<職場の安全と従業員を守る「労働安全衛生法」【1】> 労働安全衛生法とは?成り立ちや概要などを解説!

「職場の安全」に関する考えは、古くから存在しており、「労働基準法」の中に組み込まれていました。しかし、産業の発展により進歩した技術の影響により、職場の安全があらゆるリスクに晒されるようになると「職場の安全を守ための独立した法律」が必要となってきました。そこで労働基準法から独立した法律が「労働安全衛生法」です。労働安全衛生法において、企業はどのように従業員を守らなければならないのでしょうか? また、国は労働安全衛生法について、どのような考えを持っているのでしょうか?職場の安全と従業員を守る「労働安全衛生法」について見てみましょう。

 

労働安全衛生法とその構成について

労働安全衛生法の成り立ちや、法令の構成についてまとめました。

●労働安全衛生法の成り立ち
労働安全衛生法とは、「労働災害を防止し、労働者の安全と健康の確保、快適な職場環境を促すための法律」で、1972年に制定されました。それ以前にも「労働基準法」の中に、労働安全に関する条文は存在していましたが、あまり重視はされていませんでした。労働基準法から労働安全衛生法が独立するきっかけとなったのは、日本の高度経済成長です。建設現場や工場などの現場作業が激増し、新しい機械もどんどん導入された労働環境は、これまでの日本の労働環境から目まぐるしく変化し、作業委に過度な負荷をかける働き方が横行しました。この頃の、労働災害による死亡者は年間6000人を超えたと言われています。1972年に労働安全衛生法が施行されてからは、労働者が安心して働けるような環境が整えられはじめ、以後10年で、労働災害の件数は半減しました。こうして、労働安全衛生法は、従業員が安心、安全に働ける環境づくりを整備するための法律として、国も積極的に推進事業に取り組んでいます。

●労働安全衛生法の構成
労働安全衛生法は、第1章~第11章から構成されています。

第1章:総則
第2章:労働災害防止計画
第3章:安全衛生管理体制
第4章:労働者の危険又は健康障害を防止するための措置
第5章:機械等及び有害物に関する規制
第6章:労働者の就業に当たっての措置
第7章:健康の保持増進のための措置
第7章の2:快適な職場環境形成のための措置
第8章:免許等
第9章:安全衛生改善計画等
第10章:監督等
第11章:雑則

附則
別表第1~別表第22

【参考】
電子政府の総合窓口 e-Gov
>>>労働安全衛生法

労働安全衛生法は、労働基準法のように「労働契約を直接規制する効力を持つ規定」は存在しません。しかし「労働者の安全・衛生に関する事項は労働条件の明示事項(労働基準法第15条)、就業規則の記事事項(労働基準法第89条)と定められており、その解釈基準は労働安全衛生法に準じることとなります。

 

労働安全衛生法の定義

労働安全衛生法で定義されてることは、以下の項目です。

●労働災害(労災)
労働安全衛生法第21条1号によると、「労働者の就業に係る建築物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉塵などにより、まだは作業行動のそのた業務に起因して、労働者が負傷し疾病にかかり、又は死亡すること」を労働災害(労災)といいます。

●労働者
労働者は、「労働基準法第9条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く)」を、労働安全衛生法でも「労働者」として扱うと、労働安全衛生法第2条2号に記されています。

●事業者
労働安全衛生法第2条3号によると「事業者」とは「その事業における経営主体のことをいい、会社などの法人については法人の代表者個人ではなく、法人そのものをいう」と定義されています。この場合の「事業者」は、労働基準法第10条における「使用者」とは必ずしも一致するものではありません。

●化学物質
「化学物質」とは、「元素及び化合物をいう」と労働安全衛生法第2条3号の2に記されています。

●作業環境測定
労働安全衛生法第2条4号によると、「作業環境の実態を把握するための空気環境その他の作業環境についてのデザインやサンプリングや分析などを行うこと」を「作業環境測定」としています。

 

国が講じる「労働災害防止計画」とは?

労働安全衛生法は、作業環境や時代背景の変化に合わせ、労働災害を防止するための措置を講じる必要があります。厚生労働省では、2018年4月より計画期間を5年とする「第13次労働災害防止計画」で「ひとりの被災者も出さないという基本理念の下、働く方の一人一人がより良い将来の展望を持ち得るような社会」を目指して、以下のような取り組みを実施しています。

(1)死亡者を2017年と比較して2022年までに死亡災害を15%以上減少する

(2)死傷障害(休業4日以上の労働災害)は、死傷者数の増加が著しい業種、事故の型に着目した対策を講じて、死傷者を2017年と比較し2022年までに死傷年千人率で5%以上減少させる

(3)重点とする業種の目標を立てる
・建設業、製造業、林業の場合は、2017年と2022年の死亡者数を比較して15%以上の減少を目標とする
・陸上貨物の運送事業/小売事業/社会福祉施設及び飲食店については、2017年と2022年の死亡者数を比較して死傷年千人率で5%以上減少を目標とする

上記のような、昔から存在する業務上のリスクに対しての目標に加え、下記のような、現代の社会情勢に合った労働災害防止対策も講じています。

(4)上記以外の目標
・仕事上の不安、悩み、ストレスについて、職場に事業外資源を含めた相談先がある労働者の割合を90%以上とする

・メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上とする

・ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用し運用できる事業場の割合を60%以上とする

・化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)による分類の結果「危険性又は有害性等を有するとされているすべての化学物質」について、ラベル表示と安全データシート(SDS)の交付を行っている化学物質譲渡・提供者の割合を80%以上とする

・第三次産業及び陸上貨物運送業の「腰痛」による死傷者数を、2017年と2022年までを比較して死傷者数千人率を5%以上減少させること

・職場での熱中症による死亡者数を2013年から2017年までの5年間と、2018年から2022年までの5年間を比較して5%以上減少させること

 

労働安全衛生法について学ぶならセミナーで!

「労働安全衛生法」の存在を知らない人は少ないと思いますが、その内容について問われると、曖昧に記憶している人も多いのではないでしょうか。職場の安全を知るのは事業者だけでなく、従業員も知っておくべき項目がたくさんあります。事故やトラブルに巻き込まれないためにも、労働安全衛生法につて学んでおくことが重要です。下記URLより労働安全衛生法についてのセミナーをチェックして、受講してみましょう!

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【参照情報】
ウィキペディア
>>>労働安全衛生法

労務SEARCH
>>>【社労士監修】労働安全衛生法(規則)とは?目的や概要、産業医、トイレ、休憩室(時間)、対象は?

Square
>>>労働安全衛生法とは?経営者がやるべきことを分かりやすく解説