<改正民法2020②> 改正民法施行前に企業が対応しておくこと

2020年4月からの施行される改正民法では、これまではっきりしていなかった通説の明文化、ルールの変更などが、実施されています。改正民法施行にあたり、企業でもそれぞれの事業にあった契約条項の見直しや、契約書の修正などの対応が必要です。実際には、どのような対応が必要なのでしょうか?ポイントをまとめてみました。

 

改正民法前に備える3つのポイント

改正民法に対応する前に、まず「改正民法に備えるため」に役立つ3つのポイントをご紹介します。

(1)改正内容を把握しておく
まず重要なのは、「改正内容の把握」です。「改正民法」で、何がどのように変わったのかを把握しなければ、対応もできません。今回、約120年ぶりといわれる改正が実施されたのは、取引の複雑高度化や情報化社会の進展など、めまぐるしく変動する社会情勢に対し、日々の暮らしを支える民法が「時代遅れとならないため」と、民法の条文にない解釈論や判例で実施していた民法のルールを明文化し「国民に広く理解してもらうため」という理由が、挙げられています。「時代遅れにならないため」の改正は、「法定利率の変動制導入、職業別短期消滅時効の廃止、保証人の保護を図るための規定の整備」が該当し、「国民に広く理解してもらうため」の改正は、「将来発生する債権の譲渡・担保設定が可能であるの明記、賃貸借終了時の敷金返還請求権や原状回復義務に関するルールの明文化」の改定などが該当します。改正民法が施行される前に、これらの改正内容を正しく認識することが大切です。

(2)業務に必要な項目を洗い出す
次のポイントは、「事業に必要な項目を洗い出す」ことです。改正民法に対応するにも、自社の事業とかけ離れたことをするのでは、全く意味がありません。実務に影響の出そうな項目といえば、例えば、改正民法458条2などに記されている「保証人保護のために新設された保証人に対する情報提供義務」や、改正民法466条2項にある「譲渡制限特約付債権の譲渡」、改正民法で新たに新設された「定型約款制度」などが挙げられます。自社業務の中に、該当する項目があるかを洗い出し、ピックアップしておくのも、改正民法前の大切な作業です。

(3)契約書や約款に修正が必要かを検討する
改正民法の内容を把握し、事業に必要な項目を洗い出したら、次は実務上で契約書や約款に修正などが必要かを検討します。

・強制法規の場合
「強制法規」とは、「改正民法のルールに従わなければいけないもの」です。例えば、改正民法465条の2にある「不動産賃貸借契約上の一切の債務を個人が保証して保証する場合について、極度額を定めなければ無効となる」は強制法規に含まれ、改正民法施行後に、上記のような保証契約を締結する場合は、改正民法に則った内容への修正が必要となります。

・任意法規の場合
「任意法規」は、「民法と異なる合意をしても問題のないもの」を指します。民法の多くは、上記で記した「強制法規」よりも「任意法規」のものが多く、改正法と異なる内容が契約書に規定している場合でも、必ず変更しなければならない、ということにはなりません。しかし、その判別にはあらゆる視点からの解釈も必要となるため、任意法規だから変更しなくてよい、ということではなく、専門家などにも相談し、一つ一つの項目に対して慎重に対応する必要があります。

 

「瑕疵担保責任」(民法570条)から「契約不適合責任」(改正民法562条など参照)への変更例

改正民法に向けた実務の例として、「瑕疵担保責任」(民法570条)から「契約不適合責任」(改正民法562条など参照)の対応についてご紹介します。

(1)「契約の内容」を明確化する
改正民法では、現行法で定められてる「瑕疵担保責任」が廃止となり、「契約不適合責任」が新たに規定されます。契約書を修正する場合は、適合すべき「契約の内容」を明確にして、契約上要求される「数量」「種類」「品質」なども、明確化する必要があります。改めて契約書に記載することが困難である場合は、別紙仕様書などを作成しての対応が可能です。

(2)「瑕疵」の概念から「契約不適合」の概念へとチェンジする
改正民法が施行された後は、「瑕疵」の概念から「契約不適合」の概念へと、チェンジする必要があります。長いこと当たり前に使用され、契約書のひな型などでも用いていられている「瑕疵」は、改正民法上で使用が禁止されているわけではありません。しかし、「瑕疵」と「契約不適合」の言葉を同じフィールドで利用し続けると、解釈の違いや咀嚼の仕方によっては、実務上統一的な処理が難しくなると想定されることから、改正民法後は「契約不適合」の概念を優先とし、不用意に「瑕疵」を使用しないような配慮が必要です。

(3)売主による「履行の追完の選択権の排除」について
「契約内容の不適合」では、目的物が契約内容に適合しない場合、買主は売主に対して、履行の追完を請求することができますが、他方で、売主は買主に不相当な負担を課さない場合は、買主が請求した方法とは異なる方法で、追完(目的物の補修、代替え物の引き渡し、又は不足分の引き渡し)ができることとなっていると、改正民法562条1項で定められています。買主と売主との間で、追完方法に相違ができることを防ぐためには、売主による追完方法の選択権を排除する、などの方法があります。その場合、契約書には以下のような文言を追加します。

【契約不適合責任】
第〇条
1.買主は種類、品質又は数量に関して、商品に本契約の内容に適合しない状態がある場合(以下「契約不適合」という)買主の指定した方法による追完請求をすることができる。

(4)買主による「代金減額請求権実施前の追完請求の排除」について
買主に引き渡された目的物が契約内容に適合しない場合で、例えば、売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示した場合などを除いては、買主はまず売主に対して相当の期間を定めて履行の追完(目的物の補修、代替え物の引き渡し、又は不足分の引き渡し)を請求し、期間内に履行の追完がなされなかった場合に初めて代金減額請求をすることができると、改正民法563条1項に記されています。買主側の事情によっては、目的物の修復よりも、修理代金に相当する金額を代金から減額してくれればそれでいい、という事例もあります。そのようなケースも踏まえ、契約書などには以下のような文言を追加します。

【契約不適合責任】
第〇状
1.(上記の通り)
2.買主は前提に規定する場合において、前項の追完請求を行うことなく、自らの選択により売買代金の減額請求をすることができる

 

契約書の修正・改定などはいつ実施するのか?

改正民法の規定では、原則として「施行日の後に締結された契約や施行日後に発生した債権に限って適用され、現行法下ですでに締結している契約には引き続き現行法が適用」されることになっています。現在締結済の契約書については、必ずしも、改正民法に沿ったものに変更しなければならない、という義務はありません。ただし、契約が期間満了で、自動更新される場合、更新後の契約は改正民法に合わせる必要があります。自社で現在使用している契約書のフォーマットや、代表的な契約類型を使用している場合は、施行日に合わせて修正・変更して、改正民法後に締結予定の契約書や、期日満了前の契約書の更新に対応できるよう準備します。

 

改正民法で見直す前にセミナーを受講しよう!

改正民法で業務や契約書を見直す前に、セミナーを受講し情報を整理しておくと、作業効率がアップします。施行後に準備が必要なものや、条文の解釈など、予め知識を取り込んでおくと、いざというときスムーズに対応が可能だからです。基本的な改正民法の解説から実務、その応用まで、今、必要なセミナーを探して改正民法に備えましょう。

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【参考サイト】
aMidAs Partners
>>>改正民法の施行に向けて準備しておくべき事項

新日本法規
>>>【新債権法対応】契約実務における3つの失敗例

弁護士法人 クレア法律事務所
>>>改正民法が一部の規定を除き2020年4月1日に施行されます契約書を作成するうえで留意点はあるのでしょうか?

麹町の弁護士による企業法律相談
>>>民法改正に対応した売買契約書作成にあたり注意すべき点