<自動運転レベル3の時代来たる!2021年の自動運転市場の動向について【2】> 「自動運転レベル3」の特徴と普及に向けての課題点について
2020年に国土交通省から定義されている自動運転レベルは、自動運転技術が何も搭載されていない「レベル0」から、自動運転装置で運転を行う「レベル5」まで定義されています。日本の自動運転技術は、自動運転レベル2(部分運転自動化)を搭載した車が市販されるフェーズまで進んでおり、2020年の道路交通法改正で、自動運転車レベル3が解禁となって以来、各自動車メーカーでは、次々と自動運転レベル3搭載車が発表され、更なる進化を遂げようとしています。日本の自動運転技術が次のフェーズへ進むためのカギを握る「自動運転レベル3」にはどのような特徴があるのでしょうか。普及に向けての課題点などと合わせて紹介します。
自動運転レベル3に関する日本や世界の動向
自動運転レベル3の市場化に向けては、日本だけでなく、世界でも自動運転車に関する国際基準化の動きを見せています。
●日本の動向
内閣府は国内の自動運転レベルに関して、2018年4月に「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)自動走行システム研究開発計画」を発表しています。これによると、日本の自動運転レベル3の市場化は2020年、自動運転レベル4の市場化は2025年を目標としており、各自動車メーカーはこの計画に沿って、自動運転技術の開発を進めてきました。SIPでは、自動運転車が公道を走行できるような法整備にも着手し、2020年4月には道路交通法が改正され、日本国内での自動運転レベル3が解禁となり、公道走行が可能となっています。保安基準対象措置に関しても、自動運行装置が追加で定義や、EDR(イベントデータレコーダー)などの作動状況の記録装置に関する規定も盛り込まれています。
●世界の動向
世界でも、自動運転の安全確保に対する動きを見せています。国連の自動車規準調和世界フォーラム(WP29)では、2020年6月に「乗用車の自動運行装置(レベル3)に関する自動運転システムに求められる要件」の国際基準が成立しました。この基準では「高速道路等における時速60km以下の渋滞時などにおいて作動する車線維持機能に限定した自動運転システム」と定義し、その要件として、ミニマムリスクマヌーバやドライバーモニタリング、サイバーセキュリティ確保の方策、作動状況記録装置の搭載などが挙げられています。日本でも世界でも、自動運転車の技術開発ばかりでなく、自動運転車が市場へ乗り出しても、安全に運行できるような国際的な基準や法整備も整いつつあることが分かります。
「自動運転レベル3」では何ができるのか
「自動運転レベル3」では、どのような事が実現できるのでしょうか?自動運転レベル3の内容について、詳しく見てみましょう。
●自動運転レベル3の概要
自動運転レベル3の概要は、以下の通りです。
・SAE(アメリカ自動車技術協会)による自動運転レベル3の定義
自動運転レベル3(条件付運転自動化):システムが全ての動的運動タスクを限定領域において実行。作動継続が困難な場合が、システムの介入要求などに適切に応答
・日本の国土交通省による自動運転レベル3の定義
自動運転レベル3(条件付き自動運転車*限定領域):特定の走行環境を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態
自動運転レベル3は本格的な自動運転車の第一歩です。運転の主体がドライバーからシステム側に変わっている点が、レベル0~レベル2との大きな違いとなります。ただし「条件付き」や「限定領域」とあるように、緊急時にはドライバーが運転操作を担わなければならず、また、自動運転ができるエリアも、高速道路上の渋滞時のみ、など使用が限定的であることも自動運転レベル3の特徴です。
●自動運転レベル3では何ができる
自動運転レベル3では何が出来るのでしょうか?
・ハンズオフで自動車が動く
自動運転といえば、ハンドルを握らない状態で自動車が動く「ハンズオフ」をイメージする人も多いでしょう。自動運転レベル3では、そのハンズオフが実現できます。日本での走行条件は、高速道路での同一車線内約50km以下という条件下でハンズフリーでの走行が可能となります。
・ドライバーの疲労軽減につながる
自動運転車の作動場所が高速道路と限定されていますが、「同一車線内約50km以下」という条件は「渋滞中の高速道路」の状況と想定されます。渋滞中の自動車操作はドライバーに負荷を与えますが、渋滞中の操作だけでも自動運転化すれば、ドライバーの疲労軽減につながります。ただし、ドライバーは緊急時にすぐにハンドルを握らなければならないため、自動運転中のスマホの操作や映画の視聴は法律で禁止されています。
「自動運転レベル3」普及に向けての課題点
自動運転レベル3が解禁となり、現在各自動車メーカーより公道を走行できるレベル3の自動車の開発が進められています。2020年11月にホンダの「LEGEND(レジェンド)」が、国内初のレベル3型式指定されましたが、実用性の面においては課題点が多いことも否めません。自動運転レベル3が普及するには、どのような課題点が挙げられるか、ピックアップしてみました。
・操作はドライバーのモラルに委ねられる
ハンズフリーのレベル3といっても、緊急事態時にドライバーは即座にハンドルを握る必要があります。ドライバーが自動運転装置に完全に運転をまかせ、完全に油断している状態では「即座」に反応することは難しくなます。実際に2018年にテスラの自動運転車で、機械がハンドルを握るよう警告を出していたにも関わらず、ハンドルを握ることがないまま事故が起きたケースがありました。「良いも悪いもリモコン次第」ではありませんが、自動運転においてでも、安全に走行できるかどうかはドライバーのモラルに委ねられている側面が大きいと言えます。
・ハイテク化によって想定されるセキュリティリスク
自動運行装置には、ネットワークの使用が欠かせません。今後、ハッキングによるトラブルや、誤操作など、ハイテク化することによって起こるセキュリティリスクも考慮しなければなりません。これらのトラブルや誤操作は、自動車の暴走や操作不能による衝突などの事故を招きかねます。自動運転装置の開発と共に、通信セキュリティも強化していく必要があります。
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【参照情報】
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