【企業法務の基礎知識24若葉マークの入門編】 商標について⑦ 「商標のライセンス契約」における実務上の留意点について
お疲れ様です!いのりんです♪
毎年GWには田舎の祖父の家に行って、一日だけ田植えを手伝っていたのですが、
今年はSTAYHOMEで帰省できませんでした。
おじいちゃんの田んぼ、大丈夫かなーと悶々としたGWを過ごしたわけですけど、
近所の人達で、お互いの田んぼを手伝いってなんとか田植えを済ませたそうです。
いまの子供たちは田植えなんて経験する機会あるのかしら、なんて思っていたら、
最近では「バーチャル田植え」を体験できる施設があるとかでびっくり。
なんでも井関農機の松山製造所にある展示館では、
ICTを駆使したスマート農業を理解してもらうべく、
お米ができる工程をバーチャル体験できるコーナーが設置されたとのこと。
時代は進んでいますねー。
苗が浮かないように植えるの、コツがいるのですけど、
その辺もリアルに再現していたら楽しいな。
足に引っかかるタニシの感触とか、時々そよぐ風とか。
おっと、田舎の田んぼが恋しくなってこないうちに、
今日も商標についてお勉強しましょう!
まずはポイントのおさらいから!
【商標3つのポイント】
ポイント①商標と認められるには?
(1)事業者が使用するマークであること
(2)自己の商品・サービスと他人の商品・サービスを区別するために使用すること
ポイント②商標はマークだけを登録しているわけではない
「商標権」とは「マーク(商標)」+「使用する商品・サービス(役務)」のセットで登録される
ポイント③商標権を得ることによるメリット
(1)商標権を取得すると自分の商標として使用できる
(2)自分が登録した商標には指定標品・指定役務について独占することができるため、商標を無断使用された場合、もしくは類似した商標について使用の禁止を求められる
前回は、商標のライセンス契約につて、解説いたしました。
今回は、商標のライセンス契約における実務上の留意点について、説明いたします!
ライセンサーとライセンシーについて
まずは、実際に契約を交わす当事者である、
「ライセンサー」と「ライセンシー」について、見てみましょう!
●ライセンサーとライセンシーの違い
前提として、ライセンス契約は、
ライセンサーとライセンシーによって執り行われます。
「ライセンサー」とは商標権を保有する側を指し、
「ライセンシー」とは商標の使用権を獲得した側を指します。
●契約を交わす前に確認すること
契約を交わす前にまず大切な事は、ライセンシーとライセンサー、
それぞれが相手方の「適格」を確認することです。
ライセンシーが他の企業と商標権を共有していた場合、
共有者の同意を得なければライセンス契約ができません。
また、第三者に専用実施権を設定した後は、
設定行為で定めた範囲内において、
他の者に重ねてライセンス共有ができないため、
ライセンシーや共有者との間で、独占的ライセンス契約を承諾していないか、
第三者に担保設定等をしている事実がないかなどを協議が必要です。
また、ライセンシー側の方でも承諾を受ける会社の範囲が、
契約当事会社、親会社、子会社、関連会社のどの辺までを含むのかも検討します。
商標ライセンス契約締結までの流れ
では、商標ライセンスの契約締結までの流れを、見て参りましょう。
(1)商標の特定
使用承諾を得たい商標を特定します。
まだ商標登録されていない場合は、出願番号のみを特定します。
(2)ライセンス態様の確認
使用許諾を得るライセンスが、
「専用使用権」か、「独占的通常使用権」か、
「非独占的通常使用権」かを確認します。
これは、特に取決めなしに使用許諾を与えた商標を、
ライセンシーが、勝手に変更や削除、
商標の識別力に影響を与えてしまうような行動を起こすことを、
避けるために取り決めます。
・専用使用権…使用権を認められた者だけがその商標を使える契約であり、
商標権者であっても権利を設定した範囲内で使用できなくなる。
特許庁への登録が必要。
・通常使用権…他社への使用も重複して使用許諾が可能。特許庁への登録は不要
・独占的通常使用権…独占的に一社との契約で使用を認めるもの
・完全独占的通常使用権…商標権者も使用ができなくなる
(3)対象商品・サービスの内容・範囲をチェック
ライセンス態様を確認したら、対象商品・サービス内容・範囲をチェックします。
このとき「商標を使用して何を行えるのか」などの制限があれば、それも明示します。
ライセンシーが当該商標の他、自分の商標も使用できるのか、
使用できる場合は、どのような形が望ましいかなど、
商標についての細かい取り決めも必要です。
ライセンシー側が特に気を付けないと、
ライセンシー側の自分の商標と区別なく使用されてしまい、
当該商標の信用度にキズがついてしまう危険性もあります。
商標のブランドを守るためにも、
ライセンサーはライセンシーに当該商標を使用する場合、
ライセンスを受けたものであることを表示する義務を負わせることも可能ですので、
検討するべきとしています。
(4)品質保証約定
ライサンサー側は、
当該商標を付した製品の品質保証基準の約定を含めることにより、
ライセンシーが粗悪品を製造してしまうことを抑止する効果があります。
品質保証約定には以下のような例が挙げられます。
- 商品の品質基準の特定
- ライセンサーへの見本品の提出
- 検査対象方法の時期・原材料・部品購入先の指定
- 下請けの制限
- 立ち入り検査条項の設定
- 広告を作る際の原稿検査規定を設ける
(5)再実施権の検討
ライセンシー側にとっては、
グループ会社、子会社、販売代理店など、
ライセンシー以外の第三者を通じた使用が必要であれば、
再承諾権を付与する条項を導入することも検討してください
(6)ライセンス対価の支払いについて検討
ライセンス契約においてもっとも重要で、
慎重に取り決める必要がある項目が、
「ライセンス対価(ロイヤルティ)」についてです。
ロイヤルティの種類
代表的なロイヤルティには、以下のような種類があります。
・販売額ロイヤルティ…実務上、よく用いられているロイヤルティ。
販売製品価格に対する一定割合で決定される。
・対物ロイヤルティ…製造、使用などの実施行為の対象製品に対して適用されるロイヤルティ。
単位当たりの実施製品に対する固定額で決定される。
・定額ロイヤルティ…実施承諾の対価を一定額で決定する方法のロイヤルティ。
最低ロイヤルティの有無とその金額
売り上げに関わらず、最低限支払うべきロイヤルティの金額を定めるケースもあります。
この場合は、最低ロイヤルティの金額、適用時期などを取り決めます。
また、ライセンシー側は、体制実施料支払いの
免責事項を挿入するように努力する必要があります。
ロイヤルティの発生時期
ロイヤルティの発生時期があいまいだと、
後日トラブルになる確率が高くなるので、
どの時点でロイヤルティが発生するのかをきちんと決めておくことが重要です。
ロイヤルティの報告と支払い
ロイヤルティの支払い方法を明確にした上で、
ロイヤルティの報告に関して、記載内容、報告時期について検討します。
ライセンサーの帳簿閲覧と検査権
ライセンサーが検査権を保持する場合は、
契約中にその条項を入れなければなりません。
同時に、ライセンシー側に帳簿の備付義務も負わせます。
商標権が無効となった場合過去のまたは将来のロイヤルティの処理
過去に支払ったロイヤルティについて、不返還とする合意も可能となります。
(7)侵害者との関係
●当該商標が第三者の商標を侵害してしまった場合
当該商標が、第三者の有する商標権を侵害することが明らかとなってしまった場合、
ライセンシーのライセンサーに対する報告義務を課すことができます。
商標が使用不可能となった場合、
ロイヤルティの免除・減額・延期ができるかなどの旨の条項や、
解約権を行使できる条項も契約に含めることが可能です。
●第三者が当該商標を侵害した場合
当該商標を侵害する第三者を発見した場合は、
ライセンシーがライセンサーに対し、報告を行う義務を定める、
ライセンサーの侵害調査にライセンシーが協力するなどの義務を定めることができます。
また、第三者に対するライセンサーの権利行使の義務を定める場合は、
訴訟費用、弁護士費用の文体、取得した金銭の分配、
義務違反の場合の措置についても併せて検討します。
(8)●秘密保持
当該商標に特段の技術情報やノウハウがない場合でも、
当事者、役員、従業員、子会社、下請者、販売店、
原材料購入先などを含めて秘密保持の期間を検討する必要があります。
(9)契約の変更・更新・終了
契約期間満了時に終了する場合、
在庫品の処理をどうするか決めておかなければなりません。
また、不可抗力による履行不能の状態が生じた場合の措置も定めておきます。
中途解除の売は、解約事由の内容、解約権行使の方法、当該商標を付した在庫品の処分方法、
一時金の返還の有無に関しての取決めも重要です。
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ライセンス契約をしっかり取り決めておかないと、
もしもの時のトラブルの種となります。
そうならないためにも、
知識をしっかりつけて実務に活かすことがポイントです。
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ではでは。次回もお付き合いくださいませ。
いのりんでした♪
【参考サイト】
社長の商標登録
>>>実例から見る商標のライセンス契約(商標使用承諾契約)の概要と注意点
弁護士法人クラフトマン
>>>商標ライセンス契約における留意事項~解説商標法
商標登録ファーム
>>>商標使用許諾契約