<テレワークの課題と問題点を解決する労務マネジメント【4】> テレワークの労働衛生管理はどうなる?

通勤や外回りの営業、現場作業などがないテレワークは、自宅で安心して働けるというイメージが持たれます。満員電車や自動車通勤でのリスクや、現場での事故などに心配がないため労災とは無縁と思われがちですが、作業中の椅子からの転倒や、メンタルの不調など、テレワークにはテレワークなりの労働衛生管理が必要となります。そもそもテレワークに労災は適用されるの?どのような法律で守られているの?など、疑問に思うテレワークの労働衛生管理について解説いたします。

 

テレワークで適用される労働衛生関連法令は?

厚生労働省による「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」によると、テレワークでは「労働安全衛生法等の関係法令等に基づき、過重労働対策やメンタルヘルス対策を含む健康確保の措置を講じる必要がある」とされています。以下に具体的な法令をピックアップしています。

【テレワークで適用される具体的な法令】

  • 従業員に必要な健康診断とその結果等を受けた措置(労働安全衛生法第66条~第66条の7まで)
  • 長時間労働者に対する医師の面談指導とその結果を受けた措置(労働安全衛生法第66条8)
  • 労働者への面接指導の適切な実施のための時間外・休日労働時間の算定と産業医への情報提供(労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第52条の2)
  • ストレスチェックとその結果等を受けた措置(労働安全衛生法第66条10)

 

テレワークにおいて「心のケア」はどうする?

テレワークで特に懸念されていることが、従業員の心のケア、メンタルヘルスについてです。事業者は平成18年に計画された「労働者の心の健康の保持促進のための指針」において、テレワークを行う労働者のメンタルヘルス対策について、社内の衛生員会等で調査審議の上、これに基づき取り組むことが望ましいとされています。実は、テレワークはオフィスワークよりもストレスの素となる「ストレッサー」があらゆるところに潜んでいます。テレワークでのストレッサーは主に下記のような事象です。

①物理的・科学的ストレス
騒音・暑さ寒さ、オフィス環境と違う自宅環境での仕事のやりにくさ、家族から声を掛けられるストレス、家事に追われて仕事を中断せざるを得ない状況などが該当します。物理的・科学的ストレスに対して企業ができることは、仕事の環境を整えるために備品購入費を補助する、通信費や光熱費を一部負担するなどの対策で、ストレスを減らすことができます。

②生理的ストレス
生理的ストレスは、睡眠不足や過労、空腹、眼精疲労、病気などの症状が要因となるストレスです。テレワークでは運動不足や、長時間座りっぱなしが原因で起こる腰痛などの症例が多く報告されています。生理的ストレスの解消方法は、朝礼や終礼の時間を作って1日のリズムを整えることや、スポーツクラブなどの会費補助などで運動不足を解消してもらう、などの方法があります。

③心理的・社会的ストレス
円滑なコミュニケーションが取れていないと、心理的・社会的ストレスを抱えることとなります。自分の仕事の進捗具合が見えずにストレスを抱える、上司から仕事を急かされている気がしてならないなど、見えないことで、余計に心理的に圧がかかってしまう人が多いようです。心理的・社会的ストレスを解消するには、②の朝礼や終礼の時間に、情報交換や情報共有できるような場づくりをする、互いの業務を可視化して進捗を確認しやすくするなどの工夫が必要です。

 

自宅で安全にテレワークを実施するための対策

テレワークを行う場合「事務所衛生基準規則(昭和47年労働省令第43号)」「労働安全衛生管理規則」「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン(令和元年7月12日基発0712第3号)」の衛生基準と同等の作業環境となるように、自宅等の作業環境を整えるよう、従業員に助言などを行うことが望ましいとされています。自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備の例を、下記にまとめました。

・部屋の空間は設備の占める容積を覗き10㎥以上の空間を保つこと(事務所衛生基準規則2条参考)
・机上は照度300ルクス以上とする(事務所衛生基準規則第10条参考)
・窓は換気設備を設け、ディスプレイには太陽光を避けるためのブラインドやカーテンを設ける(事務所衛生基準規則第3条、情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン参考)
・椅子は安定していて簡単に移動でき、座面の高さを調整できるもので、傾きが調整可能な背もたれや、リラックスのためのひじ掛けがあることが望ましい(情報機器作業における労働衛生管理のための
ガイドライン参照)
・室温は17℃~28℃、相対湿度は40%~70%となるよう努めること(事務所衛生基準規則第5条参考)
・ディスプレイは証明500ルクス以下でコントラストが調整でき、キーボードとディスプレイは分離して位置を調節できるとよい。(情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン参考)
・デスクは必要なものを配置できる広さがあり、作業中に肘が窮屈でない空間を保つこと。また、高さの調整をして体型に合わせること(情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン参考)
・ディスプレイと体はおおむね40㎝以上の視距離を確保すること(情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン参考)
・情報機器作業が過度に長時間にならないようにする(情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン参考)

 

テレワークでの労災の扱いについて

テレワークにおける労働災害(労災)については、事業者が労働災害に対する補償責任を負うことから、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じたテレワークにおける災害は業務上の災害として労災保険給付の対象となります。ただし、私的行為業務以外が起因となるものに関しては、労災として認められません。テレワーク実施の際は、上記のボーダーを良く見極め、理解する必要があります。どのようなケースが労災に該当するかの最終的な判断は、所轄の労働基準監督署が行うこととなります。ガイドラインによると、以下のようなサンプルが紹介されています。

【事例】
自宅にて所定労働時間にパソコン業務行っていた際、トイレにいく為に作業場所を離席した後、作業場祖に戻り椅子に座ろうとして転倒した。

【労災としての解釈理由】
所定労働時間のパソコン作業という業務行為に付随する行為に起因して発生した災害のため、私的行為によるものとは認められず、業務災害として認められた。

 

テレワークや労働衛生管理を学ぶならセミナーがお薦め

テレワークだと労災が下りないのでは、と心配する人もいます。また、メンタルヘルスの観点から見てもテレワークについて、労使双方でしっかり話し合い理解しておくことが重要です。これらのことを詳しく知り、しっかりと学ぶためにはセミナーがお薦めです。withコロナの時代だからこそ、時代の波をのりこえられる知識と見識を見に付けましょう!下記URLより、テレワークや労働衛生管理、労務マネジメントを学べるセミナーを探すことができます。

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【参照情報】
e-Gov電子政府の総合窓口
>>>労働安全衛生法

厚生労働省
>>>テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン

LEARNING AGENCY
>>>テレワーク環境下でのメンタルヘルス不調、その予防に向け会社ができること