントシステムに役立てるようにします。

(7)関係性管理
「関係性管理」とは、昔ながらの「日本の企業」にはあまり浸透しにくかった「PublicRelations(パブリックリレーションズ)」の概念における「ステークホルダー」との関係性を指します。企業における一番身近なステークホルダーは「顧客」に当たります。顧客は、製品やサービスに金銭を払ってくれる重要な存在です。顧客満足度を目指すには、顧客の要求条項を満たせば良いのですが、ステークホルダーは顧客ばかりではありません。例えば、「株主」や「仕入先・取引先」「周辺の住民や施設」、そして「政府・自治体」「従業員」までもステークホルダーに含まれます。仕入先は、製品を作るために欠かせない存在であり、商売をするには施設の使用許可や周辺住民の理解必要です。このように、あらゆるステークホルダーと対等な立場にたち、友好関係を構築することで、顧客満足度という目標の達成に向けて前進しやすくなります。

 

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【参照情報】
ISOプロ
>>>【ISO9001入門】規格の詳細から要求事項・取得のノウハウまでの徹底解説

>>>【品質マネジメント7原則】ISOにおける顧客重視とは

>>>【品質マネジメント原則】ISO9001におけるリーダーシップとは

>>>【品質マネジメント7原則】人々の積極的参加とは

>>>【品質マネジメント7原則】プロセスアプローチとは

>>>【品質マネジメント7原則】ISOにおける改善とは

>>>【品質マネジメント7原則】客観的事実に基づく意思決定とは

>>>【品質マネジメント7原則】関係性管理とは