<次世代の交通サービス「MaaS」が描く未来のビジョン【2】> MaaSレべルとは?日本のMaaSレベルはどれくらい?

次世代の新たなモビリティサービスの形として、世界がその取組み動いているMaaS。日本も例外ではなく、政府主導で各自治体、交通業界、通信業界がMaaSの実現に向けて、システムの構築やプラットフォームの開発などを試みています。MaaSは、レベルに準じて段階的に進める必要がありますが、日本のMaaSレベルはどの段階なのでしょうか?MaaSレベルの解説と合わせて見てみましょう。

 

MaaSを段階的に構築する「MaaSレベル」とは?

「MaaSレベル」は、サービスへの統合の程度に応じ、MaaSの進捗具合を各段階にレベル分けしたものです。国際基準として統一されたものではなく、各国の研究者や国によって定義される内容や範囲が異なりますが、スウェーデンにあるチャルマース工科大学の研究者が発表したMaaSレベルが最も有名です。今回は、5段階にレベル分けされているスウェーデンのMaaSレベルを、ご紹介します。

MaaSレベル0「各移動主体が独立して運営する旧来のアナログ的なシステム
MaaSレベル0は、ズバリ「MaaS以前の姿」です。各事業社が従来通り、それぞれ独立した状態で、これまで通りの交通サービスを提供している状態を指します。

Maaレベル1「情報がデジタル化され、複数の移動サービスの情報をまとめて提供」
MaaSレベル1は、交通サービスの料金や以上距離や移動時間などの交通に関するさまざまな情報が、同じプラットフォーム上で提供されているような「情報の統合」が、成立している状態を指します。今では、移動の際に欠かせないものとなっているジョルダンや、NAVITIMEなどの移動検索システムが、MaaSレベル1に該当します。

MaaSレベル2「予約・決済がシステム化」
MaaSレベル2は、同一プラットフォーム上で交通経路案内、チケットの予約と発券、決済までを行うことができる「予約、決済の統合」が、成立している状態を指します。利用者は、これまで個別に行っていた予約や決済を、移動手段の検索と合わせ、ワンストップで行うことが可能となります。

MaaSレベル3「移動サービスの料金なども体系化して統合」
MaaSレベル3は、事業社間の提携が進み、各交通サービスを一つの運営主体が提供しているかのようなサービスを受けることができるようになる、「サービスの統合」が成立している状態を指します。例えば、フィンランドのWhim(ウィム)のように、一つの目的地に向かう際、どの交通手段を利用しても一律料金で利用できる、もしくは、月決めの定額料金で一定区域ないの移動サービスが、乗り放題が可能となるプラットフォームが挙げられます。民間事業においてのMaaSの完成は、レベル3の状態だと言われています。

MaaSレベル4「社会課題と結びつ、交通全般を最適化するシステムに」
MaaSレベル4は、「政策の統合」です。政府や地方自治体と事業社が提携し、都市計画を政策レベルで構築し、交通の在り方について、協調してゆくことが望ましいとされています。MaaSが、国家プロジェクトレベルで推進されることが、MaaSの最終形態となります。例えば、渋滞が慢性化している都市部にて、自家用車を減らし、効率よくたくさんの人が移動できる新交通システムを確立させるために、乗り場の設置や、それに付随したインフラ面の整備なども、国策、施策として推進する動きなどが該当します。

 

日本のMaaSレベルは?

MaaSレベル5段階に当てはめた時に、日本のMaaSレベルはどのくらいなのでしょうか?実際に日本で運用されている交通サービスを検証すると現状は、以下の通りとなります。

●移動ルートや時刻表、運賃などの情報が統合され、一つのプラットフォームで検索ができる
●チケットの予約、決済は、それぞれの事業社内での自社サービスのみ
●タクシーの予約、配車、決済のアプリはあるが、アプリと提携している事業社のものしか利用できない
●カーシェアリング・モバイルシェアリングは、カード決済が基本となっており、そのままプラットフォーム上で予約も決済もできるが、事業者の自社サービスにとどまっている。

日本のMaaS進捗状況は、検索、予約、決済などを、端末一つで実行することは可能となってきており、決済方法もクレジットカード払いだけでなく、交通系ICカード支払い、キャッシュレス決済などが可能となってきています。しかし、各事業者社それぞれのプラットフォーム上で成立しているため、MaaSレベルとしては「MaaS1」の段階と言われています。ただし、政府でMaaS推進の音頭がとられて以降、大手交通会社や通信会社などでは、運営母体が異なる複数の移動サービスを統合したプラットフォームの実証実験が、各地でスタートしています。

 

日本のMaaSのレベルアップに立ちはだかる壁

まだまだMaaSレベルの低い日本ですが、レベルアップには、乗り越えなければならない壁があります。

■MaaSを意識したプラットフォームを構築するための事業社間の連携
MaaS1からMaaS2へ進化するためには、事業社間で連携が必須です。すでに、同一プラットフォームでのサービスの提供は、「誰もが知っているレベル」で浸透しているので、次のステップは、競合する同業系他社と手を組んで、「MaaSを意思したシームレスな交通サービスを提供するためのプラットフォーム」を構築することが重要となります。

■利用者に対する責任面
普段何気に利用している交通機関ですが、実は、国内の交通関連事業は、事業社ごとに事業法が設けられており、様々な規制が敷かれています。事業社間で連携してプラットフォームを構築する際、利用者保護などの安全確保に向けた責任や、事故の際の責任の所在があいまいとなるという指摘があります。想定外の移動サービスが加わる可能性も否定できず、従来からある事業法では対応できないケースも出てくると想定されます。Whimやmoovelなどの先進事例を参考とし、プラットフォームの構築と並行して、法整備も検討する必要があります。

■構築したプラットフォームに設定する料金体系
現在の日本の交通事情では、複数の種類がある交通系ICカードに互換性を持たせることはあっても、事業社ごとに料金体系が決められているのが現状です。MaaSを意識したプラットフォームを高度化するには、鉄道、バス、タクシー、レンタカーなどの料金を、一体的な料金体系へと構築することが望まれます。タクシーなど制度上料金体系を自由に設定、変更できない場合などもあるので、規制緩和や法整備など、あらゆる面からアプローチを図る必要があります。

日本のMaaSレベルをアップするためには、まだまだ多くの課題が山積みです。課題をクリアするための一歩として、ひとりでも多くの人がMaaSを理解することがポイントとなります。MaaSを取扱ったセミナーを受講し、MaaS実現に向けての取組みをはじめてみませんか?

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【参照情報】
自動運転LAB
>>>MaaS(マース)の基礎知識と完成像を徹底解説

総務省
>>>次世代の交通MaaS

PERSPECTIVE
>>>MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)について