<2020年の税制改正「年末調整」の変更点と電子化について【1】> 2020年の税制改革で年末調整はどう変わったか?

平成30年度は税制改革が実施されましたが、その影響で2020年の年末調整にも見直しが入りました。働き方が多様化し、終身雇用制度が成立しなくなってきた現代社会では、従来の個人所得課税の制度が通用しなくなってきたから、という理由と、年末調整を電子化し、年末調整に携わる人たちの負担を軽減しようという狙いがあります。2020年の税制改革では、年末調整はどのように変わったのでしょうか?6つの変更点を解説していきます。

 

2020年の税制改正による「年末調整」6つの変更点について

2020年の税制改正による年末調整の変更点は主に6つです。

(1)給与所得控除額の引き下げ
(2)基礎控除の引き上げと引き下げ
(3)所得金額調整控除の新設
(4)扶養親族等の合計所得金額要件などの見直し
(5)「寡婦(夫)控除の見直し」と「ひとり親控除」の新設
(6)住宅借入金等特別控除

詳細を、下記にまとめました。

(1)給与所得控除額の引き下げ
「給与所得控除」とは、所得税などの計算の際に年収から差し引かれる控除額を指します。給与所得控除額は、給与等の収入の金額によって変わり、2020年からは以下のような計算式が用いられることになります。

<>内は給与等の収入金額で、( )内は2019年の数字です。

●<収入180万円以下の人の控除額>収入金額×40%-10万円
(2019年は、収入金額×40%)

●<収入180万円超~360万円以下の人の控除額>収入金額×30%売+8万円
(2019年は、収入金額×30%+18万円)

<収入360万円超~660万円以下の人の控除額>収入金額×20%+44万円
(2019年は、収入金額×20%+54万円)

●<収入660万円超~850万円以下の人の控除額>収入金額×10%+110万円
(2019年は、収入金額×10%+120万円)

●<収入850万円超~の人の控除額>195万円(上限)
(2019年は、850万円超~1,000万円以下:収入金額×120万円)

●1,000万円超:220万円(上限)

【給与所得控除額変更のポイント】

・引き下げ額が一律10万円となる
・「上限額」の適用される収入金額が「1,000万円超」→「850万円超」に引き下げとなる
・収入金額が850万円を超えると一律上限195万円となる

「給与所得控除額」は、後述する「基礎控除の引き上げ」によって相殺される形となるので、「収入が給与のみ」で「850万円以下」の人にとってあまり影響はありません。影響があるのは、年収が1,000万円超える人となります。

 

(2)基礎控除の引き上げと引き下げ
「基礎控除」は、合計所得金額を算出したのち、一定金額を差し引くことを指します。今回の税制改正では、所得が2,400万円以下の人の基礎控除額は引き上げられ、2,400万円超の人は基礎控除が引き下げられます。また、基礎控除を判定するにあたり、2019年までは「配偶者(特別)控除を受ける人」だけが必要だった「給与以外の収入」申告でしたが、2020年以降は「ほぼ全ての納税者の申告」が必要となりました。

・合計所得金額2,400万円(年収2,595万円*)以下の場合、10万円の引き上げ
・合計所得金額2,400万円(年収2,595万円*)を超える方に段階的に減額
・合計所得金額2,500万円(年収2,695万円*)を上限とし、それを超える方への適用は不可に
*収入が給与収入のみの場合

基礎控除の大きな変更点は、「一律38万円」から種類が増えたという点にあります。最大48万円に引き上げられ合計所得金額が2,400万円を超えると、減額となってきます。最終的に2,500万円を超えると控除額が0となるため、基礎控除額が適用されない、ということになります。

 

(3)所得金額調整控除の新設
2020年の年末調整には、「所得金額調整控除」という仕組みが新設されました。これは子育てや介護をする人の税負担を増やさないように配慮された制度です。給与額の金額が850万円を超える居住者で、特別障害者に該当する者や、23歳未満の扶養家族を有するものなどの条件に該当する人が対象となります。

【給与等の収入金額の850万円超の人で次に該当する人】
・要件1:給与収入が850万円を超える
・要件2:以下いずれかに該当する
  A.給与所得者本人が特別障害者
  B.同一生計配偶者が特別障害者
  C.扶養親族が特別傷害者
  D.扶養親族が23歳未満

所得金額調整控除の計算方法は、以下の通りです。

所得委員額調整控除の額=(給与等の収入金額ー850万円)×10%

「給与等の収入金額の上限」は、1,000万円です。このため、上限額は自動的に15万円となります。
(数式:15万円={1,000万円ー850万円}×10)

所得金額調整控除には、「(子ども等)」と「(年金等)」の項目が存在します。この中で控除を受けられるのは「所得金額調整控除(子ども等)のみとなります。特に指定がない場合は、「所得委員額調整控除」は(子ども等)を指すと解釈する必要があります。

 

(4)扶養親族等の合計所得金額要件などの見直し
各種の控除を受ける「扶養親族」などの「合計所得金額要件」も見直され、家族関連の控除にも以下のような変更がありました。

・同一生配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件が48万円以下(改正前は38万円以下)へ引き下げ
・源泉控除対象配偶者の合計所得金額要件が95万円以下(改正前は85万円以下)へ引き下げ
・配偶者控除の対象となる配偶者の合計所得金額要件が48万円超133万円以下(改正前は38万円超123万円以下)
・控除額の算定の基礎となる配偶者の合計所得金額区分がそれぞれ10万円引上げ

 

(5)「寡婦(夫)控除」の見直しと「ひとり親控除」の新設
2020年の年末調整では、「男女の扱い」と「未婚のひとり親」に対する公平な税制支援を目指すべく「寡婦(夫)控除」の見直しと「ひとり親控除」が新設されました。

●「ひとり親控除」の新設
ひとり親控除の条件は以下の通りとなり、条件に当てはまる未婚のひとり親は35万円の控除を受けられます。ひとり親は、「寡婦」だけでなく「寡夫」も対象になることが特徴です。

・婚姻していない、また配偶者の生死が明らかでないひとり親であること
・総所得金額が48万円以下で生計を一にする子どもがいる(2019年は38万円以下)
・合計所得金額が500万円以下である
・事実上の婚姻関係である人がいない

●寡婦(夫)控除の見直し
寡婦控除は、上記の「ひとり親控除」の対処外で、一定の条件に該当する寡婦が対象です。寡婦控除には従来以下のような「一般の寡婦」と「特別な寡婦」でそれぞれ条件がありました。

【従来の寡婦(夫)控除】
<一般の寡婦の条件>
・夫と死別している、離婚後に婚姻していない、夫の生死が明らかでない
・合計所得額が500万円以下である
・事実上の婚姻関係の相手がいないこと

<特別な寡婦の条件>
・夫と死別している、離婚後に婚姻していない、夫の生死が明らかでない
・扶養親族の子供がいる
・合計所得金額が500万円以下である

【「寡婦(夫)控除」の見直しと「ひとり親控除」の新設でのポイント】
前述した「ひとり親控除」に「寡夫」が追加され、寡婦控除では「特別な寡婦」が廃止となります。2020年の年末調整を作成する場合に、改正前の控除と改正後の控除の適用ポイントが変わります。

【適用のタイミング】
・月々の給与/賞与では、「改正前」の控除が適用されます
・2020年4月1日以降の年末調整者では、「改正後」の控除を適用します
・2020年3月31日以前の中途年末調整者が「改正後」の控除を受けるためには個人の確定申告が必要です

【書類作成時の注意】
<扶養控除等(異動)申告書・源泉徴収簿>
これらの公式書類には「ひとり親」の項目が設けられていないため、手書きで追記します。また、「単身赴任児童扶養」の欄の記入は不要となります。

<源泉徴収票>
公式書類には「寡夫」「特別な寡婦」の記載がないので、改正前の控除を適用したい人は年末調整の対象外となり、改正前の「寡婦」「寡夫」「特別の寡婦」であることを摘要欄へ記入します

【「事実婚の有無」について】
改正後の「寡婦控除」と「ひとり親控除」には、「事実婚の有無」が追加されてます。新しく追加された事項ですので、記入についてあらかじめ従業員へ説明しておくと混乱を防げます。

 

(6)住宅借入金等特別控除
「住宅借入金等特別控除」は、通称「住宅ローン控除」と言われ、消費税引き上げ対策として導入された控除です。住宅借入金等特別控除を受けるには、2019年10月1日から2020年12月31日までに取得・リフォームした住宅に入居している必要があります。2020年は新型コロナウイルスの影響で入居が遅れた人の救済措置として「一定の期日までに契約が行われていれば」という条件で、入居期限が2021年12月31日まで延長されます。この場合の「一定の期日」とは、注文住宅の新築などの場合2020年9月30日、分譲住宅・既存住宅の取得やリフォームの場合は2020年11月30日です。

 

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毎年、年末調整はどの会社にとっても大仕事です。仕様に変更があったのならなおさらのこと、現場の混乱は目に見えて想像できます。前もって準備するためにも、年末調整を知っておくことがポイントです。詳しく知るならセミナーで。下記URLより年末調整のセミナーを探すことができます。

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【参照情報】
弥報Online
>>>経理・給与担当者必見!2020年は「年末調整」が変わります!経理業務への影響・対策は?

SmartHR
>>>年末調整シーズン目前!「令和2年度 税制改正」に伴う6つの変更ポイント

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>>>2020年の年末調整における基礎控除の改正内容

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>>>【2020年の年末調整】改正で控除が変わった、作業はここに注意