<2020年の税制改正「年末調整」の変更点と電子化について【4】> 2020年の年末調整に必要な書類や実務スケジュールなどについて
2020年の税制改正によって、年末調整は大きな変更点があり、そして、同時に電子化での手続きも可能となりました。このため、2020年の年末調整の実務は、例年よりも慌ただしくなると予測されます。2020年の年末調整の実務は、どのように進行したら良いでしょうか?年末調整に必要な書類と実務スケジュールなどについて、まとめみました。
「年末調整」についての基本的なおさらい
「年末調整」とは、源泉徴収によって、一年間従業員から徴収した所得税の過不足を、一年の終わりに精算手続きすることを指します。年末調整で清算する所得税の中には、「復興特別所得税」も含みます。そもそも年末調整は、どのような目的で実施されているのでしょうか?いまさら聞きにくい、少し基本的なことをおさらいします。
●年末調整の目的とは?
毎月、会社から「給与所得」を受けている「給与所得者」は、給与から「所得税」が引かれています。所得税は一年間の所得の合計額をもとに計算されており、その年が終わらないと確定しません。毎月源泉徴収として天引きされている所得税は、年間所得税とは一致しないことが常であり、最終的な帳尻を合わせるため、一年の終わりに、不足している所得税を精算することが、年末調整の目的となります。
●年末調整の対象者となる人
年末調整の対象者は、「年末までに会社に在籍する従業員」です。12月支給分の給与を受取った後に、退職や死亡退職となった人、退職後に心身の障害などで復帰できない人などは、年末に在籍していない形でも、年末調整の対象者となります。ただし、年間の給与収入が2,000万円以上の従業員については、年末調整の対象外です。この場合は、本人が確定申告をして調整します。
●年末調整で必要な書類
「年末調整」に必要な書類は、以下の通りです。
・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(マル扶)
「給与所得者の扶養控除等」とは、配偶者控除、障害者控除、ひとり親控除、寡婦控除、勤労学生控除など、年末調整においての適用を受ける為に必要な書類となります。この書類は「マル扶」と呼ばれており、マル扶を提出しないと、年末調整を受けることができなくなってしまいます。一人身の人でも、全員提出しなければなりません。
・保険料控除申告書(マル保)
「保険料控除申告書」は「マル保」とも呼ばれる書類のことで、保険会社の保険に加入している従業員が、年末調整で、生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模共済等掛金控除などの適用を受ける為に必要です。
・住宅借入金等特別控除申告書
「住宅借入金等特別控除申告書」は、ローン控除を受けるための書類です。初年度については、本人による確定申告が必要となりますが、2年目以降は勤務先の年末調整で控除が可能となります。
・源泉徴収票
「源泉徴収票」は従業員に支払った年間の給与に関して、支払い金額、給与所得控除後の金額、所得控除の合計額、源泉徴収税額などを記載する書類で、会社側で配付します。
・報酬、料金、契約金及び賞金の支払い調書
弁護士や税理士に支払った報酬や、外部に支払った原稿料や講演料などについて作成する書類は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払い調書」と言います。支払い調書を支払先に交付するなどの義務は生じませんが、一定額以上を支払っていた場合は、税務署に提出する必要があります。
・法定調書合計表
「法定調書合計表」とは、源泉徴収票や、支払調書の内容を集計し、税務署へ提出するための書類となります。
・給与支払い報告書
「給与支払い報告書」は、源泉徴収票と同様の内容を記載する書類です。従業員が居住する、市区町村ごとの作成が必要となります。
・基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書(2020年より創設)
「基礎控除申告書兼給与所得の配偶者控除等申告書県所得金額調整控除申告書」は、2020年より創設されたものです。2019年までは「配偶者控除申告書」として一枚で済む書類でしたが、2020年より「基礎控除申告書及び所得金調整控除申告書」も一緒になり、3つの控除が一つの用紙に記載されています。
2020年に実施する年末調整のスケジュール
2020年に年末調整は、どのようなスケジュールで実施したら良いでしょうか?電子化へと移行するには、2か月ほど時間がかかります。今回は、所轄税務署から電子化の承認を受けたという前提で、電子化移行も前提でのスケジュール例をご紹介します。
(1)申告用紙の準備(11月中旬頃)
所轄の税務署より、「現前徴収簿」「法定調書」「申告書用紙」などが郵送されます。まずは届いた書類を確認します。電子化に移行している場合は、年末調整申告書作成用のソフトウェア、従業員のマイナンバーカード取得などの準備が必要です。
(2)従業員へ申告書用紙を配付する(11月~11月下旬頃)
「給与所得者の扶養控除等申告書」「保険料控除申告書」「基礎控除申告書兼給与所得の配偶者控除等申告書県所得金額調整控除申告書」を従業員へ配付して、必要事項を記入の上、提出するように指示を出します。電子化を適用する場合は、上記の各申告書の書面提出が不要となります。
(3)従業員から申告書用紙を回収する(11月下旬頃)
申告書用紙を従業員より回収し、記入内容に間違いがないかをチェックします。電子化を適用する場合は、従業員より提出されたデータをチェックします。
(4)所得税を計算する(12月上旬~中旬頃)
12月分の給与が確定し、一年間の給与額、賞与額、社会保険料、源泉徴収額が確定してたら、その総額をもとに正しい所得税額を計算して、差額を算出します。
(5)所轄税務署や役所へ提出する書類を作成する(翌年の1月)
明けて翌年に、所轄税務署や役所へ提出する書類を作成します。所轄税務署には「源泉徴収票」「支払調書」などの法定調書を、所在地の市町村の役所へは「給与支払報告書」の提出となります。
年末調整であわてる前にセミナーを受講しておきましょう
年末調整業務の時期は、あっという間にやってきます。電子化に間に合っていなくても、従来との変更点が多く「いつもどおり」というわけには参りません。ましてや、コロナ禍でイレギュラーな事も多く、実務担当の負荷は相当なものかと思われます、いざというときに慌てなくて済むよう、年末調整のセミナーを受講し、その時期に備えましょう。下記より、年末調整のセミナーを探すことができます!
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【参照情報】
Money Forward Bizpedia
>>>2020年版(令和2年)の年末調整の仕方を解説!変更点や注意はある?
国税庁
>>>年末調整手続きの電子化に向けた取組について(令和2年分以降)
年末調整のやり方2020
>>>年末調整の電子化スケジュールはどうなっているの?実は始まっていた年末調整電子化