<2021年4月より強制適用開始!「収益認識に関する会計基準」に備えよう【1】> 会計が変わる?「収益認識基準」とは何者か

古来より「商売」というものは、人の手によって売り買いがされるものであり、「商品」を販売すれば「売上」である金銭を受け取るというやりとりが常でした。帳簿に残す会計も、そのような商売の在り方を前提としており、世界に目を向けても商品と金銭のやりとりで経済が成り立っていました。しかし、時代は変わり、カード決済、ポイント払いなどのキャッシュレス決済がシェアを拡大するにつれ、従来方式で「売上」をカウントする方法では、国際的にも通用しなくなってきました。国税庁では2018年に「収益認識に関する会計基準」を発表し、2021年4月より「強制的に」適用が開始されます。間近に迫った「収益認識に関する会計基準」で定められている「収益認識基準」とはどのようなものなのでしょうか?収益認識に関する会計基準に関する背景や、対策なども含めてご紹介します。

 

収益認識基準が公表された背景

これまで「売上」に関する規定は、「実現主義の原則による」と企業会計原則に記されているのみでした。この会計基準原則は1949年に制定されたものであり、工事契約やリースなどでは、それぞれに規定が設けられているにせよ、概ね約70年間変わっていないことになります。逆に70年の間、この実現主義の原則が日本の経済を支えてきたといっても過言ではありません。

ところが、インターネットの躍進やパソコン、モバイル端末などの普及により、ビジネスの在り方は多種多様を極め、インターネットが普及していなかった以前では考えられないような支払い方法やサービス、特典などが日本だけでなく、世界中にあふれるようになりました。これまで慣習で成立してきた「商売」が世界を相手とする「ビジネス」になってくると、業種や企業により売上のルールが異なってくるため、新たな収益認識基準が必要となります。

そこでまず、IFRS(国際財務報告基準)を作成するIABSと、アメリカの財務報告基準作成するFASBが共同し2014年に「収益認識に関する基準」を公表しました。このIFRSの基本的な要素を取り入れて翻訳したものが、2018年に公表された日本の「収益認識に関する会計基準」が誕生する背景となったのです。

 

国税庁による「収益認識に関する会計基準」の概要

国税庁は、「今般、顧客との契約から生じる収益に関する包括的な会計基準として「収益認識に関する会計基準」が導入され、これを踏まえ、平成30年度税制改正において、資産の販売等に係る収益に関する規定の改正が行われます」とした上で「収益認識に関する会計基準」に関して以下のように示しています。

「収益認識に関する会計基準」は、

①「企業会計原則」に優先して適用される会計基準としての位置づけがなされている
②「履行義務」という新たな概念をベースとしている

これらを踏まえた上で、「収益の計上単位」「計上時期及び計上額を明確化する規程」が設けられるなどの改正が実施されます。

この国税庁の概念をシンプルに解説すると、これまで「いつ売上にするか」だけで処理していた会計基準を、「いつ/いくらで/何を売上とする」という会計基準に改正する、ということになります。シンプルではありますが「何を」の部分には「商品」だけでなく「サービス」や「特典」などの履行義務が含まれており、従来のように金銭だけとは限りません。また、「いくらで」に関しても、従来の「契約金額」に加え「交換」や「回収予定」なども含まれてくるので、最終的な売り上げ金額に大いなる影響を与えます。

 

「収益認識に関する会計基準」の適用対象とその時期について

収益認識に関する会計基準の適用対象や、その時期についても纏めてみました。

●収益認識に関する会計基準の適用開始時期
「収益認識に関する会計基準」の任意適用は、収益認識に関する会計基準が公開された2018年4月から任意適用が始まっています。既に早期適用をしている大手企業もあります。2021年4月以降から開始される事業年度から、対象となる企業は強制適用となります。

●中小企業はどうなる?
中小企業は「監査対象法人以外」という扱いとなるため、企業会計原則に則った会計処理も継続が可能です。中小企業の定義は事業内容によって異なりますが、中小企業で監査対象法人に該当しない場合は、2021年4月からの強制適用ではなく、任意適用でも問題ないとされています。

●連結子会社に関して
例えば、親会社が大手で、収益認識に関する会計基準の強制適用対象だとしても、子会社は強制適用に該当しない事もあります。この場合は、原則的には新基準を適用すると認識されていますが、修正仕訳で対応が可能であるケースもあるため、国税庁から発行されているリーフレットなどで確認する必要があります。

●収益認識に関する会計基準の対象にならない取引とは?
収益認識に関する会計基準では、「顧客との契約から生じるものではない取引や事象から生じる収益は、本会計基準では取り扱わないこととした」と明記されている「対象外の取引」が存在します。

(1)「金融商品会計基準」の範囲に含まれる金融商品に係る取引
(2)金融商品の組成又は取得において受取る手数料
(3)「リース会計基準」の範囲に含まれるリース取引
(4)同業他社との交換取引
(5)「保険法」における定義を充たす保険契約
(6)「不動産流動化実務指針」の対象となる不動産の譲渡

 

まだ間に合う!「収益認識に関する会計基準」のセミナーをチェックして早めの対策を

対象企業の収益認識に関する会計基準強制適用は2021年4月からです。これまでと違う実務になるため、早めの体制づくりが必要です。そのためには、まずセミナーなどで知識を仕入れ、正しい運用に備えましょう!セミナーを探すなら、下記Webサイトがお薦めです!

■ビジネスクラス・セミナー(会場型セミナー)
>>>最新の経理/財務/会計セミナー情報はこちらから

■Deliveru EC(WEBセミナー)
>>>最新の会計(経理)/財務セミナー情報はこちらから

 

【参照情報】
経理プラス
>>>収益認識に関する会計基準が2021年に強制徴用?実務への影響は?

国税庁
>>>「収益認識に関する会計基準」への対応について