<災害大国をどう乗り切る?「企業防災」について2> 企業防災を実施するときのポイントと災害時の労災について
連続する大型台風、局地的な集中豪雨、想定外の豪雪など、いざ自然災害が発生した時、企業防災のノウハウをすぐに役立てる体制を整えておくことが、災害大国を乗り越えるポイントです。企業防災では、まず何を実施したらよいのでしょうか。実施のポイントと災害時の労災などについて、ご説明します。
企業防災で重要な「3つの対策」とは?
災害が発生した時、企業は従業員、顧客、取引先、施設など、「守るべきもの」がたくさんあります。企業防災に取り組むにあたり、優先して実施すべき「3つの対策」をご紹介します。
・データ保護の対策
災害による企業の損失のひとつに、データの損失が挙げられます。企業では、通常業務に必要なデータや、顧客の個人情報データ、取引先のデータなどを取扱っています。津波や水害によるパソコンの浸水、地震でパソコンの上に物が落下する、パソコンが床に落下するなどの衝撃を受けると、データが失われるリスクが考えられます。
また、突然の停電などでも、パソコンのデータが消失したという報告もあります。失ったデータの復旧は容易ではなく、企業の損失は計り知れないものとなります。データの消失を防ぐためには、ビジネス向けのクラウドサービスを利用し、保存データをバックアップしておくことが必要です。その際は、セキュリティがしっかりとしたクラウドサービスを選ぶことはもちろん、データの復旧に関しても、速やかに実施できる配慮がされているかもチェックしてください。データを復旧する時には、最新データであることが望ましいので、保存データは常に最新データであることもポイントです。
・設備への対策
災害により、社屋だけでなく、地方の工場や関連施設も被災するケースがあります。2011年の東日本大震災の際に、多くの企業で耐震年数調査や耐震工事などを実施していましたが、水害や土砂災害、突然の停電などにも対応できるような対策をしておくことが重要です。例えば、工場設備が浸水や土砂災害などによって被災し、修理に部品が必要となった際、部品を調達できず復旧が遅れるケースや、防水対策や、防風対策をとっていなかったために、工場の汚水が近隣の田畑に広まってしまった、施設のフェンスが民家を破壊したなど、近隣地域に損害を与えることも少なくありません。想定外の災害が多発している中、あらゆる事態を想定しての設備チェックをし、必要ならば対策しておくと良いでしょう。
また、大規模停電をはじめ、ガス、水道、道路寸断などライフラインへ被災も想定されます。製造業などでは工場の稼働がストップしてしまうため、万が一操業が止まった時に備えて、振り替え操業や、他社との連携を視野に入れた事前対策などを講じておく必要があります。振り替えや連携が難しい場合は、損保会社や行政などに相談して、万が一の際の情報収集をしておくとベストです。
・従業員を守るための対策
企業にとって、従業員を守ることは最大の義務となります。「災害時にどう動くか」を理解しておくと、いざという時にスムーズな行動が可能です。そのためには、定期的な防災訓練実施、社内での災害時行動マニュアルの作成などで、従業員の防災意識を高めておくことがポイントです。
従業員が帰宅困難な状況を想定して、水、食料、毛布などの備蓄も整えておきましょう。首都圏をはじめ、企業が集中する都市部では、「帰宅困難者条例」が制定されているところもあります。その場合は、同じ帰宅困難者や被災した人や近隣地域の人々にも備蓄の配布や、施設の開放などで対応しましょう。
災害時の役割分担を決めること
災害が発生した場合、社内での役割分担を決めておくと、社内での防災意識引上げに役立ちます。以下のように班分けし、災害時だけでなく、通常時でも何らかの動きを持たせておくことがポイントです。
【総務班】
・日常での役割
全体調整/他機関との連絡調整/避難行動要支援者の把握
・災害時の役割
全体調整/他機関との連絡調整/被害・避難状況の全体把握(避難行動要支援者の避難状況等)
【情報班】
・日常での役割
情報の収集・伝達/広報活動
・災害時の役割
状況把握/報告活動
【消火班】
・日常の役割
器具点検/防火広報
・災害時の役割
初期消火活動
【救出・救護班】
・日常の役割
資機材調達・整備
・災害時の役割
負傷者等の救出/救護活動
【避難誘導班】
・日常の役割
避難路(所)・標識点検
・災害時の役割
住民の避難誘導活動
【給食・給水班】
・日常の役割
器具の点検
・災害時の役割
水・食料等の配分/炊き出しなどの給食・給水活動
班編成をする際のポイントは、班長を決め、班構成員一人ひとりの役割を明確にしておくことです。班の構成員は、男女混合とすることで、行き届いたきめ細かい対応をすることができます。この班編成は、消防庁のマニュアルからの例ですが、企業の業種などに合わせての班編成もおすすめです。
自然災害では「労災」が下りない?
台風のさなかに出勤をし、風に煽られて転倒してケガをした場合や、飛来物にぶつかってケガをした場合、労災は下りるのでしょうか?
答えは「No」です。
「労災」とは、従事している仕事に関連して労災に遭う「業務起因性」の労災と、仕事中に労災に遭う「業務遂行性」の労災があります。上記のような台風が原因でケガをした場合、後者の「業務遂行性」に相当しそうですが、以下の通達により、「業務遂行性」であっても労災とは認められません
【通達】
暴風雨等の天災地変は「それ自体としては業務と無関係な自然現象」で、労働者は事業主の支配下にあるか否かに関係なく危険にさらされます。ですから「たとえ業務遂行中に発生したものであっても、一般的には業務起因性は認められない」(昭和49.10.25基収第2950号)
同じような理由で、通勤途中に台風や自然災害由来のケガをした場合でも、労災とは認められません。ただし、その土地が潜在的に自然災害や天変地異に巻き込まれやすい土地である場合は、通勤災害が認められる場合があるとの事ですので、気になる場合は社労士などに相談してみると良いでしょう。
自然災害は「いつ」「どこで」発生するのか想定できない分、「防災対策はいつでもできる」と先延ばしにしてしまう傾向が多くみられます。災害は「どこかで起ること」ではなく、「明日にでも巻き込まれること」と考え、すぐに動けるようにしておくことが重要です。企業を守るためにも、防災や災害リスク関連のセミナーを受講することをおすすめします。
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【参照情報】
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