<改正民法2020③> 改正民法の新ルール”定型約款”について解説
「平成の大改正」とも言われた今回の改正民法の目玉の一つが、「定型約款」という新ルールの整備です。「ネット社会に対応した消費者保護に重点を置いたルール」と言われている定型約款。パソコンやスマートフォンを手放せない生活を送っている人なら、誰しも一度はネット上で「利用規約」などの「約款」に対しての「同意する」という選択肢を目にしたことがあると思います。新しい時代のために制定された「定型約款」は、どのようなルールなのでしょうか?定型約款の意味と定型約款の変更方法などについて、まとめてみました。
「約款」と「定型約款」の定義について
まずは、「約款」についての解説と「定型約款」の定義について、見てみましょう。
「約款」がルール化される背景
そもそも、120年前に現行民法が制定されたときには、「約款」という規定は存在しませんでした。「約款」とは、電気、ガス、保険などの契約やネット通販取引など、大量の同種取引を効率よく実施するために作成された取引条項を指します。「約款」のなかった120年前と社会情勢は大きく変わり、大量の同種取引、商品販売、サービスの提供をトラブルなく効率よく実施する必要性が出てきたため、今回の改正でのルール規定となったのです。
●定型約款の定義
改正民法第548条の2第1項の定めるところによると、「定型約款の定義」とは「不特定多数の者を相手方とする取引で、内容の全部または一部が画一的であることが、当事者双方によって合理的なもの」を、「定型取引」と規定しています。そして、「定型取引の契約内容とすることを目的に、特定の者によって用意された条項の総体を「定型約款」と定義する」と記しています。つまり、「定型取引」をするための「約款」が、「定型約款」と呼ばれることとなるのです。
定型約款に「あたるもの」と「あたらないもの」
では、具体的に「定型約款」に「あたるもの」と「あたらないもの」を、身近なもので分類してみましょう。
●定型約款にあたるとされるもの
・電気共有約款
・保険約款
・鉄道などの旅客輸送約款
・普通預金規定
・インターネットの利用規約
●定型約款にあたらないとされるもの
・就業規則
・労働契約書
・事業間取引契約書のひな型
定型約款に「あたるとされるもの」は、身近な生活に関わるものが多く、主にネット上の通販や契約での取引という特徴があります。
定型約款の「みなし合意」とは
「定型約款」には、「みなし合意」があります。改正民法(第548条2第1項)によると、顧客が定型約款にどのような条項が含まれているのか認識していなくても、以下の条件満たせば、「個別の条項について合意したもの」とみなされます。
①当事者の間で定型約款を契約する内容とする旨の合意をしたとき
②定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ顧客に「表示」して取引を行ったとき
要するに、企業側から提示した定型約款に対して、全部読んでない、内容を把握していないような状態でも「合意」をしてしまったら、それは「合意した」とみなされてしまう、ということになります。しかし、改正民法第548条の2第2項によると「定型約款の個別の条項のうち、相手方の権利を制限し、相手方の義務を手加重する条項であって、当該定型取引の態様・その実情、取引上の社会通念に照らして、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認めあれるもの」については、定型約款がみなし合意の要件を満たしていても、合意しなかったものとみなされると記されています。
定型約款を変更する場合はどうする?
定型約款の変更について、企業とユーザーはどう対応したらよいでしょうか?下記にポイントをまとめました。
●定型約款は変更できるのか?
定型約款は、大量のユーザーを相手にするためのものです。企業側で変更や修正があった場合は、大量のユーザーから個別に同意を得るのは、非常に困難となります。そこで改正民法では、企業側が一方的に定型約款を変更できるようになっています。
一方的に、とはいえ、企業に有利な変更を無制限に認めるわけではなく、ユーザー保護の観点も重視されており、改正民法第548条の4では、「事業者からの一方的な変更を認める必要性と、ユーザーを保護するバランスを図ため」に、「条件」を定めた上で、一方的変更を認めています。
●定型約款を変更するための条文
定型約款を変更するための条文は、以下のとおりです。
【改正民法第548条の4(定型約款の変更)】
定型約款準備者は、次に掲げる場合には定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意することなく契約の内容を変更することができる
一 定型約款の変更が相手方の一般利益に適合するとき
二 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定め有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。
2 定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、この効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない。時期をインターネットの利用その他の適性な方法により周知しなければならない。
3 第一項第二号の規定に定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来するまでに同行の規定による周知しなければその効力を生じない。
4 第548条の2第2項の規定は、第一項の規定による定型約款の変更については適用しない
●定型約款変更のための2つポイント
上記条文をまとめると、「定型約款」を変更するためには、2つのポイントが見えてきます。
(1)定型約款の変更が顧客の一般の利益に適合する場合
(2)定型約款の変更が契約の目的に反せず、変更に係る諸事情に照らして合理的な場合に限る
定型約款を変更する際、企業側はあくまでもユーザーの利益に適合するかを考慮に入れ、変更が必ずしもユーザーの利益にならない場合は、事前にネット上で周知をする必要があります。定型約款について改正民法で明文化されたことにより、例えば、約款の中で「当社の都合で変更することがあります」と記載されていても、第548条の条件を満たした上での変更となるため、「一方的」ではあっても「好き勝手」に定型約款の変更をすることはできなくなります。
もっと詳しく定型約款を知るにはセミナーで
定型約款の変更は、これからさらに活性化するインターネット取引において、企業側にとってもユーザーにとっても非常に重要な項目となります。定型約款に関するポイントは、セミナーを受講して対策することをお薦めします。
知らずにルール違反となる前に、改正民法や定型約款を学んで、2020年4月からの改正民法施行に備えましょう。
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【参照情報】
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弁護士法人アルテ
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SATORIA法律事務所
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