<「持続可能な森林管理」を目指す森林認証制度【4】> 日本独自の森林認証制度「SGEC」の「7つの基準」とPEFCとの関係
森林破壊や環境問題は世界の共通問題ですが、日本の林業界はそれ以外に「市場の縮小と後継者不足」にも長年悩まされ続けました。しかし、高性能重機やICTの導入による林業のスマート化や、地域と連携しての六次産業化により就業者が増えはじめ、日本の林業界も世界市場での展開を視野に入れはじめています。日本の木材製品が世界に通じるようにするため、そして、日本の森林の自然的、社会的条件を踏まえ、持続可能な森林経営の実現を目指すためにSGECは生まれました。ここでは、日本独自の森林認証制度「SGEC」の概要と、SGEC認証を満たすための7つの基準、そしてPEFCとの関係について説明します。
SGECとは?
SGECは、「Programme for The Endorsement of Counil」の略で、「緑の循環認証会議」の意味を持ちます。その目的はSGEC定款第3条にて、「我が国において持続可能な森林経営を広く普及するとともに、そこで産出される木材等の有効な利用を推進し、森林整備水準の向上及び林業の活性化等を通して、循環を記帳とするうるおいのある社会の構築と緑豊かな自然環境の保全に資すること」と、定めています。世界各国が本腰を入れて環境問題に取組む「環境新時代」を迎えるにあたり、日本の林業界も世界を視野に入れた「持続可能な取組み」へと舵を取る必要がありました。国内林業と木材産業の持続可能な森林経営を実現するため、2003年に日本独自の森林管理認証制度であるSGECを策定し、世界の森林管理認証であるPEFCの相互認証を目指したのです。SGECの発足当時は、森林・林業・木材産業業界に関連する諸団体、NPOなどの非営利団体、市民団体などから創設発起人を募り、国内認証制度としてのスタートでした。その後、ステークホルダーの意見を聴きながら修正・改正を繰り返し、2011年に国際認証へ向けての次のステップとして「日本国内森林・林業の振興による森林整備水準の向上に資する事を前提に、国際森林認証制度との相互認証について検討され、2014年にPEFCへ加盟し2016年に相互認証されました。SGEC認証面積は、2016年現在で約150万haです。
SGECとPEFCの相互認証について
PEFCは、ヨーロッパ諸国を中心に設立された世界規模の森林認証制度です。PEFCのCoC認証は、「持続可能な森林管理の実現を目標に、林産品の供給チェーンに関わりを持つ企業・団体・消費者など全てのステークホルダーを参画して機能することが特徴で、PEFCとの相互認証が叶えば、SGECも「国際的な森林認証制度の一員」として認知され、国内はもとより、海外を含めた、国際的な認証材供給ネットワーク(サプライチェーン)を構築することが可能となります。2014年にPEFCへ加盟したSGECは、まだ相互認証には至っていませんでしたが、2015年3月に相互認証を申請し、約1年半の審議と審査を経て2016年6月に相互認証が認められました。
SGEC認証制度の「モントリオール・プロセス4つの原則」と「SGEC-FM認証規格7つの基準」について
SGECでは、PEFCとの相互認証の下で「SGEC-FM基準」としてモントリオール・プロセスを基本にした「モントリオール・プロセス4つの原則」と「SGEC-FM認証規格7つの基準」を設けています。
【モントリオール・プロセスによるSGEC「4つの原則」】
「モントリオール・プロセス」とは、1992年開催の地球サミットにおいて採択されたアジェンダ21を受けて森林経営の持続可能性を客観的に把握し、評価するための科学的に信頼できる「基準・指針」として作成された国際的な取組みの一つで、カナダのモントリオールで定められました。日本、アメリカ、ロシアなど環太平洋地域の12か国が参加しています。モントリオール・プロセスによるSGEC「4つの原則」は、以下の通りです。
(1)持続可能な森林の経営
①モントリオール・プロセスを基本として自然的、社会的立地に即した持続可能な森林経営の実現
②生物多様性及び環境の保全への貢献と経済合理性及び社会的利益を実現する森林管理の推進
③認証森林からの安定的、継続的な木材¥木製及び非木製品の供給
(2)認証制度の信頼性
①独立性・透明性を確保するための認証規格の規定・運営に関する手順
②森林所有者、林業、木材産業関係者、地元住民並びに環境や社会問題に関心を抱く組織など幅広いステークホルダー(利害関係者)の団体が参画できる仕組みの採用
③利害関係者から独立した第三者機関(認証機関)による認証の実施
(3)認証制度の説明責任
独立した第三者機関(認証機関)による定期的な審査により、認証森林からの木材生産から最終木材・木製品製造・販売に至るまで一貫した分別管理のもとで、認証木材・木製品等の生産及びそのトレザビリティーについて市民・消費者に対する証明責務の履行
(4)認証制度の適応性・多様性
①小規模森林所有者・管理者、小規模製材工場から大規模森林所有者・管理者、大規模製造(製材、合板、集成材、製紙等)・販売企業、及び国公有林を含む多様な事業体の積極的な参画を促進する仕組み
②森林タイプ、森林文化財、森林の所有構造や経営目的など多様な森林を認証対象として包含することを可能とする仕組みの保持
【SGEC-FM認証規格7つの基準】
7つの基準は「モントリオール・プロセス」を基本に、日本の森林の自然的・社会的地位に即して、持続可能な森林経営を実現するための、国際性を持った基準のことです。SGECが定めた7つの基準をご紹介します。
(基準1)認証対象森林の明示及びその管理方法の確定
森林を適正に管理するためには、「森林を所有する権利」や「利用する権利」が明確にされ、森林の管理状態が帳簿類で整理されていなければならない。森林管理に当たってはその方針と計画が確定され、あれにその方針と計画について定期的な見直しが行われ常に森林の管理レベルの向上が図られるよう努めなければならない。
(基準2)生物多様性の保全
森林を管理する上で、「森林の豊かさ」を保つことは大切で、「森林の豊かさ」の指標となる多様な生物群が共存できる森林生態系が保全されなければならない。森林の中に生息する生物種は動植物から微生物に至るまでお互い関係し合って生息しており、生物種に応じた森林の取扱いが行わななければならない。また貴重な種が生息する場合には特別な配慮を行わなければならない。
(基準3)土壌及び水資源の保全と維持
森林がもたらす恵みの中で、水資源の供給と土砂の流出防止は重要である。特に、森林は水源を守り正常な飲み水をつくり海をも豊かにする。このような森林の恵みが保持されるように、伐採や林地開発など森林の利用にあたっては十分に注意が払われなければならない。
(基準4)森林生態系の生産力及び健全性の維持
森林からえら得る多様な機能や資源が長期的に安定して享受されるためには、伐採、更新、保管、間伐などが注意深く行わなければならない。また、病害虫や山火事などの森林災害に対しては、対策が常備されていなければならない。
(基準5)持続的森林経営のための法的、制度的枠組
森林管理の実行に当たっては、森林生態系の保護・保全や森林に関連する権利、健康、労働・安全・衛生及び等森林管理に係る国内法はもとより、国際条約等を遵守されなければならない。また、地域社会や先住民族(アイヌ民族)の伝統的、文化的、慣習的な権利等な村長されなければならない。
(基準6)社会・経済的便益の維持・増進及び地球温暖化防止への寄与
森林が緑の循環資源としての役割を果たし、産出される認証林産物が、様々な用途に有効に活用され、地域雇用の拡大や地域経済の振興に資するように努めなければならない。また、森林がレクレーションなど市民に自然に触れ合う機会・場所を提供するとともに、入山者に対する環境教育、安全などの指導及び対策が整備されるよう努めなければならない。更に、森林の管理・整備・利用が地球温暖化防止に寄与する二酸化炭素の吸収・固定源として貢献できるよう努めなければならない
(基準7)モニタリングと情報公開
森林の状況は絶えず変化しており、また森林管理計画の実行の状況についてその影響を評価するために、モニタリングを定期的に実施し、その結果について公表されそれぞれの地域の情報として共有されるとともに、森林の管理方針・計画の実行及び改定に反映させなければならない。
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【参照情報】
一般社団法人緑の循環認証会議(SGEC)
>>>SGEC認証制度
>>>SGECの歴史
>>>SGEC認証について
>>>SGEC7つの基準