<改正民法2020①> 民法はどう変わる?その目的と概要について
「市民相互の財産や身分を規律する私法の一般法」と定義されている民法は、私たちの日常生活に関わる身近な法律です。この民法が、2020年4月に「大改正」と呼ばれる大幅なルール改正を実施します。2017年5月に国会で成立した改正案で、民法はどのように変わるのでしょうか?改正民法の目的とその概要について、まとめてみました。
「民法」が改正される理由
現行の民法が制定されたのは、1894年(明治27年)です。明治時代に制定されてから現代まで、民法は「経済的な側面を規律する部分」に関して、大幅な改定が実施されませんでした。民法は原則、人々の社会生活や事業などの原則的なルールを定めているものですが、120年以上前の社会と現代社会の間で整合性がとれなくなってきている部分が多くなり、複雑化した社会システムや、多様化した暮らしに合わせるべく、今回の大改正となった運びです。
「民法」のどの部分が改正されるのか
今回の改正は、民法のどの部分に焦点を当てたのでしょうか?民法は、基本このような構図となっています。
●民法を構成する5編
「総則」…民法全体に共通する規定
「物権」…特定の物に対する直接的・排他的な支配権に関する規定
「債権」…私人間の財産や物などの取引に関する規定
「親族」…養子縁組などの血縁に関する規定
「相続」…遺産相続などの相続に関する規定
今回の改正民法では、この中の「総則」と「債権」について、改正が実施されています。
●改正民法4つのポイントについて
改正民法の狙いは、「国民生活に関わる民法をわかりやすくする」という点にあります。わかりやすい民法とするために、以下の4つのポイントが挙げられています。
(1)判例の明文化
(2)用語の平易化
(3)社会経済変化への対応
(4)国際的取引ルールとの整合性
これまで「120年前に定められたルールと、現代社会のルールとして実情に合わない部分」「民法に明記されていないが、暗黙化していたルールなどについては、有力な判例をもって取引を規律する、特別法などを制定してカバーする」など、民法学者や法曹実務家の解釈で補うなどをして来ましたが、今回の改正により、存在しなかったルールが明文化され、現代に適応するような法律へと変わりました。
改正民法で「変わること」とは?
改正民法では、実務上どのような変更点があるのでしょうか?改正民法で変更となる、以下の5つの項目について解説いたします。
●「定型約款」の新設(改正法548条の2~548条の4)
「定型約款」とは、不特定多数の人間を相手にする取引において、あらかじめ「画一的で同一内容のものとして取り決められている条項」のことです。インターネットでの取引が増えた現代では、会員登録する際や、売買取引をする際、保険の契約をする際など、画面上で約款を目にする機会が増えていることと思います。この定型約款を利用した取引を「定型取引」と言います。
現行民法では、約款に関しての明確なルールがなかったため、「合意はしているけど約款が長すぎて全部読めなかったが合意できない部分もある」という人に対して、ルール違反とすることができず、トラブルの元となっていました。
改正民法では、「相手が不特定多数である場合」「画一的な取引であるほうが合理的である場合」に限定して、「定型約款」を結ぶことができるように制定されました。定型約款を利用すると「契約者はすべての条項に合意したものとみなす」ことになるため、約款を読んだ、読まないによるトラブルの回避が期待されます。
●「保証人制度」の見直し(改正法465条の2~465条の10)
「保証人制度」とは、債務者の保証人となり、債務者が債務を履行できない場合に債務者の代わりに債務を履行する制度のことですが、親族や知り合いに頼み込まれて事業や借金の保証人となり、債務者が返済に窮した時に、ある日突然保証人が多額の履行を求められ、破産に追い込まれるケースは昔から後を絶ちません。
改正民法では、保証人問題を未然に防ぐために、保証人制度の見直しをしました。債務者は、保証人と保証契約を結ぶ際に、保証人本人立ち合いのものと、保証人の債務履行意思を確認する公正証書の作成や、保証人の権利拡大の一環として債権者の財産や債務の金額などの情報提供義務を課すなど、保証人が窮地に陥らないためのルールを定めました。保証人を立てる際の手続きが面倒になりますが、昔から続く保証人トラブルは減少するのでは、と期待されています。
●「法定利率」を変動制に(改正法404条)
金銭の貸借の際、借主は貸主に利子をつけて、借金を返済します。当事者間で利率について合意していない場合や、法律の規定に基づいて発生する法定利息の利率については、「法定利率」が適用されます。現行法では、法定利率は5%とされてきましたが、経済情勢が変動すると市場金利も変動するため、5%では高すぎる時期や、逆に低すぎる時期など同じ5%でも状況によって違ってくることが、問題とされてきました。そこで改正民法では、固定式の法定利率を廃止し、3年ごとに変更する「変動制」が、採用されることとなりました。まずは、年3%からスタートするとのことです。
●「時効制度」の変更(改正法166条1項~2号)
債権には、時効があります。現行法では、債権の消滅時期について、飲食店の代金は1年、弁護士費用は2年など、業種ごとにバラバラで統一されていませんでした。改正民法では、債権の消滅時期についての統一が図られ、「債権を行使することができると知った時(主観的起算点)から5年、権利を行使することができる時(客観的起算点)から10年」となりました。ただし、不法行為による損害賠償請求権については現行法のままで、原則として主観的起算点から3年、客観的起算点から20年です。また、債務の不履行、不法行為関係なしに「生命、身体への侵害による損害賠償請求権についてはその法益の重要性にかんがみ、一般の時効期間より長く、主観的起算点から5年、客観的起算点から20年」とする特則が設けられています。(改正法167条 724条の2)
●「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へ(改正法562条~264条、559条)
「瑕疵担保責任」とは、売買されたものに買主が知らなかった欠陥や不具合(隠れた瑕疵)が見つかった場合、売主が負う責任を指します。現行民法では、どこまで「瑕疵」に含まれるか曖昧で、例えば、中古の建物やパソコンなど、個性に着目した「特定物」を購入した後に、不具合が見つかった場合において解除、損害賠償、修理、交換、など、買主が何をどこまで請求できるか不明確なところがあり、規定相互のバランスに欠けていると、指摘されていました。
改正民法では、「瑕疵担保責任」が廃止され、「契約不適合責任」という言葉に代わります。契約に適合しないものを売り渡した売主側に責任がある、という考えで、買主に過失がある場合でも追及できます。しかし、売主側に過失が認められない場合、責任は追及されません。また、売主への責任追及の方法としては、すでに現行法で「契約の解除」「損害賠償請求」がありますが、それに加え、「履行の追完請求」「代金減額請求」をすることも可能となりました。
「改正民法」のポイントはセミナーで抑えよう
改正民法は、2020年4月から施行されます。保険業界や金融業界、不動産業界などでは契約や売買などに影響するため、すぐに対応できる体制づくりが必須となります。まだ、改正民法の準備ができていない、これから対応をする場合は、セミナーに参加をして、改正民法のポイントを抑えましょう。現行法との違い、施行後にどうかわるかなど、知識が豊富な講師から直接教わることで、すぐに役立つ情報が学べるので、お薦めです。ぜひ、活用してみてください。
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【参照情報】
ソムリエ
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