<知っておきたい「業務委託契約」の労務管理と注意点【1】> 「業務委託」にはどんな種類がある?業務委託のメリットとデメリットについて
安定志向型と言われていた日本の「サラリーマン社会」は、大きな方向転換を強いられています。度重なる不景気の波で「安定志向」が揺らぎ始めたばかりでなく、新型コロナウイルスの影響で、変わることが難しいと思われていたオフィスワークでさえも、テレワークと切り替わっていき、社会全体の仕組みが変わり始めています。そんな中、注目を集めている雇用方法が「業務委託契約」です。業務委託契約は昔から存在する雇用スタイルでしたが、働き方改革やコロナ禍の影響で、個人事業主やフリーランスで仕事をする人が増加しつつあります。具体的に「業務委託」とは、どのような仕組みなのでしょうか?種類やメリット・デメリットなどについてまとめました。
「業務委託」とは?
業務委託とは、社内だけで対応できない業務を、外部の企業や個人へ委託する業務形態のことです。委託者と請負人は「雇用関係」ではなく「対等な立場」で「業務委託契約」を交わします。法律で明確な定義はされていませんが、「委任契約(準委任契約)」か「請負契約」のいずれかに該当する契約として解釈されることが一般的です。あくまで「対等な立場」での契約となるので、労働法が適用できないことが特徴です。
「業務委託」の種類
業務委託の種類は、「請負契約」「委任契約」「準委任契約」に分類されます。同じ業務委託契約でも、請負契約と委任契約とでは、報酬が発生するタイミングや、業務形態に違いが生じるので、よく理解をしておく必要があります。
●請負契約
「請負契約」は「成果物を完成させることで報酬を受け取ることができる契約」です。仕事をどのように進めたかの過程や、仕事時間に関係なく、成果物を不備なく完成させ、納品できたかどうかの「完成責任」が問われる契約です。委託先としては、プログラマー、デザイナー、ライターなどの職種が挙げられます。納品後の成果物に不具合や不備が発券された場合は、委託される側に修正対応の義務(瑕疵担保責任)が生じます。
●委任契約
「委任契約」は、「遂行する業務自体に対して報酬を受け取ることができる契約」です。具体的な成果物を定めづらい仕事の場合は、委任契約を交わします。委任契約は、「法律行為に関係する職業」が該当します。「法律行為に関係する職業」はいわゆる有資格者となり、医者や弁護士などの他、美容師などが挙げられます。
●準委任契約
「準委任契約」も委任契約と同様に、「遂行する業務自体に対して報酬を受け取ることができる契約」です。委任契約との違いは「法律行為に関係するかしないか」にあります。準委任契約に該当するのは、コンサルタント業務やシステム開発事業が該当します。尚、「委任契約」と「準委任契約」の違いは、「民法656条」にある「委任の規定は法律行為でない業務の委託について準用する」に則ったものとなります。
業務委託のメリット・デメリット
業務委託のメリットやデメリットについても見てみましょう。
●業務委託3つのメリット
業務委託には、大きく3つのメリットが挙げられます。
(1)専門性の高い業務を依頼できる
例えばシステムの開発を、専門職であるプログラマー依頼する、会社の法務を弁護士にお任せするなど、専門性の高い職種を業務委託で賄えることが可能となります。内部に雇用すると毎月に係る人件費が負荷となりますが、業務委託として外注することにより、専門分野に関する人材のコストを抑えることが可能です。
(2)人材育成のためのコスト削減につながる
同じくコスト削減ですが、難しい業務に対して外部に業務委託することで、イチから人材を育成する新入社員の教育コストも抑えることができます。社内で人材を育てようにも、専門性の高い優秀な人材となる保証はなく、コストばかりか、人材育成失敗のリスクも背負うことになります。専門職を業務委託することは、人材育成面でのコスト削減、リスク回避にもつながります。
(3)社内リソースを活用できる
業務委託で難しい業務をクリアできれば、その分、本当に必要な社内の業務へリソースを活用することができます。例えば、ノンコア業務を外部に委託し、本業の社内リソースを集中させれば、企業全体の生産性の底上げにつながると期待できます。また、従業員も希望の職場へ異動しやすくなるため、やりがいもでてモチベーションを維持や離職率の低下にもなります。
●業務委託の3つのデメリット
他方、業務委託にはデメリットもあります。業務委託の3つのデメリットも、ご紹介しておきます。
(1)専門性が高いと却ってコストが増える
専門性の高い業務を外部に依頼できることが業務委託のメリットではありますが。報酬が高すぎて、自社の採用コストや、教育コストを上回る恐れもあります。報酬が高い理由の一つとして、適正な価格よりも多額の報酬を支払っているケースも多くあるので、業務委託する際は、相場や適正価格をあらかじめ調べておくことがポイントです。
(2)委任先の人材管理ができず品質やサービスが下がる恐れもある
業務委託では、企業サイドに指揮命令権が存在しません。そのため、委託先の人材管理が難しい場合もあります。双方のコミュニケーションがうまくいかず、クオリティの低い成果物が納品される、サービスの質が下がるなど、企業のブランドを低下させてしまうことにもなりかねないため、委託先とのコミュニケーションはとても重要となります。
(3)社内の人材育成が後手に回る
あまり業務委託にばかり頼ってしまうと、社内でのノウハウ構築や、人材育成がまったくできないケースもあります。社内で優秀な人材を発掘するチャンスを逃してしまうことがないよう、業務委託をした専門性の高い業務について、ノウハウや知識を共有して、蓄積していく必要があります。また、企業内において「何をどの程度業務委託をするか」の線引きも慎重に話し合い、考慮すると、リスクは低くなります。
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