【企業法務の基礎知識13】 若葉マークの入門編 「契約書」を学ぶ②「契約書」のメリットと3つの機能について

お疲れ様です!いのりんです♪

どちらかというと、ヘンな夢を見てしまうタイプの私。

先日、なんでかプレゼンを学校の教室でやることになり、
なれないチョークを握って、
黒板にミミズのような字を書いたところで目が覚めた…という夢を見ました。
いやあ、リアルにドキドキしましたよ。

そんな時、目に飛び込んできたニュースが、
ICT教育の一環による「電子黒板」の話題。

先生が分かりやすい教材を表示できるほか、
グループ発表の意見も同時に展開できるとか。

これなら授業も集中しやすいし、楽しく勉強できそうですね。
いいなあ~未来のキッズたち。

さあ、黒板プレゼンの夢は忘れて、私も法務のお勉強です!
今回も「契約書」について、おつきあいくださいませ。

 

「契約書」を交わすことによるメリット

商品の売買、お金やモノの貸し借り、約束事など、
契約の数だけ「目的」が存在します。

本来「契約」は、
「双方の合意」があれば書面が無くても成立するものですが、
「契約書」に示すことにより「法的拘束力」が生じます。

なぜ、わざわざ「契約」を書面に残す必要があるのでしょうか?

契約書を交わすことにより、
以下のメリットが考えられます。

●契約意思の確認・明確化
●契約の証拠
●紛争の事前防止

口約束だと「言った、言わない」の水掛け論になりがちですが、
書面に残すことにより、双方に責任が生じ、
より契約が履行されやすくなる、
ということも大きなメリットと言えるのではないでしょうか。

 

「契約書」が持つ3つの効力とは?

契約書のメリットを詳しく紐解くと、
「確認機能」「紛争予防機能」「立証機能」
の3つの効力に分類することができます。

この「3つの機能」について解説いたします。

(1)確認機能
契約書を締結する際、
双方で納得して契約の署名捺印をして契約を成立させますが、
その時に非常に重要な可視ポイントが「日付」です。

契約書に記される日付は、
契約書を作成した「作成日」と双方の署名押印がそろって、
契約が法的に有効となる「締結日」があります。

通常「作成日」と「締結日」は一致させるようにしますが、
先方と郵送でやりとりをしている場合などは、
相手の押印が可能な日を「作成日」として、
「締結日」と合わせるように作成することが一般的のようです。

しかし、作成日と締結日を一致させずに、
相手の押印が後日になると判明している場合で、
その日に押印するまで契約書の効力を発生させないようにする場合は、
民法135条1項の「契約の始期」に定められている通り、
署名押印の日に契約は成立しますが、
契約の効力は記載されている作成日まで発生させないことが可能です。

(2)紛争予防機能
契約書を作成すると、
「契約内容の理解する機会」と
「契約を締結するかどうか検討する機会」が与えられます。

本来「契約」は、口約束だけでも成立するものですが、
書面で契約内容を可視化することにより、
契約内容に関してトラブルが発生した場合に、
契約書の内容に反する相手の主張を退けることができます。

このように契約書には、
「言った、言わない」の水掛け論や
「身に覚えのない約束事」を予防する「紛争予防機能」があります。

取引が高額化するものや複雑な取引、時間のかかる取引、
民法典型契約とは異なる契約の取引等の場合は、
紛争を予防するためにも契約書の作成が必要となります。

とはいえ、
ただ取引内容を契約書に記すだけでは、紛争予防になりません。

紛争予防を意識した契約書を作成するには、
様々なリスクと適切な効果を発揮する条項を定める3つのポイントがあります。

●民法条文に則る内容の場合
売買の目的物に瑕疵があった場合については、
民法570条と民法566条1項で定められている
「目的物に隠れた瑕疵があった場合、買主は損害賠償を請求できる」条文に則り、
「瑕疵」の内容を具体的に定義する条項を契約書内に記すことで、
瑕疵にあたるかどうかという紛争を抑止することができます。

また、買主が瑕疵を発見して通知する場合、
商法526条にある
「商人間の売買については、買主は、目的物を受容したときに遅滞なく検査し、
 瑕疵を発見した時はただちに売主に通知しなければ瑕疵担保責任を追及することはできない」
に則って記載しますが、この場合「遅滞なく」や「直ちに」をそのまま使うと、
時期が曖昧になり、紛争の原因となるので、「5日以内」「一週間以内」など、
具体的な期間を定める条項を置くことで、該当性を明確にできます。

●民法の条文と異なる処理をする内容の場合
例えば、不動産を借りるときの建物賃貸借契約の賃料について記す場合、
民法614条だと
「賃料は動産・建物および宅地について毎月末に支払わなければならない」
と定められていますが、
一般的には、毎月末日までに翌月分を支払うので、
「末日翌月払いに対しての合意」を契約書で定めておく必要があります。

また、民法534条1項2項にある「売買契約における危険負担」について、
条文では、
「受理主に帰責性のない目的物の滅失の危険は契約と同時に買主に移転する」
と記されていますが、
実際には、
「危険転移の時期は目的物の引渡し時」、
契約書に定めることが一般的と言われています。

●民法の条文にない事柄について規定する内容の場合
製造者→代理店→消費者という流れの商品販売ルートで契約書を作成する際、
「消費者から目的物の欠陥について賠償請求を受けた場合の対応について」
は民法の条文に記載されていません。

例えば、上記のようなケース場合消費者は、
製造者にも代理店にも、どちらにも損害賠償を請求することが可能で、
その多くは代理店に請求する傾向にあります。

そして以下のような問題が発生しても、
民法にはその答えが記されていないのです。

・代理店だけが賠償金を支払うのか
・代理店の判断で消費者に賠償を行ってから、製造者に賠償金額を支払うように請求できるか
・賠償金額を製造者から支払うように言えるのか
・対応に必要な詳細な商品情報はどこから入手したらよいのか

このようなケースの場合は、
買い手である消費者との間でおこわなれる「必要な手続き部分」を、
以下のように補填して定めると良いとされています。

・消費者からのクレームに対して、製造者と販売者は情報共有をして対応すること
・消費者からの商品の欠陥を理由とした損害賠償請求に対して、
販売者が応じた場合でも製造者がそれを補償すること

さららに紛争予防機能を持たせるためには、
重要な条項に際して、
あえて「民法規定と全く同一内容の条項を置く」と記す事も有効です。

民法の条項は揺るがないものですので、
たとえ「それに反する口頭の合意があった」と主張されても、
これを退くことが可能となります。

(3)立証機能
実際に契約に関して紛争となってしまった場合、
契約書は裁判において何よりも重要な「証拠」となります。

この、契約書の証拠価値に由来する機能を「立証機能」と言います。

・ポイントは「形式的証拠価値」
契約書の証拠価値は、
「形式的証拠価値」と「実質的証拠価値」の両方を満たすことで、効果が発揮します。

しかし、基本的には「形式的証拠価値」が認められれば、
よほどの事情がない限り「実質的証拠価値」も認められるので、
契約書を証拠とする際には、
形式定期証拠力として認められるかがポイントです。

・「形式的証拠価値」のポイントは署名と押印
契約書に形式的証拠価値があるかどうかの争点は、
「文書が作成者の意思に基づいて作成されているかどうか」です。

民事訴訟法228条の4では、
「本人又は代理人の署名または押印があれば推定される」
と記されている通り、
「本人又は代理人の署名または押印が自己の意思に基づいてなされたことが証明されれば、
 文書全体が真正に成立したことを推定する」
という解釈となります。

また判例では、
「作成名義人の印影が本人の印章によって顕出されたことが証明されれば、
 当該印影は本人の意思に基づいて顕出されたものであると」
推定されるとすると
「文書にされた押印の印影が本人のものであることが証明されれば、
 それは本人の意思によるものである」
と解釈されるのです。

要するに、作成名義人本人が、
本人のハンコで本人の意思でポンっと押したことが証明されれば、
文書全体が作成者の意思に基づいて作成・成立していると推定される、良い、
ということですね。

これを「二段の推定」と言います。

二段の推定は、署名又は印影のある白紙が他人に悪用された、
文書の記載が後日改ざんされていた、
署名押印者から委託された事項以外の事項が記入されたなどの事実がない限り、
破られることはないとされています。

この解説を見ても、
「契約書」の「押印」に対して、
かなり強い責任を求めているということになりますね。

 

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次回は「契約書作成での基本的なルール」について、解説します。
お付き合いありがとうございました。

いのりんでした♪

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【参考サイト】
FULL SUPPORT MEDIA
>>>契約書から生じる法的拘束力-契約の有する機能とは?

行政書士 東京中央法務オフィス
>>>契約書の効力・メリット
>>>契約の目的