<コロナ禍を乗り切る!企業のための新型コロナウイルス対策【9】> 新型コロナウイルスの影響下で開催される株主総会での想定質問対策について

新型コロナウイルス感染症の影響で緊急事態宣言が発令されている状況でも、現行法に則り、企業は株主総会を開催しなければならない状況下にあります。国難レベルでの非常時の最中に開催される株主総会では、どんな業種の企業であっても例年通りとはいかず、株主総会の中での質問も、新型コロナウイルスによる事業の影響や企業の感染予防対策などに集中すると想定されます。例年とは全く違う状況下において、どのような想定質問対策を講じたら良いのでしょうか?その傾向と対策をまとめてみました。

 

新型コロナウイルス影響下での想定質問作成のポイント

新型コロナウイルス感染拡大の中、日本経済は悪化傾向にある、ということは誰もが想像しうることです。株主総会では、まず新型コロナウイルス感染症の影響下で事業活動や事業の影響はどうなるのか、悪化傾向にあるなら、ダメージコントロールなど、どのような対策をとるのか、または取ろうとしているのかなどを問われる可能性が非常に高いと想定されます。新型コロナウイルスに関しての対策は現在進行形で行われているので、実務上でどのような対策を講じていたかを洗い出し、想定質問の回答を作成します。大企業の場合は、新型コロナウイルスの影響が内外の株主・投資家からも広く関心が寄せられており、取引所からは企業の事業活動、経営成績に与える影響に関しても、適時適切な開示が要請されるので、企業側は株主総会当日までにどのような方法が開示済であるかを確認しておく必要もあります。

 

新型コロナウイルス影響下での株主総会での想定される質問の傾向

では実際に、新型コロナウイルス影響かで開催される株主総会では、どのような質問が想定されるのでしょうか。質問の傾向と対策を見てみましょう。

(1)事業活動及び業績への影響について
新型コロナウイルスの影響により、業績予想の下方修正を発表する企業の数は後を絶ちません。この傾向は、今後さらに拡大する傾向にあると言われています。新型コロナウイルスの影響によるリスク情報について、東京証券取引所は決算発表の時期が後ずれした場合であっても、業績予想の修正や、決算発表日の延期の公表に併せ、現時点で把握している方法を可能な範囲で周知するように求められています。株主総会の場において、事業活動及び業績への影響に関する質問についても、基本的には株主総会前に開示した内容に沿って回答することとなります。株主から従前の予想値からの差異が生じた原因についての説明を求められる可能性もあるので、現状を正しく把握した上で回答を用意しておく必要があります。

(2)BPC(事業継承性)の観点からの対策
緊急事態宣言が発令されて以降、多くの企業がBCP(事業継承性)の観点からの対策を求められています。BCPについては、業種により重点を置くべきポイントがそれぞれ異なります。例えば、国内外工場の稼働停止による製造活動の影響や、店舗営業の休業や営業時間の短縮、客足が遠のいてしまった営業活動等への影響、サービスやイベント中止の影響等の観点から、BCPについていかなる措置を講じているのかを株主から説明を求められた場合の回答を用意しておきましょう。ちなみに「有価証券報告書における財務情報及び記述情報の充実のため開示内容の見直し」が内閣府令の改正により実施され、これにより、事業などのリスク情報について、より具体的な記載を求められることになっています。想定質問の回答を作成する場合は、情報開示の充実に向けた一連の流れを意識して回答を検討するとよいとされています。

(3)事前リスクの評価及び備えの十分性
事業活動が深刻な状況となってしまった企業の場合は、新型コロナウイルス感染拡大のようなパンデミックに対するリスクを、経営陣が認識していたのか、パンデミックを想定とした備えは万全であったのか、などの厳しい質問が飛ぶことも想定されます。ことに大企業においては、取締役会(非取締役会設置会社では取締役)に内部統制システムの基本方針を決定することが会社法348条4項と362条5項で義務付けられており、その内容の一つに「損失の危機の管理に関する規定その他の体制」(会社法施行規制98条1項2号100条1項2号)があります。この場合、企業は株主から、以下のような点を指摘されると想定できます。

①企業は平時から未知のウイルスに関するパンデミックを想定して予防措置を講じていたのか
②リスク管理が規定されている場合は、当該規定に沿った運用がされていたのか
③具体的にはどのような措置が講じられていたのか
④予防措置は有効に機能したのか、仮に有効に機能しなかったのであれば原因は何か

事前リスク対策については、今後の有事の際の備えとしても検討、改善するべき点があるため、事実関係を整理し回答を作成することがポイントです。

(4)従業員への感染防止策
新型コロナウイルス感染症は、リーマンショックなどのような金融ショックではなく、人から人へ感染しあらゆる経済活動をストップさせる恐れのあるウイルスです。株主からは企業内に感染者がいた場合の対処法、又は感染予防のための方策についても質問が飛ぶ可能性があります。その場合、感染の実態、企業イメージや知名度、業態、事業に与える影響などを踏まえた上での総合的な判断をした上での回答を作成する必要があります。仮に感染者が発覚した場合、それを一切公表しないという対応は困難と思われ、多くの企業は感染者が現れた場合は、対外公表をしています。この場合は、個人情報法2条3項、同法施行令2条2号に従い、特段の事情がなければ、本人や家族のプライバシーに配慮し、氏名や役職名等個人が特定されるような形で回答することは避け、株主へのせつめいも、感染者の概数や時期などを回答すれば十分とされています。

(5)感染防止策としてのテレワークや在宅勤務の導入状況について
株主からは罹患者だけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大防止策についても問われる可能性があります。通勤ラッシュを避けた時差出勤の実施や、少人数での交替制出勤、テレワークの実施、出社時の検温など、衛生管理の方針についての回答も準備しておきましょう。社内での二次感染や、クラスター発生を引き起こしてしまった企業については、厳しい質問が想定されます。従業員の安全配慮義務の観点も含め、十分な対策を講じていることを十分にアピールするように回答を用意して下さい。

 

新型コロナウイルスの影響下における株主総会の想定質問対策はWebセミナーで!

新型コロナウイルスの影響で、平時の株主総会では想定できないような質問が飛んでくる場合もあります。きたるべき株主総会に備えて、株主へ十分な回答ができるようにするためには、新型コロナウイルスに関する知識を補強する必要があります。Webセミナーなら自分のタイミングで学習をすることが可能です。繰り返し聴くこともできるので、この時期におすすめのマル秘勉強法です。是非ご利用くださいませ!

【最新WEBセミナー情報】

新型コロナウィルス対策 株主総会・取締役会の運営の留意点
>>>こちらから

続・新型コロナウイルス感染症対策として 労務の現場で何ができるのか?
>>>こちらから

緊急事態宣言を受けて- 新型コロナウイルス感染症と企業活動に関わる法的諸問題
>>>こちらから

【新型コロナ対策】BCPセミナー入門編・対策編【COVID-19】
>>>こちらから

新型コロナウイルス感染症対策として 労務の現場で何ができるのか?
>>>こちらから

2020年の株主総会と実務課題の検討
>>>こちらから

「医療機関の労務管理」 ~医療業界に迫る「働き方改革」、院内感染・パワハラ新法等の最新対策~
>>>こちらから

【緊急セミナー】企業の新型コロナウイルス対策
>>>こちらから

 

>>>最新のビジネスセミナーを探すなら『ビジネスクラス・セミナー』
※サイトにアクセスしたら、「新型コロナウィルス」などでフリーワード検索してください。

>>>WEBセミナーで受講したい方なら『Deliveru(デリバル)』
※サイトにアクセスしたら、「新型コロナウィルス」などでフリーワード検索してください。

 

【参照情報】
日本渡航医学会 産業保健委員会/日本産業衛生学会 海外勤務健康管理研究会
>>>新型コロナウイルス情報 企業と個人に求められる対策 ~株主総会運営上の対策と法的留意点~

長島・大野・常松法律事務所
>>>総会想定問答作成の際の留意点~事業継承性、リスク評価・備え、従業員の安全防止等

西村あさひ法律事務所
>>>新型コロナウイルス感染症拡大下における株主総会の留意事項について

TMI総合法律事務所
>>>[コロナウイルス対応Q&A]株主総会分野Q&A

日本経済新聞
>>>東証、新型コロナウイルス影響の早期開示を要請 決算延期の場合でも