<2020年の税制改正「年末調整」の変更点と電子化について【3】> 年末調整の電子化移行のために必要な準備とは

2020年は「年末調整」に大きな変更点があった年ですが、同時に「年末調整の電子化」に向けての一歩も踏み出しました。負荷の大きい年末調整業務を軽減することを目的とした年末調整の電子化では、具体的にどのような実務が必要なのでしょうか?電子処理できる書類の種類、そして、電子化に向けての準備するべきことなどをまとめました。

 

電子データ提出を認められている年末調整申告関係書類

電子データ提出を認められている年末調整申告関係書類には、「年末調整申告書関係」と「控除証明関係」に分かれます。

●年末調整申告書関係
・扶養控除等申告書
・配偶者控除等申告書
・保険料控除申告書
・住宅ローン控除申告書(平成31年(令和元年)以後の居住年)
・基礎控除申告書
・所得金調整控除申告書

●控除証明書関係
・保険料控除証明書(生命保険料[新・旧]、個人年金保険料[新・旧]、介護医療保険料及び指針保険料に限る)
・住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除証明書
・年末残高等証明書(住宅ローン残高証明等)

 

年末調整手続き電子化で準備すること

年末調整手続きの電子化には、企業側、従業員側、それぞれに準備が必要です。

●企業側の準備
まずは、企業側で準備することを解説します。

(1)年末調整電子化の実施方法を検討する
年末調整を電子化するには、年末調整申告書作成のソフトウェアが必要です。社内でどのソフトウエェアを使用するべきか、電子化にあたっての年末調整の事務手続きをどうするか、などの実施方法法について検討する必要があります。使用するソフトには、国税庁より無償で提供されている年末調整控除申告作成用のソフトウェアや、市販されている民間のソフトウェアなど、選択肢はいろいろあります。

(2)従業員へ年末調整電子化を周知する
年末調整の電子化について、特に従業員へ説明する義務はありませんが、年末調整の電子化作業には、従業員も、保険会社等の控除証明書等データを取得するなどの作業もありますので、電子化の説明は必要です。国税庁のソフトウェアを使用する際は、従業員のパソコンごとにソフトウェアをダウンロードしなければならないので、使用方法も含めて早めにアナウンスしなればなりません。また、控除証明書等の取得には、マイナンバーカードが必要となります。取得に時間がかかることもあり、余裕をもって周知することが望ましいとされています。

(3)給与システムの改修等
年末調整を電子化した時、年末調整計算は、年末調整申告書のデータを使って実施します。そのため、給与システムにデータを取り込むこととなるため、現在使用している給与システムが、データの取り込みに対応していない可能性も想定されます。また、令和2年分から、所得金額調整控除は企業の方で計算することとなっています。年末調整作成の効率化を図るためにも、給与システムが連携できるかどうかを確認しておく必要があります。

●従業員側の準備
年末調整の電子化には、従業員側にも準備することがあります。

(1)年末調整ソフトを取得する
国税庁が無償提供する、年末調整申告書作成ソフトウェアの場合、従業員は自身のパソコンにソフトをインストールします。市販のクラウドサービスの場合は、IDとパスワードさえあればパソコンへのインストールは不要です。年末調整の締め切りであわてないように、余裕をもって使い方などを確認しておくことをおすすめします。

(2)控除証明書等データを取得する
控除証明書等のデータは、従業員自身が取得手続きをします。取得方法には「マイナポータル」を使用するか「保険会社等のホームページで取得する」方法があります。

 

・マイナポータルを使用する
「マイナポータル」とは、行政手続がワンストップで行える政府直営のオンラインサービスです。マイナポータルを活用すると、複数の控除証明書等データを一括で取得することが可能で、各保険会社に手続きする手間が省けます。マイナポータルを利用するには、マイナンバーカードの取得などの準備が必要ですので、マイナポータルの使い方も含めての事前準備は必須です。

・保険会社等のホームページで取得する
保険会社等のホームページで除証明書等を取得するためには、「お客様ページ」からダウンロードすることができます。複数の保険会社と契約がある場合は、一社ずつ取得しなければならいません。また、保険会社により取得方法が違うこともありますので、各会社の指示に従いましょう。

 

所轄税務署長へ提出する「承認申請書」のために実施す2つの措置

年末調整を電子化するためには、事前に所轄税務署長へ「承認申請書」を提出、承認を受けなければなりません。承認をもらうために、必要な2つの措置についてまとめました。

(1)電磁的方法で申告書等のデータ提供を受けるにあたって必要な措置
(従業員からのデータ提供を受ける為に用いる方法を定めます)

・勤務先にインターネット経由のメールなどで送信する方法(その際は電子署名もしくはパスワードによる暗号化が必要)
・USBメモリなどにデータを保存して提出する(その際は電子署名もしくはパスワードによる暗号化が必要)
・勤務先とデータの作成者である従業員のみがアクセスできる領域に年末調整申告書データを保存する
・社内LANなどにログインしてメール等で送信するようにする

(2)電磁的方法で申告等のデータを提供する従業員の氏名を明らかにするために必要となる措置
(提供されたデータが従業員本人のものと確認ができるようにする方法です)

・従業員が電子署名を付し、その電子署名にかかる電子証明書と年末調整申告書を合わせて勤務先に提出する方法
(上記の手法をとるとマイナンバーカードに記載された電子署名及び電子証明書を利用することが可能となります)

・従業員に個別IDとパスワードを付与しそれを用いて勤務先に提出する方法
(この他に社内LANとパスワードでログインし、その従業員にのみ与えられたメールアドレスから送信する場合も含みます)

承認申請書を提出した月の翌日末日までに、所轄の税務署より「承認」「承認しない」の通知が届きます。ここで「承認」を得られないと電子化導入ができません。「承認」も「承認しない」も届かない場合でも。その翌月末には承認があったとみなすことが可能です。

 

年末調整の電子化についてはセミナーで!

年末調整の電子化は、すぐには導入できません。事前に準備しておくことがたくさんあります。それは企業側だけでなく、従業員にも準備が必要なのです。直前になって慌てないように、まずはセミナーで年末調整について知識を深めましょう。
セミナーを受講して、年末調整に備えてください。

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【参照情報】
国税庁
>>>年末調整手続きの電子化に向けた取組について(令和2年分以降)

OBC360°
>>>2020年スタート!年末調整手続きの電子化に向けて今から準備すべきこととは

内閣府
>>>マイナンバー(社会保障・税番号制度)~もっと便利に暮らしやすく~