<モビリティ市場を狙え!MaaS最新動向2021【3】> MaaSの「今」を知る 世界のMaaSと日本のMaaS

フィンランドをルーツとするMaaSの概念は、瞬く間に世界中に広がり、日本でも国が音頭を取ってその取組みを推奨しています。「移動手段の革命を起こす」と言われているMaaSは、渋滞の緩和や、CO2排出の削減、交通弱者対策、ラストワンマイル実現など、国の事情それぞれによって取組み事例が違います。2021年現在での世界各国のMaaS最新事情は、どのようになっているのでしょうか?世界のMaaSと日本のMaaS、その取組み事例をご紹介します。

 

世界のMaaSはどのように展開しているか?

世界のMaaSは、元祖であるフィンランドの「Whim(ウィム)」や、MaaSの古参であるドイツの「DB Navigator」、業績を伸ばすイスラエルの「Moovit」などをご紹介します

●Whim(ウィム):フィンランド
MaaS発祥の地のフィンランドのMaaSと言えば、2016年にリリースしたMaaSアプリ「Whim(ウィム)」です。Whimはフィンランド政府、自治体、交通事業者が協働して開発されたアプリで、エリア内のあらゆる交通機関の予約と決済ができるほか、月定額で乗り放題となるプランも実現しています。30日間で約7500円のコースから、80回まで無料でタクシーに乗降可能な約8万円のコースまでの料金設定があり、交通関連の規制緩和、各交通サービスのデジタル化促進など政府が政策面で後押しする形で、ユーザー志向のモビリティサービスを目指しています。Whimは世界各国でも運用を始めており、2020年には、三井不動産が出資する形で、千葉県柏市にWhimを活用した月額制のサブスクリプションサービスを展開する予定とのことです。

●DB Navigator:ドイツ
ドイツ鉄道がリリースしている「DB Navigator」は、MaaSに早期参入している代表格の一つです。交通事業者による公共交通の予約や決済機能を備えたDB Navigatorの対応エリアはドイツ国内にとどまらず、ユーラシア大陸全土に拡大しており、ドイツ以外の近隣諸国の一部でも予約や決済ができるようになっています。鉄道やバスの公共交通だけではなく、DB Navigatorが提供するカーシェア事業も展開しており、対応地域での利用が可能です。

●Moovit:イスラエル
イスラエルで展開している「Moovit」は、アメリカのIntel社傘下にある企業です。MaaSのプラットフォーマーとして世界展開に力を入れており、2020年現在で世界112か国3400都市に展開しています。Moovitでは多様な言語にも対応しており、45の減とで9億3000万人以上のユーザーにサービスを提供しています。Moovitの特徴は、膨大なデータです。展開先の交通事業者から提供されるデータの他、Moovitersと呼ばれるローカル編集者が70万人以上存在し、各種交通データが日々提供され続けています。Moovitでは、アメリカのUber、オランダのTomTomなどとも提携し、ビッグデータを生かした交通分析が世界中から注目を集めています。

 

日本のMaaS取組み事例5選

日本ですでに取組みが開始されている、もしくは実証実験がスタートして話題を集めている5つのMaaS取組み事例をご紹介します。

【事例1】静岡県に建設するトヨタ自動車の「コネクテッド・シティ」
トヨタ自動車は、静岡県にAIや自動運転などのテクノロジーを集結させたスマートシティを2021年から着工する予定です。このスマートシティは「Woven City(ウーブン・シティ)」と言い、自動運転車、MaaS、ロボット、スマートホーム技術、など、暮らしに役立つAI技術をフル活用し、検証するための実験都市となる予定です。プロジェクトの初期段階では社員やプロジェクト関係者など2000名程度が実際に最先端のテクノロジーの中で暮らすことになります。Woven Cityでは、車道、スピードの遅いパーソナルモビリティの走行する道、歩道など3つに分類され、車道にはトヨタの「e-Pallet」という完全自動運転車が走行する予定です。この他にMaaS要素としては、地下に張りめぐらせたコンベアのような配送網と地上を走る自動運転車による完全自動配送も計画されています。

【事例2】北海道上士幌町のオンデマンドバスとネットスーパー
北海道上士幌町では、高齢者向けのネットスーパーと利用者の予約に合わせて運行する「オンデマンドバス」の提供を開始しました。ネットスーパーで発注した品物は、欲しい品物を日時指定で自宅近くまで配送してもらえます。どちらも行政サービスの一環となり、オンデマンドバスはネットスーパーの配送も請け負ってますが、配送だけでなく、自宅と町内の目的地も自由に送迎してくれるので、地方型MaaSの理想の形と言えるでしょう。

【事例3】京阪がMaaSで観光客の行動変容を促す
京都市洛北では「奥京都MaaS」と称し、観光客の行動変容で観光客を分散化することに取組んでいます。京阪はJR東日本と協業し、同じ京阪グループ会社の叡山電車、シェアバイクのドコモ・バイクシェアなどとも手を組んでいます。「奥京都MaaS」を使うと「旅の工程管理機能」でモデルコースを提案し、個人でも洛北の観光スポットを周遊できるようにスケジュールを組んでもらえます。さらに、デジタルでの飲食チケットの発行、デジタルスタンプラリーを同時企画し、地域の消費機会も増やしました。観光客の体験価値が高まれば、リピーターも増え、結果的に観光地にとってプラスになる取組みとなる、と期待が高まっています。京阪では、今後もエンドユーザーの反応を見ながら、改善して行くとしています。

【事例4】京都府舞鶴市のライドシェア「meemo(ミーモ)」
オムロンは、京都府舞鶴市で公共交通モデル「meemo(ミーモ)」を社会実装しています。meemoは住民同士の送迎と公共交通機関を組み合わせた移動を促すMaaSアプリで「マッチングによってお互い様の社会の実現を目指す」ことをコンセプトとしています。その内容は、送迎や困りごとを抱えている住民に対し、利用者と担い手(ドライバー)をマッチングするライドシェアタイプの地方型MaaSで、人と触れ合う機会の創出も視野に入れています。導入するにあたり、住民ドライバー向けの安全運転講習の実施や、アプリ操作の体験会を開催して、すでに実証実験終えています。オムロン側の話によると、meemoにはまだ課題も多く、単独でのビジネス化は難しいとされていますが、地域全体で取組み、長期にわたって持続していくことが必要と述べています。

【事例5】静岡県伊豆エリアで交通大手事業社が挑む観光型MaaS「Izuko」
「Izuko」は、JR東日本、東急電鉄、伊豆急行の大手交通事業者が、合同で取組む観光型MaaSとなります。Izukoでチケットを事前購入すると、現地でスマホの画面を提示するだけで、交通機関や観光施設を利用すること可能となるだけでなく、観光地や混雑状況をリアルタイムで確認できるため、withコロナでの「密にならない旅行」の需要にも対応可能です。フェーズ1では試験的なアプリのリリース、フェーズ2ではIzukoの機能性向上とサービスエリアの拡大、フェーズ3では、事前購入機能の拡大、観光情報検索機能の充実などが計画されており、2021年3月でフェーズ3を終えていることになっています。

 

MaaSに関しての詳細はセミナーで

MaaSには世界の事例と日本の事例、それぞれの国のタイプに合わせた事例があります。ひと口にMaaSと言っても、CASEや自動運行車の躍進、SDGsによる企業や自治体の意識の高さ、Society5.0による具体的な取組など、あらゆる要素が集結して一つのプロジェクトを形成している事が多々あります。これらの新しい取組みを網羅するにはセミナーがお薦めです。下記URLより必要なセミナーを検索し、是非活用してください。

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【参照情報】
IDEAS FOR GOOD
>>>人の移動を大きく変える「MaaS(マース)」とは?意味やメリット、国内外の最新トピックを専門家が解説

ソフトバンクニュース
>>>【2021年最新版】MaaS(マース)とは?意味や定義、海外事例と国内企業の動き

訪日ラボ
>>>観光型MaaS整備でアフターコロナのインバウンド誘致へ|MaaSの意味や国内の事例を解説

DIGITAL SHIFT TIMES
>>>世界のMaaS先進事例7選。鉄道・バス・タクシーなど交通手段を統合したサブスクモデルも!

トラベルボイス
>>>MaaSで移動需要の変容は可能か?新発想ライドシェアや次世代モビリティの事例から事業者の取り組みを聞いた