大気圧プラズマの原理とその用途
半導体やポリマー表面に携わる方へ、
大気圧プラズマの原理とその用途をご紹介いたします。
大気圧プラズマの原理とは?
プラズマとは、物質が電離することで生じた原子核と電子が荷電粒子として気体中に存在している状態、あるいはその気体のことを指します。
通常、物質は室温で固体、液体、気体のいずれかの状態を取っており、
エネルギーを与えていくとやがて気体状態になります。
気体の状態でさらにエネルギーを上げていくと分子だったものが、その構成粒子である原子に分離します。
もっとエネルギーを上げると、原子という形状を保てなくなり、
原子核(プラスの荷電粒子)と電子(マイナスの荷電素粒子)に電離するというメカニズムです。
身近な例でいうと、雷の稲妻やオーロラなどがあります。
また、電離させる物質の種類によって窒素プラズマや酸素プラズマなどがあります。
プラズマ装置は一般に減圧下で電界を印加することで電離を行い、これを材料に照射しています。
プラズマは荷電粒子をふくんだ気体である以上、反応性が高いと言えますので、
大気圧下では安定に存在させることが難しいのです。
よって、酸素プラズマ装置などでも普通はロータリーポンプなどで減圧したうえでプラズマを発生・利用します。
一方、大気圧プラズマでは、電界印加をパルス状に行うことで、
大気圧下でも安定にプラズマを得ることができるというメカニズムになっています。
大気圧プラズマの具体的な用途とは?
実際の用途ですが、ほぼすべての業界に何らかの形で関係しています。
特に電子メーカーや自動車メーカーにはなくてはならない存在です。
1.表面改質
産業のコメとも呼ばれるシリコン半導体には、
一般に「イレブンナイン(99.999999999%)」と呼ばれる厳しい純度が求められます。
特に電界効果トランジスタの場合、シリコンと絶縁体、電極との界面に変なエネルギー準位ができてしまうと、電流のリークやドレイン電流、ON/OFF比の低下につながりかねません。
また太陽電池の励起子分離効率の低下も招きます。
このような表面の浄化や改質を行う上でプラズマが活躍します。
電離気体の高エネルギーで表面の有機物を除去し、クリーンな界面形成を実現します。
2.フォトニクス
21世紀は「光の時代」とも呼ばれていますが、人々の光に対する要求が多様化しています。
ディスプレイやスマートホンの画面、照明機器など、高コントラスト、高輝度、高寿命など、より次元の高いニーズが増えています。
ここでも透明電極に相当の純度が求められるので、その表面浄化に利用されます。
最近利用が増えているプラズマテレビにも使用されています。
プラズマを中性の気体分子に照射するとその分子の振動を励起し、高いエネルギー状態となります。
この状態からもとの低いエネルギー状態に戻るときに紫外線が発生します。
この紫外線がテレビ内の蛍光色素に当たると可視光線に変換され、ディスプレイから出てくるというメカニズムです。
プラズマは表面の浄化だけでなく、能動的なデバイスとしても役に立つのです。
3.環境浄化
レストランや喫煙所などにプラズマ空気清浄機が置かれていることがあります。
これにも大気圧プラズマが広く利用されています。
アセトアルデヒドなどの有害物質を装置内の触媒に吸着させるとともに、プラズマの放電現象で分解します。
さらに、発生したラジカル種が周辺のバクテリアやウィルスを殺菌する効果もあり、
高齢者やお子様の多い場所などで今後ますます利用が広まっていくでしょう。
セミナーも開催されている
大気圧プラズマを作っている会社は世界中に存在していますが、
実は日本企業が最新のよい技術を持っていたりします。
こういった会社に相談してみるとよいでしょう。
また、お試しとして、サンプル評価をやってくれるところもあるようです。
さらに最近では、大気圧プラズマの基礎から応用を詳しく解説してくれるセミナーも開催されています。
こういったところで勉強すると新たな用途も拓けてくるかもしれません。
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